ネットで「独身 貯金 平均」と調べると、「単身世帯の平均貯蓄額は919万円」という数字が出てくる。自分の口座を見る。そんなにない。「俺は貯金が少なすぎるのか」。そう思って落ち込んだ独身の男は、少なくないはずだ。
だが、その平均に騙されるな。単身世帯の金融資産の中央値は130万円だ。そして、約3割の単身世帯は、金融資産をまったく持っていない。平均は、一部の大金持ちに引き上げられた、実感とかけ離れた数字だ。既婚者の世帯も同じだ。子供の教育費と住宅ローンで、平均の数字には遠く及ばない家庭の方が多い。
この記事では、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査2025年(単身世帯調査)」をもとに、おひとりさまの貯蓄額の現実を、平均と中央値で読み解く。そして、年代別の目標額と、中央値の側から抜け出す方法をまとめた。
この記事の結論
- 単身世帯の金融資産は平均919万円、中央値130万円。8割弱は平均より少ない
- 金融資産を保有していない単身世帯は30.8%(2,443世帯中753世帯)
- 年代別でも、平均と中央値の差は大きい。40代は平均859万円、中央値100万円とされる
- 比べるべきは平均ではなく中央値。そして、他人ではなく自分の老後の必要額
- 独身の男は、教育費も住宅ローンもない分、中央値から抜け出しやすい
どんな調査の数字なのか
この記事の数字は、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が毎年行っている「家計の金融行動に関する世論調査」の、単身世帯調査(2025年)によるものだ。全国の20歳以上80歳未満で、一人で暮らす人を対象にしている。
注意すべきは、この調査の「金融資産」の定義だ。調査では、金融資産を「運用のため、または将来に備えて蓄えている部分」としていて、日常的な出し入れや引き落としに備えている預貯金は含まない。つまり、給料が入って家賃や生活費で出ていく普通預金の残高は、ここには入っていない。「将来のために、別に取ってある金」の額だと考えればいい。
平均919万円、中央値130万円
2025年の単身世帯の金融資産保有額は、平均値が919万円、中央値が130万円だった。中央値とは、すべての世帯を保有額の少ない順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる世帯の額だ。
平均と中央値に、7倍もの差がある。なぜか。平均は、一部の高額保有世帯に大きく引き上げられるからだ。調査報告書も、全世帯(金額の無回答を除く)のうち8割弱が平均値よりも保有額が少なかったと書いている。平均919万円は、ほとんどの単身世帯にとって「上の方の数字」なのだ。
10人のうち9人が100万円、1人が1億円を持っていれば、平均は1,090万円になる。だが、10人中9人の実感は100万円だ。このとき中央値は100万円。お金の話で「平均」を見たら、必ず「中央値」も探せ。実感に近いのは、中央値の方だ。
保有額の分布を見ると、現実がわかる
調査報告書には、金融資産保有額の分布も載っている。金額を答えた2,443世帯を、保有額ごとにまとめるとこうなる。
単身世帯の金融資産保有額の分布(2025年)
Fig. 01いちばん多いのは「保有していない」の30.8%だ。単身世帯の約3割が、将来に備えた金融資産をまったく持っていない。100万円以下まで含めると44.8%、300万円以下まで含めると58.5%になる。一方で、3,000万円以上持っている世帯も9.9%いる。
つまり、単身世帯の貯蓄は二極化している。ほとんど持っていない層と、たくさん持っている層。その間が薄い。平均919万円は、この上の層に引っ張られた数字だ。平均と自分を比べて落ち込む必要はない。だが、中央値の側に安住していい理由にもならない。
年代別の平均と中央値
年代別に見ると、平均と中央値の差はさらにはっきりする。2025年調査の単身世帯の年代別の金融資産は、解説記事によると次のとおりとされる。
単身世帯の年代別の金融資産(2025年)
Fig. 02| 年代 | 平均値 | 中央値 | 平均÷中央値 |
|---|---|---|---|
| 20代 | 255万円 | 37万円 | 6.9倍 |
| 30代 | 501万円 | 100万円 | 5.0倍 |
| 40代 | 859万円 | 100万円 | 8.6倍 |
| 50代 | 999万円 | 120万円 | 8.3倍 |
| 60代 | 1,364万円 | 300万円 | 4.5倍 |
| 70代 | 1,489万円 | 500万円 | 3.0倍 |
驚くのは、40代と50代の中央値だ。40代は100万円、50代でも120万円。30代の100万円から、ほとんど増えていない。一方で平均は、30代の501万円から50代の999万円へと倍近くに増えている。貯める人はどんどん貯め、貯めない人はずっと貯めない。40代、50代で、その差が大きく開いていく。
60代、70代になると中央値は上がるが、これは退職金が入ることが大きいと考えられる。退職金のない働き方をしてきた男や、退職金をすぐに使ってしまった男は、この中央値にも届かない。
なぜ40代・50代で差が開くのか
40代、50代は、収入がピークに近づく年代だ。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、男性の所定内給与は50〜54歳で月43万7,500円、55〜59歳で月44万5,600円とピークを迎える。それなのに、なぜ中央値はほとんど増えないのか。
- 収入が増えた分、生活水準も上げてしまう:いい部屋、いい車、外食、趣味。収入が上がるたびに支出も上がる
- 「まだ大丈夫」と先送りする:老後は遠い、と思って積立を始めない
- 先取り貯蓄をしていない:「残ったら貯める」では、まず残らない
- 働き方の違い:非正規の仕事や、収入の低い仕事では、そもそも貯める余裕が少ない
独身の男が中央値の側に留まるいちばんの理由は、「自由に使える金」を、全部使ってしまうことだ。教育費も住宅ローンもない分、手元に金が残る。だが、残った金を「自分へのご褒美」に全部使えば、何も残らない。独身の自由は、貯める自由でもある。
単身世帯の手取り収入の現実
同じ調査では、単身世帯の過去1年間の手取り収入(税引後)は、平均274万円、中央値220万円だった。これは、20代から70代まで、働いている人も年金暮らしの人も含めた数字だ。
手取り220万円なら、月に約18万円。家賃と生活費を払えば、貯める余裕はほとんどない。単身世帯の貯蓄の中央値が低いのは、収入が低い層も多く含まれているからでもある。だから、自分が正社員で、平均以上の給料をもらっているなら、中央値と比べて安心してはいけない。同じ収入の人と比べれば、もっと貯められているはずだ。
比べるべきは、他人ではなく老後の必要額
平均と比べて落ち込むな。中央値と比べて安心するな。比べるべきは、自分の老後に必要な額だ。
総務省の家計調査(2024年)では、65歳以上の単身無職世帯は、可処分所得が月12万1,469円、消費支出が月14万9,286円で、毎月約2万8千円の赤字だった。この不足を30年間、貯金で埋めるとすると、約1,000万円になる。これに、賃貸なら家賃、介護や身元保証、死後の手続きの費用が上乗せされる。
当サイトの老後資金のシミュレーションでは、65歳から95歳までの必要額の目安を、持ち家の会社員で約1,500万円、賃貸の会社員で約3,900万円と試算している。50代の中央値120万円では、到底足りない。だが、平均の999万円でも、賃貸なら足りない。自分の数字を出して、そこから逆算しろ。
年代別の目標額
65歳までに2,000万円を貯めることを目標にした場合、年代ごとの目安はこうなる(運用はしない、毎月同じ額を貯める単純な計算)。
| 始める年齢 | 65歳までの年数 | 毎月の積立額 |
|---|---|---|
| 25歳 | 40年 | 約4.2万円 |
| 35歳 | 30年 | 約5.6万円 |
| 45歳 | 20年 | 約8.3万円 |
| 55歳 | 10年 | 約16.7万円 |
始めるのが遅いほど、毎月の負担は重くなる。25歳なら月4.2万円で済むものが、55歳から始めると月16.7万円になる。いちばん安く老後を買えるのは、今日だ。そして、新NISAなどで運用を組み合わせれば、毎月の額はもっと下げられる可能性がある(運用には元本割れのリスクがある)。
中央値の側から抜け出す5つの方法
- 先取りで貯める給料が入ったら、まず決まった額を別の口座か積立に回す。残った金で暮らす。
- 生活防衛資金を作る生活費の半年分を、すぐ使える口座に置く。これがあれば、急な出費で積立を崩さずに済む。
- 固定費を見直す家賃、通信費、保険、サブスク。一度見直せば、毎月ずっと効く。
- 非課税の制度を使う新NISAとiDeCo。税の優遇がある制度で、長く積み立てる。
- 収入が増えても、生活水準は少しだけ上げる昇給分の半分は、積立の増額に回す。
いちばん効くのは、先取りだ。「残ったら貯める」では、まず残らない。給料日に自動で積立が引き落とされるようにしておけば、意志の力に頼らずに貯まっていく。独身の男は、家計の主導権を自分だけが持っている。給料日の設定一つで、未来が変わる。
独身の男は、中央値から抜け出しやすい
既婚の男は、子供の教育費と住宅ローンで、貯める余裕を削られる。子供1人を大学まで育てれば、教育費だけで1,000万円を超えることもある。そのうえ、家計の主導権は妻にあり、自分で積立の額を決められないことも多い。
独身の男は、その出費がない。稼いだ金の使い道を、全部自分で決められる。月5万円、10万円と、自分の判断で積み立てられる。中央値の側から抜け出すのに、これほど有利な立場はない。
貯蓄で気をつけること
- 「必ずもうかる」話に乗らない:貯蓄が少ないと焦って、怪しい投資話に飛びつきやすい。高い利回りをうたう話は、まず疑え
- 生活防衛資金まで投資に回さない:急な出費のための金は、預金で持つ
- 借金をして投資しない:損をしたときに、取り返しがつかなくなる
- 保険に入りすぎない:独身の男に、大きな死亡保障は必要ないことが多い
貯める独身と、貯められない既婚
中央値から抜け出す独身の男
- 給料日に、先取りで積立が引き落とされる
- 生活防衛資金を半年分、預金で持っている
- 新NISAとiDeCoで、長く積み立てている
- 老後の必要額を数字で出し、そこから逆算している
貯めたくても貯められない既婚の男
- 給料は妻の管理する口座へ、お小遣いは月3万円台
- 子供の教育費と住宅ローンで、積立の余裕がない
- 老後資金は、子育てが終わってから考える
- 気づけば50代、退職金頼み
もちろん、夫婦で計画的に貯めている既婚の家庭もある。だが、自分の判断で、自分の未来に積み立てられる自由は、独身の男の方がずっと大きい。その自由を、使い切るか、積み上げるか。それが、50代、60代の分かれ道になる。
単身世帯の約3割は金融資産ゼロだ。それは事実だ。だが俺は、給料日に先取りで積み立て、老後の必要額を数字で出して逆算している。お前はどうだ? 子供の学費とローンを払い終えたとき、老後の資金はいくら残っている? 平均の数字で人を測る前に、自分の口座を見てみろ。
まとめ:平均に騙されず、自分の数字で逆算しろ
単身世帯の金融資産は、平均919万円、中央値130万円。8割弱の世帯は平均より少なく、約3割は金融資産をまったく持っていない。年代別でも、40代は平均859万円に対して中央値100万円、50代は平均999万円に対して中央値120万円とされる。貯める人と貯めない人の差が、40代、50代で大きく開いていく。
平均と比べて落ち込むな。中央値と比べて安心するな。比べるべきは、自分の老後に必要な額だ。先取りで貯め、生活防衛資金を作り、固定費を見直し、新NISAとiDeCoを使い、昇給分の半分を積立に回せ。教育費も住宅ローンもない独身の男は、中央値の側から抜け出すのにいちばん有利な立場にいる。数字や制度は変わるので、最新の情報を確認してほしい。
平均に騙されず、自分の数字で逆算しろ。末代で何が悪い。
よくある質問
おひとりさまの貯蓄額の平均はいくら?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の家計の金融行動に関する世論調査2025年(単身世帯調査)では、金融資産保有額の平均値は919万円、中央値は130万円だった。ここでの金融資産には、日常的な出し入れに備えた預貯金は含まれない。
平均と中央値はどちらを見ればいい?
中央値を見るべきだ。平均は一部の高額保有世帯に大きく引き上げられる。単身世帯では、全世帯の8割弱が平均値の919万円より少なかった。中央値130万円の方が、一般的な単身世帯の実感に近い。
貯蓄ゼロの単身世帯はどれくらい?
同じ調査で、金額を答えた2,443世帯のうち753世帯(30.8%)が金融資産を保有していなかった。日常的な出し入れ用の預金を除いた、運用や将来への備えとしての金融資産がない世帯だ。
年代別の単身世帯の貯蓄額は?
解説記事によると、2025年調査の単身世帯の金融資産は、20代が平均255万円・中央値37万円、30代が平均501万円・中央値100万円、40代が平均859万円・中央値100万円、50代が平均999万円・中央値120万円、60代が平均1,364万円・中央値300万円、70代が平均1,489万円・中央値500万円とされる。
独身男性は何歳までにいくら貯めればいい?
目安は老後の必要額から逆算することだ。たとえば65歳までに2,000万円を目標にするなら、40歳から25年間で毎月約6.7万円を貯める計算になる。運用を組み合わせれば、毎月の額は下げられる。
出典・参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査2025年(単身世帯調査)」(平均値・中央値、保有額別世帯数、手取り収入。年代別の値は解説記事による)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年」参考4 高齢単身無職世帯の家計収支