渋谷から東横線で一駅。改札を出て坂を上ると、低い建物が並ぶ静かな通りに出る。代官山は、男一人で歩くのにちょうどいい大きさの街だ。半日あれば、主な場所を歩いて回れる。
代官山は、おしゃれな若者とカップルの街だと思われている。だが、休日の代官山を歩くと、一人で本を選び、一人でカフェで読書をし、一人で服を眺める大人が多いことに気づく。家族持ちの男は、この街をほとんど知らない。休日の書店で手に取れるのは、子供の絵本と育児書だけだからだ。
この記事では、本と珈琲とセレクトショップをテーマに、代官山の一人散歩のコース、立ち寄るべき場所、一人で過ごすコツ、予算の目安をまとめた。店の営業時間や料金は変わるので、行く前に公式サイトで確認してほしい。
この記事の結論
- 代官山は、半日で歩いて回れる、一人散歩にちょうどいい大きさの街
- 書店で本を選び、カフェで読む。それだけで一日が満たされる
- 大正の邸宅、名建築の集合住宅、高台の公園。無料か格安の見どころが多い
- セレクトショップは、買わずに眺めるだけでもいい
- 帰りは中目黒へ下りて、目黒川沿いを歩くと一日がつながる
代官山が、一人散歩に向いている理由
代官山の魅力は、街の規模が小さいことだ。主な場所は、旧山手通りと駅の周りの数百メートルの範囲に集まっている。新宿や渋谷のように、人の流れに押されて歩く必要がない。
そして、建物が低く、空が広い。高層ビルが少なく、並木と低い建物が続く通りは、歩いているだけで気持ちがいい。古い邸宅や、名建築家が設計した建物も残っていて、散歩しながら建築を見る楽しみもある。
何より、代官山には一人で過ごす時間を前提にした場所が多い。何時間でもいられる書店、一人席の多いカフェ、ゆっくり服を見られる小さな店。誰かと来るより、一人で来た方が、この街の良さはよくわかる。
本を読む男は、少数派になった
総務省の「社会生活基本調査(2021年)」によると、この1年間に趣味として読書(マンガを除く)をした人は31.6%だった。美術鑑賞は11.4%、映画館での映画鑑賞は29.8%にとどまる。
趣味・娯楽の行動者率(2021年)
Fig. 01スマホで動画とゲームに時間が吸い取られる時代に、紙の本を選んで、静かな場所で読む時間は、もはや少数派の贅沢だ。代官山は、その贅沢のためにある街だと言っていい。本を一冊選んで、カフェで読む。それができる男は、スマホを眺めて休日を溶かす男より、ずっと豊かな時間を持っている。
森の中の書店、代官山 蔦屋書店
代官山のソロ活の中心は、代官山 蔦屋書店だ。旧山手通り沿いに、3つの棟が並ぶ書店で、木々に囲まれた建物の中に、本と雑誌と映画と音楽が並んでいる。
- 専門の棚が深い:人文、アート、建築、デザイン、車、旅、料理。ジャンルごとの棚が深く、知らなかった本に出会える
- 雑誌の量が多い:国内外の雑誌が並ぶ棚を、ゆっくり眺められる
- 座って読める場所がある:館内のカフェやラウンジで、本を読みながら過ごせる
- 開店が早く、閉店が遅い:朝から夜まで開いている時間が長い。営業時間は公式サイトで確認
おすすめは、午前中に行くことだ。休日の昼過ぎは人が増えるが、朝は静かで、棚の間をゆっくり歩ける。気になる本を何冊か手に取って、その中から一冊だけ買う。一冊に絞る時間も、書店の楽しみの一つだ。
書店に長くいると、読みたい本が何冊も見つかる。全部買うと、積ん読が増えるだけだ。その日に読む一冊だけを買い、残りは書名をメモしておく。次に来たときの楽しみになる。一冊だけ持ってカフェに行く身軽さも、一人散歩のよさだ。
ヒルサイドテラス:名建築の中を歩く
旧山手通り沿いに続くヒルサイドテラスは、建築家の槇文彦が設計し、1969年から何期にもわたって建てられてきた複合施設だ。住居、店、ギャラリー、カフェが、低い建物と中庭でつながっている。
建物の間の中庭や通路を歩くと、都市の中に作られた小さな村のような空間が続く。ギャラリーで展示を見て、中庭のベンチで一休みする。代官山の街の落ち着いた雰囲気は、この建物がつくってきたと言われる。建築に興味がなくても、歩くだけで気持ちのいい場所だ。
旧朝倉家住宅:100円で大正の邸宅へ
代官山の駅から少し歩いたところに、旧朝倉家住宅がある。大正時代に建てられた木造の邸宅で、国の重要文化財に指定されている。入館料は一般で100円ほどだ(料金は公式で確認)。
畳の座敷に上がり、ガラス戸越しに回遊式の庭園を眺める。都心の真ん中とは思えない静けさだ。縁側の近くに座って、庭の緑をぼんやり眺めていると、時間の流れ方が変わる。観光客は多くなく、一人で静かに過ごせることが多い。100円でこの時間が手に入るのは、代官山で一番のコスパだ。
西郷山公園:高台から夕日を見る
旧山手通りをさらに西へ歩くと、西郷山公園がある。高台の斜面にある公園で、西の方角が開けている。空気の澄んだ晴れた日には、遠くに富士山が見えることもある。
おすすめは、夕方だ。斜面のベンチに座って、街の向こうに沈む夕日を眺める。カフェで買ったコーヒーを持っていき、本の続きを読みながら日が沈むのを待つ。無料で、代官山で一番いい景色が見られる場所だ。
一人で入れるカフェの選び方
代官山には、カフェが多い。どこに入るか迷ったら、次の基準で選べ。
| 見るところ | 理由 |
|---|---|
| カウンター席や窓際の一人席 | 一人客を想定している店。長居しやすい |
| 店の外から見て、一人客がいる | 一人で本を読んでいる人がいれば、安心して入れる |
| テラス席 | 通りの景色を眺めながら過ごせる。天気のいい日に |
| 自家焙煎のコーヒー店 | コーヒーそのものを楽しめる。豆を買って帰るのもいい |
| 混雑の時間を外す | 土日の昼過ぎは混む。午前中か夕方に行く |
カフェで本を読むなら、一杯で1時間が目安だ。それ以上いたいなら、二杯目かケーキを頼めばいい。混んでいる時間は、長居を控えるのが大人の気づかいだ。
セレクトショップは、眺めるだけでいい
代官山には、小さなセレクトショップが多い。店主が選んだ服、靴、雑貨、器が、少しずつ並んでいる。大型の店とは違い、一つ一つの品物をじっくり見られる。
セレクトショップで大事なのは、買わなくてもいいということだ。店に入り、品物を眺め、手に取り、気に入らなければ「また来ます」と出ればいい。店員に話しかけられたら、「見ているだけです」と言えば、たいていはそっとしておいてくれる。
一人で服を見るのは、自分の好みを知る時間だ。誰かと一緒だと、相手の意見に流される。一人なら、自分が本当に好きなものだけを見られる。いい服に出会ったら、その日は買わずに考えて、次に来たときにまだ欲しければ買う。それくらいの余裕でいい。
ログロード代官山:線路跡の遊歩道
代官山駅の北側には、ログロード代官山がある。東横線の線路が地下に移ったあとの跡地に作られた、細長い遊歩道と店の並ぶ場所だ。
木の遊歩道に沿って、緑と店が続く。線路の跡を歩いていると思うと、ただの散歩道も少し面白くなる。ベンチに座って一休みしたり、店でビールを一杯飲んだりできる。代官山の散歩の、始まりか終わりに立ち寄るといい。
中目黒と恵比寿へ、歩いて延ばす
代官山は、中目黒と恵比寿の間にある。歩いて10分ほどで、どちらにも行ける。一人散歩を延ばすなら、どちらかに下りていけばいい。
- 中目黒へ:坂を下りて、目黒川沿いを歩く。川沿いにはカフェや小さな店が並ぶ。春は桜の名所だが、花見の時期は大混雑する
- 恵比寿へ:恵比寿ガーデンプレイスには、東京都写真美術館がある。写真の展示を一人でじっくり見られる
夕方まで代官山で過ごし、日が暮れたら中目黒か恵比寿に下りて、一人で入れる飲み屋で一杯やって帰る。恵比寿には、立ち飲みや、カウンターの小さな店が多い。
代官山の一人散歩、モデルコース
| 時間 | 場所 | やること | 予算の目安 |
|---|---|---|---|
| 10:00 | 代官山 蔦屋書店 | 棚を一周して、今日読む一冊を選ぶ | 1,800円 |
| 11:30 | カフェ | 買った本を読みながら、コーヒー | 700円 |
| 12:30 | 代官山のランチ | カウンターのある店で、一人でランチ | 1,500円 |
| 13:30 | ヒルサイドテラス | 建物と中庭を歩き、ギャラリーをのぞく | 0円 |
| 14:30 | 旧朝倉家住宅 | 座敷から回遊式の庭園を眺める | 100円 |
| 15:30 | セレクトショップ | 服や雑貨を眺める(買うなら別予算) | 0円 |
| 16:30 | 西郷山公園 | 高台のベンチで、本の続きを読みながら夕日を待つ | 0円 |
| 17:30 | 中目黒のカフェ・バー | 目黒川沿いを歩いて、一杯 | 1,400円 |
このコースの予算は、合計で5,500円ほどだ。本を一冊買い、カフェとランチと一杯を入れても、この額で収まる。服を買えばそのぶん上がるが、見るだけでも十分に楽しめるのが代官山だ。
代官山の一人散歩、予算の内訳(目安)
Fig. 02一人で歩くと、頭が整理される
代官山の一人散歩をすすめる理由は、街の魅力だけではない。歩くこと自体に、頭を整理する効果があるからだ。スタンフォード大学のオッペッツォらが2014年に発表した研究では、座っているときより歩いているときの方が、新しい使い道を思いつく課題などの成績が上がり、平均で約6割高くなった。
書店で本を眺め、坂道を歩き、庭を眺め、また歩く。そのあいだに、仕事で行き詰まっていたことの答えが、ふと浮かんでくることがある。誰かと話しながら歩くと、頭は会話に使われる。一人で歩くから、頭の中で考えがまとまっていく。気づいたことは、スマホのメモに一行だけ残しておけ。代官山の散歩は、休日の遊びであり、頭の掃除でもある。
雨の日の代官山
雨の日の代官山も悪くない。書店とカフェだけで、一日が過ごせる街だからだ。雨の日は散歩をする人が減り、書店の中もカフェも、晴れた休日より落ち着いていることがある。
代官山 蔦屋書店は3つの棟が隣り合っていて、雨の日でも棟から棟への移動は短い。昼は近くの店でランチをとり、午後は雨の通りを眺めながらカフェで本を読む。旧朝倉家住宅の庭は、雨に濡れた緑もまた美しい。傘を一本持って、雨の日だけの静かな代官山を歩けばいい。
季節の代官山
- 春:中目黒の目黒川の桜。ただし花見の時期の週末は大混雑する。平日の朝がいい
- 初夏:並木の緑が濃くなり、テラス席が気持ちいい季節
- 夏:暑い昼は書店とカフェで過ごし、夕方から西郷山公園へ
- 秋:旧朝倉家住宅の庭の紅葉。散歩にいちばんいい季節
- 冬:空気が澄んで、西郷山公園から富士山が見えやすい
代官山を一人で楽しむ心得
- 午前中に着く:書店もカフェも、休日の午前中がいちばん静か
- 坂道に備える:代官山は坂が多い。歩きやすい靴で
- 小さなバッグに本を一冊:買った本を入れて歩ける大きさのバッグがあると便利
- 買わなくていい:書店も店も、見るだけでいい。財布の紐は自分で決める
- スマホをしまう:本と景色を楽しむ街で、スマホばかり見ていたらもったいない
一人の代官山と、家族の休日
一人の代官山
- 書店の棚を一周して、今日の一冊を選ぶ
- カフェの窓際で、一時間本を読む
- 大正の邸宅の座敷から、庭を眺める
- 高台の公園で、夕日を見ながら本の続きを
家族の休日
- 書店では、子供の絵本の棚の前で待つ
- カフェでは、子供がこぼした飲み物を拭く
- 古い邸宅は「子供が騒ぐから」と行けない
- 夕日の時間には、夕飯の支度で帰る
もちろん、家族で過ごす休日にも、その人なりの楽しさはあるのだろう。だが、本を一冊選び、静かな場所で好きなだけ読む一日は、一人の男にしか手に入らない。
たいていの答えは「子供が生まれてから読んでない」だ。休日は子供の世話、平日の夜は寝かしつけ、スマホを見る時間すら削られている。俺は休日の午前に書店で一冊選んで、夕方までに読み終える。月に4冊なら年に48冊。10年で480冊の差がつく。
まとめ:本と珈琲で、一日を満たせ
代官山は、半日で歩いて回れる、一人散歩にちょうどいい大きさの街だ。書店で今日の一冊を選び、カフェで読み、ヒルサイドテラスの建築と中庭を歩き、100円で大正の邸宅の庭を眺め、高台の公園で夕日を見る。セレクトショップは、眺めるだけでもいい。
趣味として読書をする人は31.6%まで減った。本と珈琲で一日を過ごせる男は、少数派の贅沢を持っている。予算は5,500円ほど。帰りは中目黒か恵比寿に下りて、一杯やって帰れ。営業時間や料金は変わるので、行く前に公式サイトで確認してほしい。
本を一冊持って、坂の多い静かな街を、一人で歩け。末代で何が悪い。
よくある質問
代官山は男一人で行っても浮かない?
浮かない。代官山には、書店で本を選ぶ人、カフェで一人で読書をする人、服を見て回る人など、一人で歩く大人が多い。おしゃれな街という印象があるが、清潔な服装で行けば気後れすることはない。
代官山の一人散歩はどこから回ればいい?
東横線の代官山駅から歩き始めて、旧山手通り沿いのヒルサイドテラス、代官山 蔦屋書店、旧朝倉家住宅、西郷山公園と回るのがいい。帰りは中目黒まで坂を下りて、目黒川沿いを歩くこともできる。
代官山で無料で楽しめる場所は?
代官山 蔦屋書店で本を眺めること、ヒルサイドテラスの建築と中庭を歩くこと、西郷山公園から景色を眺めること、ログロード代官山の遊歩道を歩くことは無料だ。旧朝倉家住宅は入館料が必要だが、一般で100円ほどと安い。料金は公式サイトで確認してほしい。
代官山のカフェで一人で長居してもいい?
混雑していなければ、本を読みながら1時間ほど過ごす客は多い。ただし、土日の昼過ぎは混むので、混んでいるときは長居を控え、午前中や夕方に行くといい。注文を一品追加するのも気づかいだ。
代官山のソロ活の予算はどのくらい?
本を1冊、カフェで2回、ランチ、旧朝倉家住宅の入館料で、5,000円前後だ。服を買えば、そのぶん上がる。見るだけで楽しめる場所が多いので、予算は自分で決められる。
出典・参考資料
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活行動に関する結果」
- 渋谷区「旧朝倉家住宅」
- 代官山 蔦屋書店、ヒルサイドテラス、ログロード代官山の公式サイト
- 各店舗・施設の公式サイト(営業時間・料金は変更されることがあるため、来訪前に確認のこと)