誕生月に届く、青い封筒。ねんきん定期便だ。開いて見てみると、将来の年金の見込み額が書いてある。「これだけで、老後を暮らせるのか」。独身の男なら、誰もが一度は考える。
既婚の男は、こう言う。「うちは夫婦二人分の年金があるから」。だが、その二人分の年金で、二人分の生活費をまかなうのだ。妻が先に亡くなれば年金は減り、熟年離婚すれば年金は分割される。二人分の年金は、二人分の不安と隣り合わせだ。
独身の男は、自分一人の年金で、自分一人の暮らしを支える。だからこそ、自分の年金がいくらになるのかを知り、増やす方法を知っておく必要がある。この記事では、年金の仕組み、男性の平均受給額、平均年収別の目安、そして独身が年金を増やす6つの方法をまとめた。
この記事の結論
- 厚生年金の男性の平均月額は16万9,967円、国民年金のみなら6万1,595円とされる
- 40年働いた会社員の目安は、平均年収400万円で月約14.2万円、600万円で月約17.9万円
- 独身か既婚かで本人の年金額は変わらない。違うのは、世帯の収入と加給年金
- 年金を増やすなら、長く働く・繰り下げる・iDeCoが効く
- 自営業は年金が薄い。付加年金・国民年金基金・iDeCoで上乗せしろ
年金の仕組み:2階建て
日本の公的年金は、2階建てになっている。
| 階 | 年金 | 対象 | 額の決まり方 |
|---|---|---|---|
| 1階 | 国民年金(老齢基礎年金) | 20歳以上60歳未満の全員 | 加入した月数で決まる。40年加入で満額 |
| 2階 | 厚生年金(老齢厚生年金) | 会社員・公務員 | 加入した期間と、その間の給与・賞与で決まる |
国民年金の満額は、2025年度で月6万9,308円だ(毎年度、物価や賃金に合わせて改定される)。会社員は、これに厚生年金が上乗せされる。厚生年金の額は、働いた期間と給与の額で決まる。長く働き、給与が高いほど、年金は多くなる。
自営業やフリーランスは、1階の国民年金だけだ。2階がない分、老後の年金はぐっと少なくなる。だから、自営業の独身の男は、自分で2階を作る必要がある。
男性の平均受給額
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和6年度)によると、平均の年金月額は次のとおりとされる(解説記事による)。
年金の平均月額(男性、令和6年度)
Fig. 01会社員として厚生年金に加入していた男性の平均は月約17万円。国民年金だけの男性は月約6万円。約11万円の差だ。この差が、老後の暮らしをまるで変える。そして、この額は額面で、ここから介護保険料、健康保険料、税金が引かれるので、手取りは1割ほど少なくなる。
総務省の家計調査(2024年)では、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月14万9,286円だった。厚生年金の平均の手取り(約15万円)なら、ほぼ生活費をまかなえる。国民年金だけでは、毎月8万円以上足りない。
平均年収別の年金の目安
厚生年金の報酬比例部分は、ざっくり「平均の給与(賞与を含む月額)×5.481/1,000×加入月数」で計算できる(2003年4月以降の加入期間の場合)。40年(480か月)会社員として働いた場合の目安を、平均年収別に計算した。
| 働いていた期間の平均年収 | 厚生年金(報酬比例) | 基礎年金(満額) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約5.5万円 | 約6.9万円 | 約12.4万円 |
| 400万円 | 約7.3万円 | 約6.9万円 | 約14.2万円 |
| 500万円 | 約9.1万円 | 約6.9万円 | 約16.1万円 |
| 600万円 | 約11.0万円 | 約6.9万円 | 約17.9万円 |
| 800万円 | 約14.6万円 | 約6.9万円 | 約21.5万円 |
平均年収別の年金の目安(40年加入、月額)
Fig. 02平均年収500万円で40年働けば、月約16万円。平均年収600万円なら月約18万円だ。これは「働いていた期間全体の平均」の年収で、若いころの低い給与も含めた平均だ。50代のピークの給与ではない点に注意しろ。正確な額は、ねんきん定期便で確かめてほしい。
独身と既婚で、年金は何が違うのか
本人の老齢年金の額は、独身か既婚かでは変わらない。同じように働けば、同じ年金がもらえる。違うのは、次の点だ。
| 項目 | 独身の男 | 既婚の男 |
|---|---|---|
| 世帯の年金 | 自分一人の年金 | 夫婦二人の年金の合計 |
| 世帯の生活費 | 一人分 | 二人分 |
| 加給年金 | なし | 条件を満たせば、年下の配偶者がいる間に上乗せ |
| 遺族年金 | 受け取る人がいない | 本人が亡くなれば、配偶者が受け取れることがある |
| 離婚による年金分割 | なし | 熟年離婚すれば、婚姻期間の厚生年金を分割 |
既婚の男は「夫婦二人分の年金がある」と言う。だが、生活費も二人分だ。そして、配偶者が先に亡くなれば、世帯の年金は減る。熟年離婚すれば、婚姻期間の厚生年金は分割される。二人分の年金は、二人で暮らし続けることが前提だ。
独身の男は、自分一人の年金で、一人分の生活費をまかなう。分割される心配も、配偶者の死で減る心配もない。自分の年金を、自分の努力で増やせば、それがそのまま自分の老後になる。
独身が年金を増やす6つの方法
| 方法 | 中身 | 向いている男 |
|---|---|---|
| 1. 長く厚生年金に加入する | 60代も会社員として働く。70歳まで加入できる | 会社員 |
| 2. 繰り下げ受給 | 受け取りを遅らせ、1か月あたり0.7%増やす | 健康で、ほかに生活費がある男 |
| 3. 国民年金の任意加入 | 40年に満たない加入期間を、60〜65歳で埋める | 未納や免除の期間がある男 |
| 4. 付加年金 | 月400円の付加保険料で、年金が増える | 自営業・フリーランス |
| 5. 国民年金基金 | 自営業のための上乗せの年金 | 自営業・フリーランス |
| 6. iDeCo | 自分で作る私的年金。掛金は全額所得控除 | 全員(条件あり) |
1. 長く厚生年金に加入して働く
いちばん確実なのは、長く働いて、厚生年金に加入し続けることだ。厚生年金は、70歳まで加入できる。60代も会社員として働けば、その分、報酬比例部分が増える。
たとえば、60歳から65歳まで、月30万円の給与で働けば、報酬比例部分は年に約9.9万円(30万円×5.481/1,000×60か月)増える計算だ。月に約8,000円、一生続く。さらに、働いている間は資産を取り崩さずに済む。長く働くことは、年金を増やし、資産を守る、二重に効く方法だ。
2. 繰り下げ受給で、年金そのものを増やす
年金は、原則65歳から受け取るが、受け取りを遅らせると増える。1か月遅らせるごとに0.7%、70歳まで遅らせれば42%、75歳まで遅らせれば84%増える。月17万円の人なら、70歳からは月約24万円、75歳からは月約31万円だ。
独身の男にとって、繰り下げは長生きのリスクへの保険になる。家族に頼れない独身の男が最も恐れるのは、長生きして資産が尽きることだ。年金を増やしておけば、資産が尽きても、年金だけで暮らせる額に近づける。
ただし、繰り下げている間の生活費は、働いた収入や資産で用意する必要がある。そして、早く亡くなれば、受け取る総額は少なくなる。健康状態と資産の状況で判断しろ。厚生年金と基礎年金を、別々に繰り下げることもできる。
3. 国民年金の任意加入で、満額に近づける
国民年金の満額は、40年(480か月)加入した場合の額だ。学生時代に払っていなかった、失業中に免除を受けた、という期間があると、その分だけ基礎年金が減る。
60歳の時点で40年に満たない人は、60歳から65歳まで、国民年金に任意加入して、足りない期間を埋められる。1年加入するごとに、基礎年金は満額の40分の1ずつ増える。ねんきん定期便で、自分の加入月数を確かめろ。過去10年以内の免除期間なら、後から保険料を納める「追納」もできる。
4・5. 自営業は、付加年金と国民年金基金で上乗せ
自営業やフリーランスの独身の男は、国民年金だけだ。満額でも月約6.9万円。これでは、老後の生活費をまかなえない。だから、自分で2階を作れ。
- 付加年金:国民年金の保険料に月400円を上乗せすると、老後の年金が「200円×付加保険料を納めた月数」だけ毎年増える。2年受け取れば元が取れる計算だ
- 国民年金基金:自営業のための上乗せの公的な年金。掛金は全額所得控除。付加年金とは同時に加入できない
- iDeCo:自営業の掛金の上限は、国民年金基金などと合わせて月6.8万円。2026年12月分から月7.5万円に引き上げられる予定(金融機関の案内による)
- 小規模企業共済:自営業者の退職金にあたる制度。掛金は全額所得控除
自営業の独身の男は、会社員の男より老後の年金が月10万円以上少ないことを前提に、現役時代から上乗せを準備しろ。付加年金は月400円でできる、いちばん手軽な上乗せだ。
6. iDeCoで、自分の年金を作る
公的年金だけでは足りない分を、自分で作る私的年金がiDeCoだ。掛金は全額所得控除で、運用益は非課税。受け取るときは、一時金なら退職所得控除、年金形式なら公的年金等控除が使える。
2026年12月分から、企業年金のない会社員の掛金の上限は月2.3万円から月6.2万円に引き上げられる予定だ(金融機関の案内による)。月6.2万円を25年、年3%で運用できれば、約2,765万円になる計算だ。これを年金として受け取れば、公的年金に大きな上乗せができる。
年金だけで暮らせるのか
結局、独身の男は年金だけで暮らせるのか。答えは、「住まい次第」だ。
- 持ち家で厚生年金がある:平均的な年金なら、生活費のほとんどをまかなえる。不足は月数万円
- 賃貸で厚生年金がある:家賃の分だけ不足する。家賃6万円なら、毎月6万円前後の不足
- 国民年金だけ:持ち家でも毎月8万円以上、賃貸ならさらに大きく不足する
つまり、年金だけで暮らすのは、持ち家で厚生年金がある場合に限られる。それ以外の男は、年金の不足を資産の取り崩しで埋める必要がある。だから、現役時代に資産を作り、年金を増やす努力が要る。
今やること
- ねんきん定期便かねんきんネットで、見込み額を確かめる平均ではなく、自分の数字を知る。
- 加入月数を確かめる未納や免除の期間がないか。あれば追納や任意加入を検討する。
- 老後の住まいを考える持ち家か賃貸かで、年金で足りるかが決まる。
- iDeCoを始める、または増額する2026年12月の拡充に合わせて。
- 60代の働き方を考える長く働くほど、年金は増え、資産は守られる。
自分の年金を育てる独身と、二人分に頼る既婚
自分の年金を育てる独身の男
- ねんきん定期便で、自分の見込み額を知っている
- 60代も働き、厚生年金を増やす
- 繰り下げで、長生きのリスクに備える
- iDeCoで、自分の2階・3階を作る
二人分の年金に頼る既婚の男
- 「夫婦二人分あるから大丈夫」と思い込む
- 二人分の年金で、二人分の生活費を払う
- 配偶者が先に亡くなれば、世帯の年金は減る
- 熟年離婚すれば、厚生年金は分割される
もちろん、夫婦の年金で余裕のある老後を送る家庭もある。だが、独身の男の年金は、誰にも分割されず、配偶者の死で減ることもない。自分の努力で増やした分が、そのまま自分の老後になる。自分の年金は、自分で育てろ。
一人分の年金で、一人分の生活費をまかなう。それだけの話だ。俺は60代も働いて厚生年金を増やし、繰り下げで年金そのものを増やし、iDeCoで上乗せも作っている。お前の二人分の年金は、熟年離婚したら何分の一になる? 妻が先に逝ったら、いくらになる?
まとめ:自分の年金は、自分で育てろ
厚生年金(基礎年金を含む)の男性の平均月額は16万9,967円、国民年金のみなら6万1,595円とされる(令和6年度)。40年働いた会社員の目安は、働いていた期間の平均年収400万円で月約14.2万円、600万円で月約17.9万円(編集部の概算)。独身か既婚かで本人の年金額は変わらないが、独身の男は自分一人の年金で暮らすことになる。
年金を増やすには、長く厚生年金に加入して働く、繰り下げ受給で受け取りを遅らせる、国民年金の加入期間を任意加入で埋める、自営業なら付加年金や国民年金基金で上乗せする、iDeCoで私的年金を作る。年金だけで暮らせるのは、持ち家で厚生年金がある場合に限られる。まず、ねんきん定期便で自分の数字を確かめろ。年金額は毎年度改定され、制度も見直されるので、日本年金機構の最新の情報を確認してほしい。
誰にも分割されない年金を、自分の手で育てろ。末代で何が悪い。
よくある質問
独身男性の年金はいくら?
厚生労働省の厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和6年度)では、厚生年金(基礎年金を含む)の男性の平均月額は16万9,967円、国民年金(老齢基礎年金)のみの男性は6万1,595円とされる(解説記事による)。いずれも税金や社会保険料を引く前の額で、独身か既婚かで本人の年金額は変わらない。
年金は独身と既婚で違う?
本人の老齢年金の額は、独身か既婚かでは変わらない。違うのは、世帯の年金だ。既婚者は配偶者の年金と合わせて世帯の収入になり、条件を満たせば加給年金が上乗せされる。独身の男は、自分一人の年金で暮らすことになる。
自分の年金額はどうやって調べる?
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」や、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できる。50歳以上なら、今の加入状況が60歳まで続いた場合の見込み額が載っている。
年金を増やすにはどうすればいい?
厚生年金に長く加入して働く、繰り下げ受給で受け取りを遅らせる、国民年金の加入期間が40年に満たなければ任意加入する、自営業なら付加年金や国民年金基金を使う、iDeCoで私的年金を作る、などがある。
繰り下げ受給は得なのか?
1か月遅らせるごとに0.7%増え、70歳で42%、75歳で84%増える。増えた額は一生続くので、長生きするほど有利になる。一方、受け取りを遅らせる間の生活費が必要で、早く亡くなれば受け取る総額は少なくなる。健康と資産の状況で判断するといい。
出典・参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(平均年金月額。解説記事による)
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」「老齢厚生年金の年金額」「年金の繰下げ受給」「付加保険料の納付」「任意加入制度」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年」
- 国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」「国民年金基金」
- 年収別の年金の目安は、編集部が報酬比例部分の計算式で概算