「子供1人育てるのに、いくらかかると思う?」と既婚の先輩に聞いてみろ。たいてい返ってくるのは「まあ、なんとかなるよ」だ。なんとかなる。便利な言葉だ。だがその先輩、昼飯は500円の弁当で、車は10年落ちで、趣味のゴルフは5年前にやめている。「なんとかなる」の中身は、自分の人生を削ることだ。
子育ての費用は、一度にドンと請求されない。毎月の食費、毎年の学費、塾代、習い事、部活の遠征費、スマホ代。少しずつ、20年以上かけて、確実に財布から抜けていく。だから親も総額を知らないまま払い続ける。家計簿の赤字を「子供の笑顔はプライスレス」で上書きしている親を、俺はたくさん知っている。
この記事では、文部科学省の最新の学習費調査(訂正後の数値)、大学の学費、基本的養育費をもとに、子供1人に消える金の総額を出す。そしてその金額を、独身男の老後資金と並べる。子供1人の値段は、お前の老後そのものだ。
この記事の結論
- 幼稚園から高校までの学習費は、すべて公立で約614万円、すべて私立で約1,969万円
- 大学と基本的養育費を足すと、子供1人に約2,500万〜4,000万円
- 児童手当の18年間の合計は約234万円。総額の1割にも満たない
- 子供1人の総額は、都内賃貸の独身男の老後資金の目安(約3,900万円)とほぼ同じ規模
- 子供は老後の保険にならない。その金は、自分の老後に回せ
結論:子供1人の総額は約2,500万〜4,000万円
先に結論を出しておく。子育ての費用は、大きく教育費(学校と塾などの学習費、大学の学費)と、基本的養育費(食費、衣類、医療、小遣い、レジャーなど)に分かれる。それぞれを足すとこうなる。
| 項目 | 公立中心コース | 私立中心コース |
|---|---|---|
| 幼稚園〜高校の学習費(15年間) | 約614万円 | 約1,969万円 |
| 大学の学費(4年間) | 約243万円(国立) | 約400万円(私立文系) |
| 基本的養育費(0〜22歳) | 約1,640万円 | 約1,640万円 |
| 合計 | 約2,497万円 | 約4,009万円 |
すべて公立・国立でも約2,500万円。私立中心なら約4,000万円。大学で一人暮らしをすれば仕送りが4年で数百万円上乗せされ、医学部や私立理系ならさらに跳ね上がる。子供1人は、都心のワンルームマンションを買うより高い買い物だ。しかも、このマンションは22年後に出て行って、資産として何も残らない。
幼稚園〜高校の学習費:公立約614万円、私立約1,969万円
文部科学省の「子供の学習費調査」は、子供を学校に通わせている保護者が、学校教育と学校外活動(塾、習い事など)に1年間に払った金額を調べた統計だ。令和5年度の調査は、2026年1月に数値の誤りが訂正された。ここでは訂正後の数値を使う。
幼稚園3歳〜高校3年の15年間の学習費総額(令和5年度・訂正後)
Fig. 01すべて公立でも約614万円。すべて私立なら約1,969万円で、約3.2倍だ。差が最も大きいのは小学校で、公立の約220万円に対し、私立は6年間で約1,046万円かかる。
| 学校 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|
| 幼稚園 | 約18.5万円 | 約34.7万円 |
| 小学校 | 約36.7万円 | 約174.2万円 |
| 中学校 | 約54.2万円 | 約156.0万円 |
| 高校(全日制) | 約59.7万円 | 約117.9万円 |
見落としがちなのが、公立でも塾や習い事の「学校外活動費」が大きいことだ。公立小学校の年約36.7万円のうち、約7割が塾や習い事などの学校外活動費だ。「公立だから安い」は、学校の授業料の話でしかない。
小4から塾、夏期講習、冬期講習、志望校別特訓。そして私立中高6年間。お前が息子の偏差値に注ぎ込んだ金で、俺は毎年海外に一人旅しながら、老後資金も作ってる。お前の息子が大学を出るころ、お前の手元には何が残ってる?
大学の学費:国立約243万円、私立は400万円から
高校を出ても、まだ終わらない。今は大学進学率が5割を超え、大学の学費が子育て費用の最後の山になる。
| 大学 | 4年間の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 国立大学 | 約243万円 | 入学料28.2万円+授業料年53.58万円×4(標準額) |
| 私立大学(文系) | 約400万円 | 入学料・授業料・施設設備費の平均から概算 |
| 私立大学(理系) | 約550万円 | 同上。実験・実習費でさらに増えることも |
| 私立大学(医歯系) | 2,000万円以上 | 6年間。大学によっては3,000万円を超える |
| 一人暮らしの仕送り | 約400〜600万円 | 月8〜12万円×4年。家賃が高い都市部ではさらに増える |
地方から東京の私立大学に一人暮らしで通わせれば、学費と仕送りで4年間に1,000万円近くになる。しかもこの出費は、親が50代のとき、つまり老後資金を最も貯めるべき時期に重なる。
基本的養育費:食費と生活費だけで約1,640万円
教育費以外にも、子供には毎日の生活費がかかる。食費、衣類、医療費、小遣い、レジャー、スマホ代。AIU保険の試算(「現代子育て経済考」)では、出産から22歳までの基本的養育費は約1,640万円とされている。
内閣府の「インターネットによる子育て費用に関する調査」(平成21年度)では、第1子1人あたりの年間の子育て費用総額は次のとおりだった。
第1子1人あたりの年間子育て費用総額(成長段階別)
Fig. 02中学生になると、1年で約156万円。食べ盛りの食費、部活の道具、塾代が重なるからだ。しかもこの調査は物価が今より低かった時期のもので、食料品や教育関連の値上がりを考えると、今はもっとかかっていると見た方がいい。
いつ金が出ていくのか:子供の年齢別に見る
子育て費用は、毎年同じ額が出ていくわけではない。親が32歳で第1子を持った場合、親の年齢と出費の山はこう重なる。
| 子の年齢 | 親の年齢 | 主な出費 | 負担感 |
|---|---|---|---|
| 0〜5歳 | 32〜37歳 | 保育料、オムツ、家族向けの住まいへの引っ越し | 中 |
| 6〜11歳 | 38〜43歳 | 習い事、塾(中学受験なら小4から本格化) | 中〜大 |
| 12〜17歳 | 44〜49歳 | 食費の増加、部活、塾、私立なら学費 | 大 |
| 18〜21歳 | 50〜53歳 | 大学の入学金・授業料、一人暮らしの仕送り | 最大 |
出費の最大の山が来るのは、親が50代前半のときだ。普通の会社員なら、役職定年や給料の頭打ちが見えてくる時期でもある。そこで老後資金を貯める代わりに、大学の学費を払う。子供2人なら、この山が2回来る。
児童手当で、どれだけ戻ってくるのか
「国の支援があるから大丈夫」と言う人もいる。では、児童手当でどれだけ戻ってくるのか計算してみよう。2024年10月から、児童手当は所得制限が撤廃され、高校生年代まで延長された。
| 期間 | 月額 | 合計 |
|---|---|---|
| 0〜2歳(3年間) | 1万5,000円 | 54万円 |
| 3歳〜高校生年代(15年間) | 1万円 | 180万円 |
| 合計(18年間) | — | 約234万円 |
子供1人の総額約2,500万円に対して、児童手当は約234万円。1割にも満たない。高校の授業料支援や幼児教育の無償化を加えても、子育て費用の大部分を親が負担する構図は変わらない。国の支援は、焼け石に水だ。
しかも、その財源の一部は、2026年度から始まった「子ども・子育て支援金」として、子供がいない独身からも集められている。
東京で子育てすると、さらに上乗せされる費用
ここまでの数字は全国平均だ。東京で子育てをすると、さらに上乗せされる費用がある。
| 項目 | 内容 | 増える理由 |
|---|---|---|
| 住居費 | 子供部屋のある2LDK〜3LDK | 23区の新築マンションの平均価格は1億円を超える。賃貸でも単身向けとの差は月数万円 |
| 中学受験 | 小4〜小6の塾代、私立中高6年間の学費 | 全国では私立中学に通う子は7.9%だが、東京ではずっと多い |
| 習い事 | 水泳、英語、ピアノ、プログラミング | 選択肢が多く、周りがやっているから自分の子もという圧力が強い |
| 交通・レジャー | テーマパーク、帰省、家族旅行 | 家族4人で動くと、1回の外出が数万円になる |
特に大きいのが中学受験だ。東京では、周りの子供が塾に通い始める小学4年生のころ、親は「うちもやらせるべきか」という選択を迫られる。塾代は3年間で200万円を超えることも珍しくなく、合格すれば私立中高6年間で約1,000万円の学費が続く。全国平均の「すべて公立」コースは、東京では意外と選びにくいのが現実だ。
独身なら、この選択に悩む必要は最初からない。東京の住居費の高さも、一人分の部屋なら十分に払える。東京は、子育てには最も金のかかる街で、独身には最も楽しい街だ。
男の老後資金と並べて比較する
さて、ここからが本題だ。子供1人に消える金を、独身男の老後資金と並べてみよう。都内で賃貸に住み続ける独身男性が、65歳から95歳までの30年間に必要な老後資金の目安は、約3,900万円(家計調査の単身無職世帯の赤字、家賃、介護費用などから試算)だ。
子供1人の費用と、独身男の老後資金
Fig. 03子供1人の費用は、独身男の老後資金とほぼ同じ規模だ。私立中心なら、老後資金の目安を超える。つまり、子供を1人持たないだけで、老後の不安はほぼ解消できる計算になる。逆に子供2人なら、老後資金2人分以上を、子供に差し出していることになる。
子供は、老後の保険にならない
「でも子供がいれば、老後に面倒を見てもらえるだろう」。それは、昭和の話だ。内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の人がいる世帯は、1980年には三世代世帯が約半数を占めていた。今は夫婦のみの世帯と単独世帯がそれぞれ約3割を占める。子供と同居して扶養してもらう老後は、もう少数派だ。
- 子供には子供の生活がある:子供自身も、住宅ローンと自分の子供の教育費で手一杯だ
- 介護はプロに任せる時代:介護保険制度ができ、介護は家族ではなく介護サービスで担うのが基本になった
- 仕送りする子は少ない:老後の生活費は、年金と自分の貯蓄でまかなうのが今の標準だ
子供に数千万円を投資しても、老後に返ってくる保証はない。だったら最初から、その金を自分の老後資金として積み立てた方が、確実に自分を守れる。
子供1人分の金で、独身男は何が買えるか
子供1人分の約2,500万円を、独身男が自分のために使ったらどうなるか。いくつかの使い道を並べてみる。
| 使い道 | 内容 |
|---|---|
| 老後資金 | 30代から毎月の積立で年4%運用すれば、65歳時点で数千万円規模の資産になる |
| 早期リタイア | 生活費を抑えれば、数年早く会社を辞める選択肢が生まれる |
| 海外一人旅 | 1回30万円の旅を、毎年1回で80年分以上 |
| 住まい | 職場に近い便利な場所に、広めの部屋を借りられる |
| 健康 | 人間ドック、ジム、パーソナルトレーニング、良い寝具。体への投資を惜しまない |
どれを選んでもいい。重要なのは、使い道を自分で決められることだ。子供に使った2,500万円の使い道は、子供の進路と世間の相場が決める。独身の2,500万円の使い道は、お前が決める。
まとめ:子供1人の値段は、お前の老後そのものだ
幼稚園から高校までの学習費は、すべて公立で約614万円、すべて私立で約1,969万円(文部科学省、令和5年度・訂正後)。大学の学費と基本的養育費を足すと、子供1人に約2,500万〜4,000万円かかる。児童手当の合計は約234万円で、1割にも満たない。
子供1人の費用は、都内賃貸の独身男の老後資金の目安とほぼ同じ規模だ。そして子供は、もう老後の保険にはならない。出費の最大の山は親が50代のときに来て、老後資金を貯めるべき時期を食いつぶす。
子供に使うはずだった金は、お前の老後と、お前の今の楽しみに回せ。末代で何が悪い。
よくある質問
子育て費用の総額は子供1人いくらですか?
進路によって大きく変わる。文部科学省の子供の学習費調査(令和5年度・訂正後)では、幼稚園3歳から高校3年までの15年間の学習費は、すべて公立で約614万円、すべて私立で約1,969万円。これに大学の学費(国立で約243万円、私立文系で約400万円前後)と、食費や衣類などの基本的養育費(AIU保険の試算で約1,640万円)を足すと、1人あたり約2,500万〜4,000万円になる。
教育費は公立と私立でどれくらい違いますか?
幼稚園から高校まで15年間の学習費は、すべて公立なら約614万円、すべて私立なら約1,969万円で、約3.2倍の差がある。特に私立小学校は6年間で約1,046万円と高額だ。
児童手当で子育て費用はどのくらいまかなえますか?
2024年10月からの制度では、第1子・第2子は3歳未満が月1万5,000円、3歳から高校生年代までが月1万円で、18年間の合計は約234万円になる。子供1人の総額約2,500万円以上と比べると、1割にも満たない。
子供がいないと老後はどうなりますか?
子供に頼れない分、自分で老後資金と老後の手続きの準備が必要になる。ただし、今は子供がいても同居して扶養してもらう世帯は少数派で、65歳以上のいる世帯の約3割ずつが夫婦のみと単独世帯だ。子供に使うはずだった金を自分の老後に回せるのは、子供がいない人の大きな強みだ。
子育て費用が一番かかるのはいつですか?
大学時代だ。入学金と授業料に加え、一人暮らしなら仕送りもかかる。次に高いのが私立中学・高校に通わせる時期と、塾代がかさむ受験期だ。子供が18〜22歳の時期は親が50代になることが多く、老後資金を貯めるべき時期と重なる。
出典・参考資料
- 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」および「『子供の学習費調査』結果の訂正について」(2026年1月16日)
- 文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」「私立大学等の入学者に係る初年度学生納付金平均額」
- AIU保険「現代子育て経済考」(基本的養育費の試算)
- 内閣府「インターネットによる子育て費用に関する調査」(平成21年度)
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
- 内閣府「高齢社会白書」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年平均」