節約は、限界がある。家賃を下げ、通信費を下げ、保険を見直しても、月に数万円が限界だ。だが、収入には上限がない。年収が100万円上がれば、手取りで70万円以上増える。それは、どんな節約よりも大きい。
家族持ちの男は、収入を上げる冒険がしにくい。「住宅ローンがあるから転職はできない」「子供の学校があるから引っ越しは無理」「休日は家族サービスで副業の時間がない」。収入を上げたいのに、家族の事情が足を引っ張る。
独身の男は、転職も副業も、自分一人の判断で動ける。この記事では、国の統計で転職と副業の実態を確かめ、独身の男が年収を上げる3つの道(転職・副業・社内昇進)の戦略をまとめた。
この記事の結論
- 転職で賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%。増える人の方が多い
- 40代でも増加は45%台。55歳を過ぎると減る人の方が多くなる
- 副業がある人は305万人で、5年で60万人増えた
- 年収を上げる道は、転職・副業・社内昇進の3つ
- 家族に縛られない独身の男は、どの道も自分の判断で選べる
なぜ、節約より収入なのか
資産を増やす方法は、収入を上げるか、支出を下げるか、運用するかの3つしかない。このうち、支出を下げるのには限界がある。生活費をゼロにはできない。運用は、元手が大きくなってから効いてくる。
一方、収入には上限がない。編集部の概算では、独身会社員の手取りは、年収500万円で約389万円、600万円で約461万円、700万円で約529万円だ。年収が100万円上がれば、手取りは約70万円増える。月に約6万円だ。これを毎月積み立てに回せば、新NISAの枠もiDeCoの拡充も、ずっと早く使い切れる。
転職で、賃金は上がるのか
厚生労働省の雇用動向調査(令和6年)によると、1年間の転職入職者のうち、前職と比べて賃金が「増加」した人は40.5%、「減少」した人は29.4%、「変わらない」人は28.4%だった。「1割以上の増加」は29.4%で、前年より3.8ポイント上がった。
つまり、転職した人の4割が賃金を上げ、3割近くが1割以上上げている。賃金が増えた人の割合は、減った人の割合を11.1ポイント上回っている。転職は、もう「賃金が下がる覚悟でするもの」ではない。
年代別に見ると、55歳が分かれ目だ
年代別・転職で賃金が増加・減少した人の割合(令和6年)
Fig. 0130代から40代後半までは、転職で賃金が増えた人が45%前後で、減った人を大きく上回っている。45〜49歳でも46.4%が増加だ。50〜54歳になると増加は39.0%に下がり、55〜59歳では増加27.4%、減少36.6%と逆転する。
つまり、転職で年収を上げるなら、50代前半までが勝負だ。40代の独身の男なら、まだ十分にチャンスがある。50代後半からの転職は、賃金よりも、働き方や定年後を見据えた選択になることが多い。
年収を上げる3つの道
| 道 | 向いている男 | 上がり方 | リスク |
|---|---|---|---|
| 転職 | 今の職場で評価や給与が頭打ち | 一度に大きく上がることがある | 職場が合わない、年収が下がる可能性 |
| 副業 | 本業の経験や趣味の技術を生かせる | 少しずつ上乗せ | 時間と健康、就業規則、税金 |
| 社内昇進 | 昇進の道が開けている | 着実に上がる | 責任と仕事量が増える |
どれか一つを選ぶ必要はない。社内で昇進を目指しながら副業で上乗せし、頭打ちになったら転職する。独身の男は、この3つを自分の判断で組み合わせられる。
道1:転職で一気に上げる
- 自分の市場価値を知る転職サイトに登録し、スカウトの内容や提示される年収を見る。今の年収が相場より低いかどうかがわかる。
- 専門性を言葉にする何ができるのか、どんな成果を出したのか。数字で語れるように職務経歴を整理する。
- 伸びている業界・職種を狙う人手が足りない分野ほど、年収は上がりやすい。
- 在職中に動く辞めてから探すと、焦って条件の悪い職場を選びやすい。
- 年収以外も確かめる退職金、企業年金の有無、残業、勤務地。手取りと老後の両方で比べる。
独身の男の転職の強みは、勤務地や働き方の制約が少ないことだ。家族持ちの男は、子供の学校や配偶者の仕事のために、通える範囲でしか探せない。独身の男は、全国の求人、転勤のある職場、出張の多い仕事も選択肢に入れられる。選択肢が広いほど、条件のいい職場に出会える。
転職先を比べるときは、企業年金の有無も見ておけ。企業年金のない会社なら、2026年12月分からiDeCoの掛金を月6.2万円まで出せる予定だ(金融機関の案内による)。年収だけでなく、老後の制度まで含めて比べろ。
転職で失敗しないために
転職で賃金が減った人も29.4%いる。1割以上減った人は21.7%だ。転職は、うまくいけば大きく上がるが、失敗すれば下がる。失敗の多くは、準備不足と焦りから生まれる。
- 辞めてから探す:収入がない焦りから、条件の悪い職場に飛びつく
- 年収の額面だけで決める:残業代込みの年収、退職金や企業年金のない職場、通勤時間の長さを見落とす
- 職場の中身を確かめない:仕事の内容、人間関係、評価の仕組みを知らずに入る
- 今の職場への不満だけで動く:次の職場で何をしたいかがないと、同じ不満を繰り返す
独身の男は、転職で一時的に収入が下がっても、家族を巻き込まずに立て直せる。だが、それは無計画に動いていい理由にはならない。生活防衛資金を半年分以上持ち、在職中に次を決めてから辞める。これだけで、失敗の多くは避けられる。
道2:副業で上乗せする
総務省の就業構造基本調査(2022年)によると、非農林業従事者のうち副業がある人は305万人で、5年前より60万人増えた。そして、今の仕事に加えて別の仕事もしたいと考える追加就業希望者は493万人で、5年前より93万人増えた。
副業がある人と、追加就業を希望する人(非農林業従事者)
Fig. 02副業は、独身の男にいちばん向いた稼ぎ方だ。家族持ちの男が「休日は家族の時間」と言っている間に、独身の男は平日の夜と休日を、自分の判断で副業に使える。
- 本業の経験を生かす:経理、設計、プログラミング、営業、翻訳。本業の技術は、そのまま副業になる
- 趣味の技術を生かす:写真、文章、料理、楽器、模型。好きなことが収入になる
- 教える:資格や語学、仕事の技術を、オンラインで教える
- 時間を売る:短時間のアルバイト。確実だが、時給は上がりにくい
おすすめは、本業の経験を生かす副業だ。時給が高く、本業の技術も磨かれる。副業で磨いた技術が、転職のときの武器にもなる。副業は、収入の上乗せであると同時に、転職の準備でもある。
副業の注意点
- 就業規則を確かめる:副業を認めているか、届け出が必要か。黙ってやると、本業での立場を失うことがある
- 確定申告:会社員の場合、副業の所得が年20万円を超えると、原則として確定申告が必要になる
- 住民税の徴収方法:確定申告のとき、副業分の住民税を自分で納める方法を選べることがある
- 健康:本業と副業で働きすぎて、体を壊せば元も子もない。一人の男は、倒れても看病してくれる人がいない
- 怪しい副業:「誰でも月100万円」「スマホで簡単」と高額な情報商材や講座を売りつける勧誘には乗るな
特に、副業を装った詐欺には気をつけろ。最初に高額な教材やサポートの費用を払わせる手口がある。稼ぐための副業で、先に金を払わされたら、それは副業ではない。
道3:社内で昇進する
いちばん地味だが、確実なのが社内での昇進だ。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、男性の所定内給与は、40〜44歳の月39万8,200円から、55〜59歳の月44万5,600円まで上がっていく。昇進すれば、この平均を大きく超えられる。
- 評価の基準を知る:会社が何を評価するのかを、上司や人事に確かめる
- 成果を数字で示す:売上、コスト削減、時間の短縮。評価面談で数字を出す
- 管理職の役割を引き受ける:後輩の育成、プロジェクトの取りまとめ
- 資格を取る:昇進の条件になっている資格や、手当がつく資格
独身の男は、仕事に時間を集中させることも、自分の判断でできる。もちろん、働きすぎて体を壊すのは本末転倒だ。だが、勝負の時期に仕事に集中できるのは、家族の予定に縛られない独身の男の強みだ。
どの道も、土台は専門性だ
転職も、副業も、昇進も、土台は専門性だ。何ができるのか、どんな成果を出せるのか。それが市場で評価されるから、年収が上がる。
- 今の仕事の強みを書き出す何が得意で、どんな成果を出したか。
- 市場で求められている技術と比べる求人情報を見て、足りない技術を知る。
- 足りない技術を学ぶ資格、講座、独学。平日の夜と休日を使う。
- 副業や社内の仕事で使ってみる学んだ技術を、実際の仕事で試す。
- 実績として語れるようにする職務経歴書に書ける成果にする。
独身の男は、学ぶ時間と金を、自分の判断で使える。平日の夜に講座に通い、休日に資格の勉強をする。家族持ちの男が「子供が大きくなってから」と先送りにしていることを、今すぐ始められる。自分への投資は、いちばん利回りのいい投資だ。
上がった収入を、どう使うか
年収が上がったら、増えた分の使い方が大事だ。収入が上がるたびに生活水準を上げれば、いくら稼いでも何も残らない。
- 増えた分の半分を積立に回す:iDeCoの掛金を上げ、新NISAの積立を増やす
- 生活防衛資金を厚くする:転職や副業で収入が不安定になる時期に備える
- 残りの半分で暮らしを少し良くする:頑張った自分へのご褒美も大事だ
増えた収入を積立に回せば、FIREや老後資金の目標に、ぐっと早く届く。年収が100万円上がり、手取りで70万円増えた分の半分、35万円を毎年積み立てれば、20年で元本だけで700万円だ。
年代別の稼ぎ方の戦略
| 年代 | 戦略 |
|---|---|
| 20〜30代 | 専門性を磨き、転職で年収を上げる。副業で技術の幅を広げる |
| 40代 | 転職の最後の大きなチャンス。管理職か専門職かの道を決める |
| 50代前半 | 転職で上げるなら今のうち。副業を、定年後の仕事の準備に育てる |
| 50代後半〜 | 賃金より働き方。定年後も続けられる仕事と副業を固める |
50代後半からは、転職で賃金が下がる人の方が多くなる。だから、50代前半までに年収を上げ、その後は定年後の仕事を準備するのが基本の流れだ。副業で育てた技術と人脈が、定年後の仕事になる。
動ける独身と、動けない既婚
収入を上げに動ける独身の男
- 全国の求人、転勤のある職場も選択肢に入る
- 平日の夜と休日を、副業と学びに使える
- 勝負の時期に、仕事に集中できる
- 増えた収入の使い道を、自分で決められる
収入を上げに動けない既婚の男
- 住宅ローンと子供の学校で、転職の範囲が狭い
- 休日は家族サービスで、副業の時間がない
- 年収が下がるリスクを、家族のために取れない
- 増えた収入は、教育費に吸い込まれる
もちろん、家族の支えがあって仕事に打ち込めている既婚の男もいる。だが、転職も副業も、自分一人の判断で決めて動けるのは、独身の男の大きな強みだ。その強みを、収入を上げることに使え。
守るものがないから、攻められる。俺は転職で年収を上げ、副業で技術を磨き、増えた分を積み立てている。お前は「家族がいるから冒険できない」と言うが、それは家族のせいか? 動かない理由を家族に預けているだけじゃないのか。
まとめ:収入には、上限がない
資産を増やすいちばんの近道は、収入を上げることだ。厚生労働省の雇用動向調査(令和6年)では、転職で賃金が増加した人は40.5%、減少した人は29.4%で、1割以上増加した人は29.4%だった。40代でも増加は45%台だが、55歳を過ぎると減少した人の方が多くなる。副業がある人は305万人で、5年で60万人増えた。
年収を上げる道は、転職・副業・社内昇進の3つ。どの道も、土台は専門性だ。独身の男は、勤務地の制約が少なく、平日の夜と休日を副業と学びに使え、勝負の時期に仕事に集中できる。増えた収入の半分は積み立てに回し、副業の就業規則、確定申告、健康、怪しい勧誘には気をつけろ。制度や税金の扱いは変わるので、最新の情報を確認してほしい。
守るものがないなら、攻めろ。末代で何が悪い。
よくある質問
転職すると年収は上がる?
上がる人の方が多い。厚生労働省の雇用動向調査(令和6年)では、転職入職者のうち、前職と比べて賃金が「増加」した人は40.5%、「減少」した人は29.4%、「変わらない」人は28.4%だった。「1割以上の増加」は29.4%だ。
40代・50代の転職で年収は上がる?
40代はまだ上がる人が多い。同じ調査で、賃金が増加した人は40〜44歳で45.9%、45〜49歳で46.4%、50〜54歳で39.0%だった。55〜59歳になると27.4%に下がり、減少した人(36.6%)の方が多くなる。
独身男性に副業は向いている?
向いている。家族の予定に縛られず、平日の夜や休日を副業に使える。総務省の就業構造基本調査(2022年)では、副業がある非農林業従事者は305万人で、5年前より60万人増えた。勤め先の就業規則で副業が認められているかは、事前に確認が必要だ。
副業で気をつけることは?
勤め先の就業規則、本業との時間の兼ね合いと健康、そして税金だ。会社員の場合、副業の所得が年20万円を超えると、原則として確定申告が必要になる。高額な情報商材や「誰でも稼げる」副業の勧誘にも注意したい。
年収を上げるいちばんの方法は?
人によるが、今の職場で評価が上がる見込みが低いなら転職、今の仕事の経験を生かせるなら副業、昇進の道が開けているなら社内での昇進が近道だ。どの道も、市場で評価される専門性を磨くことが土台になる。
出典・参考資料
- 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(転職入職者の賃金変動状況)
- 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の要約」(副業がある者、追加就業希望者)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
- 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」