ホテルのラウンジ。深いソファに体を沈めると、銀色の三段スタンドが運ばれてくる。下にはサンドイッチ、真ん中には焼きたてのスコーン、上には宝石のようなケーキ。ポットの紅茶をカップに注ぎ、窓の外を眺める。2時間かけて、甘いものと紅茶を、一人で貪る。
アフタヌーンティーは、女性同士の楽しみだと思われている。ホテルのラウンジは、写真を撮り合う女性客で埋まる。甘いもの好きの男は、この世界に足を踏み入れられずにいる。既婚の男なら、妻に付き合わされて行き、写真係とスタンドの「どっちを食べる?」の譲り合いで2時間が終わる。
だが、甘いものが好きなことに、男も女もない。一人なら、スタンドの全部が自分のものだ。この記事では、男一人でアフタヌーンティーを楽しむための店の探し方、三段スタンドの食べ方、紅茶の頼み方、そして甘いものの食べすぎに気をつける量までまとめた。料金や予約の条件は変わるので、予約の前に確認してほしい。
この記事の結論
- アフタヌーンティーは男一人でも楽しめる。甘いもの好きに男も女もない
- 1名で予約できる店を、予約サイトで「1名」にして探せ
- 三段スタンドは、下から上へ。塩気、スコーン、ケーキの順が基本
- 紅茶はおかわりできる店が多い。いろいろな種類を試せ
- 糖分は多い。その日の前後の食事で甘いものを控えろ
アフタヌーンティーとは何か
アフタヌーンティーは、19世紀のイギリスで生まれた習慣だ。昼食と夕食の間の空腹を満たすために、午後に紅茶と軽食を楽しんだのが始まりとされる。1840年代に、ベッドフォード公爵夫人のアンナが始めたという話がよく知られている。
今のホテルのアフタヌーンティーは、三段のスタンドに軽食とお菓子が並び、紅茶がポットで出てくる形が多い。2時間ほどの時間制限の中で、紅茶をおかわりしながら、ゆっくり食べる。食事でもおやつでもない、午後の贅沢な時間そのものを楽しむものだ。
つまり、アフタヌーンティーの本質は「ゆっくり過ごす午後の時間」だ。それは、一人の男にこそ必要なものだ。急がず、誰にも合わせず、深いソファで2時間。甘いものと紅茶は、その時間を楽しむための道具にすぎない。
男一人にこそ、アフタヌーンティーが向いている
アフタヌーンティーを男一人で楽しむべき理由は三つある。
一つ目は、スタンドの全部が自分のものだということ。二人で行けば、同じケーキを分けるか、「どっちを食べる?」と譲り合う。一人なら、全部を自分の好きな順番で食べられる。
二つ目は、写真に時間を取られないこと。連れがいれば、スタンドが運ばれてきてから数分間は撮影会になる。一人なら、一枚だけ撮って、すぐに食べ始められる。スコーンは焼きたての温かいうちがいちばんうまい。
三つ目は、2時間を自分のペースで使えること。会話をしなくていいので、紅茶の香りと味、ケーキの細かい工夫、窓の外の景色に集中できる。甘いものを、甘いものとして真剣に味わえるのは、一人の客だ。
1名で予約できる店の探し方
アフタヌーンティーは、予約制の店が多い。そして、店によっては「2名様から」としているところもある。一人で行くなら、まず予約できるかを確認しろ。
- 予約サイトで人数を「1名」にして探す1名で予約できるアフタヌーンティーだけが出てくる。
- ホテルの公式サイトを見るホテルのレストランやラウンジのページで、予約の条件を確認する。
- 電話で確認するわからなければ、「一人ですが、アフタヌーンティーは予約できますか」と聞けばいい。
- 平日の早い時間を選ぶ週末の午後は混む。平日の昼過ぎの早い時間なら、窓際の席も取りやすい。
人気の季節限定のメニューは、予約がすぐに埋まることがある。だが、一人なら、2名以上の予約が埋まっていても、1名分の空きが残っていることがある。キャンセルが出ることもあるので、こまめに確認してみろ。
三段スタンドの食べ方
三段のスタンドは、下の段から上の段へ食べ進めるのが一般的だと言われる。
| 段 | 中身の例 | 食べ方のひとこと |
|---|---|---|
| 下の段(1番目) | サンドイッチ、キッシュなどの塩気のあるもの | 最初に塩気のあるもので腹を落ち着ける |
| 真ん中の段(2番目) | スコーン | 温かいうちに。横に割って、クロテッドクリームとジャムをのせる |
| 上の段(3番目) | ケーキ、タルト、マカロン、季節のデザート | 最後に、紅茶と一緒にゆっくり |
ただし、これは決まりではない。スコーンが冷めないうちに先に食べてもいいし、好きなケーキから食べてもいい。店によっては、スタンドではなく、一皿ずつコースのように出すところもある。一人なら、自分の好きな順番で食べればいい。誰も見ていない。
スコーンは、ナイフで切らずに、手で横に二つに割るのがよいとされる。割った断面に、クロテッドクリームとジャムをのせて食べる。クリームが先かジャムが先かで、イギリスでは地方ごとに意見が分かれると言われる。一人なら、どちらでも好きな方でいい。
紅茶の頼み方
アフタヌーンティーのもう一つの主役は、紅茶だ。ホテルのアフタヌーンティーでは、紅茶をおかわり自由にしている店が多い。
- 最初はストレートで:ダージリンやアッサムなど、店のおすすめをストレートで
- 種類を変えて試す:おかわりのたびに、違う種類の紅茶を頼む
- ミルクティーにする:アッサムなど濃い紅茶は、ミルクとよく合う
- フレーバーティー:ベルガモットの香りのアールグレイなど、香りのある紅茶も
- コーヒーやハーブティーも:紅茶以外の飲み物を選べる店もある
一人の利点は、紅茶の香りと味に集中できることだ。ポットから注いだ一杯目と、少し時間がたった二杯目では、味が変わる。ゆっくり2時間かけて、紅茶の種類を3〜4杯試す。紅茶の飲み比べも、一人のアフタヌーンティーの楽しみだ。
料金の目安
アフタヌーンティーの料金の目安(1人)
Fig. 01ホテルのアフタヌーンティーは、6,000〜7,000円前後がひとつの目安だ。高く感じるかもしれないが、ホテルのラウンジの深いソファで2時間過ごせる席料が入っていると思えばいい。昼食を軽くして、アフタヌーンティーを昼と夕方の間の食事にすれば、一日の食費としてはそれほど高くない。
糖分の取りすぎに気をつけろ
アフタヌーンティーは、糖分がとても多い。ケーキ、マカロン、スコーンのジャム、紅茶に入れる砂糖。気づかないうちに、一日に取っていい糖分を大きく超える。
WHOがすすめる1日の遊離糖類の目安(成人、1日2,000kcalの場合)
Fig. 02WHOは、成人の遊離糖類(砂糖など、食品に加えられた糖)を、1日の総エネルギーの10%未満、できれば5%未満にすることをすすめている。1日2,000kcalなら、およそ50g未満、望ましくは25g未満だ。ケーキ一つで、この目安の大部分に届くこともある。
- 紅茶に砂糖を入れない:ケーキが甘いので、紅茶はストレートで十分だ
- 前後の食事で甘いものを控える:アフタヌーンティーの日は、朝と夜の甘いものをやめる
- 昼食を軽くする:アフタヌーンティーを昼食の代わりにしてもいい
- 月に一度のご褒美にする:毎週行くものではない
一人の男の健康は、自分で守るしかない。甘いものを、月に一度、思いきり楽しむ。それが、アフタヌーンティーを長く楽しむためのルールだ。
2時間の過ごし方
- 着席したら、紅茶を選ぶメニューから、最初の一杯を選ぶ。わからなければ店のおすすめを。
- スタンドが来たら、一枚だけ写真を撮る撮ったら、スマホはしまう。
- 下の段のサンドイッチから塩気のあるもので、腹を落ち着ける。
- スコーンを温かいうちに手で割って、クリームとジャムで。
- 紅茶を替える種類を変えて、二杯目、三杯目。
- 上の段のケーキを、一つずつ一口ずつ、紅茶と交互に。
- 最後の30分は、窓の外を眺める紅茶をもう一杯頼み、ソファに深く座って、何もしない時間にする。
アフタヌーンティーの最後の30分が、いちばんの贅沢だ。スタンドの上はもうほとんど空になり、ポットの紅茶だけが残っている。窓の外の景色を眺めながら、ゆっくり紅茶を飲む。甘いものを食べ終えたあとの、静かな時間こそが、アフタヌーンティーの本当の目的だ。
男一人の気恥ずかしさを、捨てろ
男一人でアフタヌーンティーに行くのは、気恥ずかしいかもしれない。周りは女性客ばかりで、自分だけが浮いている気がする。
だが、誰もお前を見ていない。周りの客は、自分のテーブルのスタンドと、写真と、会話に夢中だ。そして、ホテルのラウンジのスタッフは、一人客にも男性客にも慣れている。予約が入れば、誰であっても同じようにもてなしてくれる。
甘いものが好きなのに、気恥ずかしさで諦めるのはもったいない。一度行けば、二度目からは何も気にならない。甘いものが好きな男は、堂々と甘いものを食べればいい。
服装
ホテルのラウンジのアフタヌーンティーなら、襟のあるシャツか、きれいなニットがいい。ジャケットがあれば、なお落ち着いて座っていられる。短パンやサンダル、汚れたスニーカーは避けろ。服装の決まりがある店もあるので、予約のときに確認しておけ。
季節のアフタヌーンティーを楽しむ
ホテルのアフタヌーンティーは、季節ごとにテーマが変わることが多い。春は苺や桜、夏はマンゴーや桃、秋は栗や芋、冬はチョコレートやクリスマス。同じホテルでも、季節が変われば、スタンドの上がまるで違う。
お気に入りのホテルを一つ決めて、季節ごとに通うのもいい。一人なら、季節の始まりの平日に、空いているうちに予約できる。年に4回、季節のスタンドを一人で味わう。甘いもの好きの男の、静かな年中行事だ。行った日付と、いちばんうまかった一品を手帳に書き残しておけば、翌年の同じ季節に読み返す楽しみも増える。
アフタヌーンティーと組み合わせる
- 美術館のあとに:午前に美術館を回り、昼過ぎにホテルのアフタヌーンティー
- ホテルに泊まる日に:チェックインのあと、ラウンジでアフタヌーンティー。夜は軽く済ませる
- 誕生日に:自分の誕生日に、一人でアフタヌーンティーを予約する
- 雨の日に:外に出る気がしない日は、ホテルのラウンジで2時間過ごす
一人のアフタヌーンティーと、付き合わされるアフタヌーンティー
男一人のアフタヌーンティー
- スタンドの全部を、好きな順番で
- スコーンは、焼きたての温かいうちに
- 紅茶を種類を変えて、3〜4杯
- 最後の30分は、窓の外を眺めて何もしない
付き合わされるアフタヌーンティー
- スタンドが来たら、数分間の撮影会
- ケーキは「どっちを食べる?」と譲り合い
- スコーンは、写真を撮り終えたころに冷めている
- 会話を途切れさせないことに気を使う
もちろん、誰かと一緒に楽しむアフタヌーンティーにも、その人なりの楽しさはあるのだろう。だが、甘いものと紅茶を、誰にも遠慮せず、自分のペースで2時間味わう午後は、一人の男にしか手に入らない。
お前は甘いものが好きなのに、人目を気にして、コンビニのシュークリームを車の中で食べている。俺はホテルのラウンジの深いソファで、焼きたてのスコーンと季節のケーキを、紅茶を4杯飲みながら2時間かけて食べた。好きなものを好きと言えない人生の方が、よほど恥ずかしい。
まとめ:甘いものを、一人で堂々と貪れ
アフタヌーンティーは、19世紀のイギリスで生まれた、午後の時間をゆっくり楽しむ習慣だ。女性客が多いが、甘いもの好きの男が一人で楽しんでいけない理由はない。1名で予約できる店を予約サイトで探し、平日の早い時間を選べ。三段スタンドは下から上へが基本だが、好きな順番で食べてもいい。紅茶は種類を変えて何杯も楽しめ。
ホテルのラウンジで6,000〜7,000円前後が目安。糖分は多いので、紅茶に砂糖を入れず、前後の食事で甘いものを控え、月に一度のご褒美にしろ。料金や予約の条件、服装の決まりは店によって違うので、予約の前に確認してほしい。
深いソファに沈んで、甘いものを一人で堂々と貪れ。末代で何が悪い。
よくある質問
アフタヌーンティーに男一人で行っても浮かない?
女性客が多いのは確かだが、ホテルのラウンジには、一人で紅茶を飲む客や、男性客もいる。三段のスタンドが運ばれてきてしまえば、周りの客は自分のテーブルのスイーツと写真に夢中で、男の一人客を気にしていない。平日の早い時間なら、さらに落ち着いて楽しめる。
アフタヌーンティーは1名で予約できる?
店による。多くのホテルは1名から予約できるが、2名以上からとしている店もある。予約サイトで人数を1名にして探すか、店に電話で確認するといい。
三段のスタンドはどの順番で食べる?
一般的には、下の段のサンドイッチなどの塩気のあるもの、真ん中の段のスコーン、上の段のケーキやデザートの順に食べると言われる。ただし、決まりではなく、好きな順番で食べてもいい。店によっては、皿で一品ずつ出すスタイルもある。
アフタヌーンティーの料金はどのくらい?
東京のホテルでは、1人5,000〜1万円ほどが目安で、季節の限定メニューやシャンパン付きのプランはさらに高くなる。サービス料が別にかかる店も多い。料金は店や時期によって大きく違う。
甘いものを食べすぎない?
アフタヌーンティーは糖分が多い。WHOは、成人の遊離糖類を1日の総エネルギーの10%未満、できれば5%未満(およそ25g)にすることをすすめている。アフタヌーンティーの日は、その前後の食事で甘いものを控え、昼食を軽くするといい。
出典・参考資料
- WHO「Guideline: Sugars intake for adults and children」(2015年)
- 各ホテル・ティーサロンの公式サイト・予約サイト(料金・予約の条件は変更されることがあるため、予約前に確認のこと)