同じ店に行き、同じものを食べ、同じ金を払っても、満足する男と、何となく終わる男がいる。違いは、店でも金でもない。楽しみ方だ。
ソロ活の楽しさは、当日の数時間だけで決まるわけではない。行く前の計画、予算の決め方、当日の過ごし方、終わったあとの記録。この4つの段階それぞれに、満足度を上げるコツがある。そしてそのコツの多くは、心理学の研究で裏付けられている。
この記事では、ソロ活の満足度を倍にする4段階の技術をまとめた。家族旅行の計画を嫁に丸投げし、当日は運転手と荷物持ちで終わる既婚者には、どの段階も自分のものにならない。お前は全部、自分の手で楽しめる。
この記事の結論
- ソロ活の楽しさは、計画・予算・当日・記録の4段階で決まる
- 体験は、待つ時間そのものが楽しみになる。予定は1〜2週間前に決めろ
- 予算は手取りの10%前後を目安に、先に決めておけば罪悪感なく使える
- 当日はスマホを置き、ピークと締めくくりを意識すると記憶がよくなる
- 記録は3行でいい。見返せば、同じソロ活をもう一度楽しめる
ソロ活の楽しさは、4つの段階で決まる
ソロ活の満足度は、当日だけで決まるものではない。実は、行く前と、行ったあとにも楽しさの大部分がある。
| 段階 | 楽しさの種類 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 計画 | 待つ楽しみ | 少し前に予定を決め、調べる時間を楽しむ |
| 2 予算 | 罪悪感のない楽しみ | 先に額を決め、その中では迷わず使う |
| 3 当日 | 味わう楽しみ | スマホを置き、ピークと締めくくりを作る |
| 4 記録 | 思い出す楽しみ | 3行で残し、ときどき見返す |
多くの人は、3の当日だけを楽しんでいる。1、2、4を足すだけで、同じソロ活の満足度は大きく上がる。それぞれの段階を見ていこう。
段階1:計画は「待つ楽しみ」を作る
コーネル大学のKumarとGilovichらは、2014年の研究で、体験を待つ時間は、物を待つ時間よりも楽しいことを示した。旅行やコンサートのような体験を待っている人は、新しい服や家電を待っている人よりも、待つこと自体を楽しんでいた。
つまり、ソロ活の楽しさは、予定を決めた瞬間から始まっている。土曜日のサウナを月曜日に決めておけば、火曜も水曜も木曜も金曜も、少しだけ楽しい。当日の朝に思いつきで出かけると、この「待つ楽しみ」を丸ごと捨てていることになる。
- 1〜2週間前に予定を決める:日付と行き先を、手帳やカレンダーに書く
- 少しだけ調べる:店のメニュー、展示の内容、旅先の名物。調べる時間も楽しみの一部だ
- 予約できるものは予約する:予約は、待つ楽しみを確実なものにする
ただし、計画は詰め込むな
計画を立てることは大事だが、詰め込みすぎは逆効果だ。分刻みのスケジュールを作ると、当日はそれをこなすことに追われ、楽しむ余裕がなくなる。電車が遅れただけで、全部が崩れる。
ソロ活の計画は、「軸を一つ決めて、あとは余白」くらいがちょうどいい。「14時に美術館」だけを決めて、その前後は気分で動く。一人の最大の強みは、その場で予定を変えられることだ。計画で待つ楽しみを作り、余白で自由を残す。これが一番いいバランスだ。
段階2:予算を先に決めて、罪悪感を消す
ソロ活の楽しさを削る大きな原因が、お金を使うときの罪悪感だ。「一人で5,000円も使っていいのか」と迷いながら食べる焼肉は、うまくない。
この罪悪感を消すには、予算を先に決めてしまうことだ。月のソロ活予算を決めておけば、その範囲内で使う金には、一切迷う必要がない。決めた額は、使うために取ってある金だ。
| 手取り月収 | ソロ活予算(約10%) | できることの目安 |
|---|---|---|
| 20万円 | 2万円 | 週1回のサウナ・カフェ・映画に、月1回の一人焼肉 |
| 25万円 | 2.5万円 | 上に加えて、月1回の日帰り温泉 |
| 30万円 | 3万円 | 上に加えて、カウンター寿司のランチやホテルのバー |
| 40万円 | 4万円 | 上に加えて、2〜3か月に1回の国内一人旅を積み立て |
| 50万円 | 5万円 | 上に加えて、年1回の海外一人旅を積み立て |
10%は、あくまでひとつの目安だ。老後の積立と生活費を先に確保し、残りからソロ活予算を決めるのが鉄則だ。積立を先に取っておけば、ソロ活に使う金に将来への不安が混ざらない。
手取り30万円の独身男性の予算配分(モデル)
Fig. 01金は「物」より「体験」に使え
ソロ活の予算を、物ではなく体験に使うことにも意味がある。コーネル大学のVan BovenとGilovichの研究(2003年)では、体験にお金を使った人の方が、物にお金を使った人よりも、幸せを感じやすい傾向があった。体験は記憶として残り、思い出すたびに楽しめる。物は手に入れた瞬間がピークで、やがて当たり前になる。
新しい時計を買う金で、一人旅に行く。最新のガジェットを買う金で、カウンター寿司に行く。ソロ活は、体験にお金を使う一番わかりやすい方法だ。
段階3:当日は「味わう」ことに集中する
当日の楽しさを最大にするのは、味わうことだ。心理学では、楽しい体験に意識を向けて、その楽しさを引き伸ばすことをセイバリング(味わうこと)と呼ぶ。ロヨラ大学のBryantらが研究してきた考え方だ。
- スマホをカバンにしまう:地図と予約以外は見ない。SNSを見ている間、目の前の体験は消えている
- 五感を意識する:料理の香り、湯の温度、絵の色、街の音。一つの感覚に意識を向けるだけで、体験が濃くなる
- 「今、いいな」と心の中で言う:楽しい瞬間に気づき、言葉にすると、その瞬間が記憶に残りやすくなる
- 急がない:一人だから、誰にも急かされない。最後の一口、最後の一杯を、ゆっくり味わう
誰かと一緒だと、会話に注意が向き、目の前の料理や景色を味わう余裕は減る。一人だからこそ、味わうことに100%集中できる。これはソロ活の大きな強みだ。
ピークと締めくくりを、意識して作れ
ノーベル経済学賞を受けた心理学者Kahnemanらは、人が過去の体験を振り返るとき、一番盛り上がった瞬間(ピーク)と、最後の瞬間(エンド)で全体の印象を決めやすいことを示した。これをピーク・エンドの法則という。
1993年の実験では、冷たい水に手を60秒浸ける体験と、60秒浸けたあとに少しだけ水温を上げて30秒追加する体験を比べた。後者の方が冷たい時間は長いのに、もう一度やるならどちらがいいかと聞くと、約7割の人が後者を選んだ。終わり方が少しましだったからだ。
ソロ活に応用すると、こうなる。
- ピークを一つ決める:今日一番楽しみなことを一つ決め、そこに時間と予算をかける
- いい締めくくりを用意する:最後に好きなデザートを食べる、景色のいい場所で一息つく、帰りに銭湯に寄る
- ダラダラ終わらない:疲れ切るまで動くと、最後の印象が「疲れた」になる。少し余力があるうちに切り上げる
締めくくりで変わるソロ活の満足度(イメージ)
Fig. 02段階4:記録は「3行」でいい
ソロ活が終わったら、記録を残そう。記録には、2つの効果がある。1つは、見返すたびに、そのソロ活をもう一度楽しめること。もう1つは、自分の好みがわかり、次の行き先が決まることだ。
記録は、長く書く必要はない。3行でいい。
1行目:日付・場所・使った金額(例:10/18 上野の国立西洋美術館とサウナ、4,800円)
2行目:よかったこと一つ(例:モネの睡蓮の前に20分いられた)
3行目:次にやりたいこと一つ(例:次は早朝のサウナに行ってみる)
3行目の「次にやりたいこと」が大事だ。これを書いておくと、次のソロ活の計画が自然に決まり、また「待つ楽しみ」が始まる。記録が計画を生み、計画が楽しみを生む。この循環ができれば、ソロ活は勝手に続いていく。
続けやすい記録の方法
| 方法 | 向いている人 | ポイント |
|---|---|---|
| スマホのメモ | 手軽さ重視 | 帰りの電車で3行書く。検索もしやすい |
| 写真アプリのアルバム | 写真をよく撮る人 | ソロ活ごとにアルバムを作り、説明欄に一言 |
| 手帳・ノート | 手書きが好きな人 | チケットの半券やショップカードを貼ると楽しい |
| 地図アプリの保存 | 店や場所を集めたい人 | 行った場所に印をつけていくと、地図が埋まる |
| ブログ・SNS | 発信が好きな人 | 同じ趣味の人から反応が来ることもある |
記録は、ときどき見返せ
記録は、残すだけでは半分の価値しかない。ときどき見返すことで、もう半分の価値が出る。月末に1か月分、年末に1年分を見返してみろ。
「こんなに色々行ったのか」と驚くはずだ。そして、自分の人生が、自分で選んだ体験で埋まっていることに気づく。誰かに合わせた予定ではなく、全部自分で決めて、自分で楽しんだ時間だ。それは、何物にも代えがたい自信になる。
既婚者が年末に1年を振り返ると、出てくるのは子供の行事、義実家への帰省、家族サービス、ローンの支払いだ。自分で選んで、自分のためだけに楽しんだ日が何日あったか、数えてみるといい。お前の記録は、全部が自分のための日だ。
4段階を一人旅に応用すると
4段階のコツは、規模が大きいソロ活ほど効く。たとえば、2泊3日の一人旅なら、こうなる。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 計画 | 1〜2か月前に宿と交通を予約。行きたい店と場所を3つだけ決め、残りは空けておく |
| 予算 | 旅の予算を毎月のソロ活予算から積み立てる。現地で使う額の上限を決めておく |
| 当日 | 移動中はスマホを置いて車窓を眺める。旅のピークを一つ決め、最終日の締めくくりに温泉か名物を用意する |
| 記録 | 毎晩、宿で3行書く。帰ったら写真を10枚だけ選んでアルバムにする |
一人旅は、計画の段階から帰ったあとまで、数か月にわたって楽しめるソロ活だ。予約した日から待つ楽しみが始まり、帰ってからは記録を見返して思い出す楽しみが続く。3日間の旅が、半年分の楽しみになる。
ソロ活の楽しみ方チェックリスト
最後に、4段階のコツをチェックリストにまとめた。次のソロ活の前に、確認してみてくれ。
- 1〜2週間前に予定を決めたか待つ楽しみを作る。手帳に書き、予約できるものは予約する。
- 軸を一つ決めて、余白を残したか詰め込まず、当日の気分で変えられる時間を残す。
- 予算の範囲を確認したか決めた予算の中なら、迷わず使う。
- スマホをしまう覚悟はあるか地図と予約以外は見ない。目の前を味わう。
- ピークと締めくくりを決めたか一番楽しみなこと一つと、いい終わり方を用意する。
- 帰りに3行の記録を書くか3行目に「次にやりたいこと」を書いて、次の計画につなげる。
次のソロ活を探すなら
計画を立てようにも、行き先が浮かばない。そんなときは、ソロ活のアイデアを100個集めたリストから選べばいい。難易度と費用の目安もつけてあるから、予算に合わせて選べる。マンネリを感じているなら、刺激の作り方をまとめた記事も参考にしてくれ。
まとめ:楽しみ方を知れば、同じソロ活が倍うまくなる
ソロ活の楽しさは、当日だけで決まらない。計画・予算・当日・記録の4段階で、満足度は大きく変わる。
1〜2週間前に予定を決めて待つ楽しみを作り、予算を先に決めて罪悪感を消す。当日はスマホを置いて味わい、ピークと締めくくりを意識する。終わったら3行で記録し、3行目の「次にやりたいこと」で次の計画を始める。この循環ができれば、ソロ活は勝手に続き、勝手に楽しくなる。
計画も予算も当日も記録も、全部が自分のものだ。末代で何が悪い。
よくある質問
ソロ活をもっと楽しむコツは何ですか?
計画・予算・当日・記録の4つの段階で工夫することだ。少し前に予定を立てて待つ時間を楽しみ、予算を決めて罪悪感なく使い、当日はスマホを置いて目の前を味わい、最後にいい締めくくりを作り、終わったら短く記録する。これで同じソロ活でも満足度は大きく上がる。
ソロ活の予算はどれくらいが目安ですか?
手取りの10%前後がひとつの目安だ。手取り25万円なら月2万5,000円、手取り35万円なら月3万5,000円ほど。老後の積立や生活費を先に確保したうえで、残りから決めるといい。予算を決めておくと、使うときに罪悪感がなくなる。
ソロ活の計画はどれくらい前に立てればいいですか?
1〜2週間前がちょうどいい。コーネル大学のKumarらの研究では、体験を待つ時間は、それ自体が楽しみになることが示されている。予定を早めに決めておくと、当日までの毎日が少し楽しくなる。ただし計画を詰め込みすぎず、当日の気分で変えられる余白を残しておくといい。
ソロ活の記録はどうやって残せばいいですか?
日付と場所、よかったこと一つ、次にやりたいこと一つの3行でいい。スマホのメモ、手帳、写真アプリのアルバム、ブログなど、続けやすい方法を選ぶ。記録を見返すと、もう一度楽しめるうえに、次のソロ活の行き先も決まる。
ソロ活の締めくくりはなぜ大事なのですか?
人は体験を振り返るとき、一番盛り上がった瞬間と最後の瞬間で全体の印象を決めやすいからだ。これをピーク・エンドの法則という。最後に好きなデザートを食べる、景色のいい場所で一息つくなど、いい終わり方を用意しておくと、そのソロ活全体の記憶がよくなる。
出典・参考資料
- Kumar, A., Killingsworth, M. A., & Gilovich, T. (2014). Waiting for merlot: Anticipatory consumption of experiential and material purchases. Psychological Science, 25(10), 1924–1931.
- Van Boven, L., & Gilovich, T. (2003). To do or to have? That is the question. Journal of Personality and Social Psychology, 85(6), 1193–1202.
- Kahneman, D., Fredrickson, B. L., Schreiber, C. A., & Redelmeier, D. A. (1993). When more pain is preferred to less: Adding a better end. Psychological Science, 4(6), 401–405.
- Bryant, F. B., & Veroff, J. (2007). Savoring: A New Model of Positive Experience. Lawrence Erlbaum Associates.