土曜日の午後2時、上野のアメ横の路地。高架下の立ち飲みの台に、千円札を一枚置く。ホッピーとモツ煮込みが出てくる。隣に立つのも、一人で来た男だ。上野は、東京でいちばん昼から一人で飲みやすい街だ。
昼から酒を飲むのは、どこか後ろめたい。だが、上野ではそんな気持ちはすぐに消える。周りを見れば、昼から一人で飲んでいる大人がいくらでもいるからだ。一方、家族持ちの男には、昼飲みはほぼ不可能だ。土曜の昼は子供の習い事の送迎で、運転するから一滴も飲めない。夜の一杯も、家で妻の顔色をうかがいながらの発泡酒一缶だ。
この記事では、上野と御徒町で一人で昼から飲むための、角打ちと立ち飲みの選び方、作法、予算、そして飲みすぎない量の目安をまとめた。店の営業時間は変わるので、行く前に確認してほしい。
この記事の結論
- 上野・御徒町は、昼から一人で飲める立ち飲みと大衆酒場が集まる街
- 角打ちは酒屋で飲む文化。安く、短く、一人で飲む客が多い
- 立ち飲みは千円札一枚から。作法は「詰める、長居しない、騒がない」
- はしごは2〜3軒まで。昼に始めて、夕方には切り上げろ
- 男性の1日の純アルコールは40gまでが目安。水を一緒に飲め
上野が、昼飲みの聖地である理由
上野が一人の昼飲みに向いている理由は、昼から開いている店が多いことだ。アメ横の周りや、上野から御徒町にかけての高架下には、昼から、店によっては朝から酒を出す店がある。
そして上野は、一人客が当たり前の街だ。もともと商人と職人の街で、仕事の合間や仕事終わりに、一人でさっと一杯やる文化がある。今でも、昼の立ち飲みの台に並んでいるのは、一人で来た男たちが多い。
さらに、上野には昼に飲む口実がいくらでもある。博物館や美術館を回ったあと、公園を歩いたあと、アメ横で買い物をしたあと。昼の観光の締めに一杯やるのに、これ以上ちょうどいい街はない。
角打ちとは何か
角打ち(かくうち)とは、酒屋の店内の一角で、店で売っている酒をその場で飲むことだ。もともとは、酒屋で量り売りの酒を買った客が、その場で枡の角に口をつけて飲んだことが語源の一つとされる。
- 安い:酒屋の値段に近い価格で飲める。居酒屋より安いことが多い
- 短い:一杯か二杯だけ飲んで帰る客が多い。長居する場所ではない
- 一人客が多い:仕事帰りや買い物のついでに、一人で寄る客が中心
- つまみは簡単:缶詰、乾き物、駄菓子、店によっては簡単な料理
角打ちの魅力は、酒屋の棚に並ぶ酒から、その日の一本を選べることだ。冷蔵庫から好きな缶ビールを取り、棚から缶詰を一つ選び、レジで払って、店の奥の台で飲む。酒屋が、そのまま自分だけの小さな酒場になる。
上野の昼飲みの店、4つの種類
| 種類 | 特徴 | 予算の目安 | 一人の入りやすさ |
|---|---|---|---|
| 角打ち(酒屋) | 酒屋の一角で、売っている酒と缶詰で飲む | 500〜1,500円 | 入りやすい。ただし店のルールに従う |
| 立ち飲み居酒屋 | カウンターや台で立って飲む。料理の品数も多い | 1,000〜2,500円 | とても入りやすい |
| 大衆酒場(座れる) | 昼から開いている昔ながらの酒場。座って飲める | 2,000〜3,500円 | 入りやすい。カウンター席を選ぶ |
| アメ横の屋台風の店 | 路地に面した店で、通りを眺めながら飲む | 1,500〜3,000円 | 入りやすいが、土日は混む |
最初の一軒は、立ち飲み居酒屋がいい。一人客がいちばん多く、料理の品数も多いので、昼飯を兼ねて飲める。慣れたら、酒屋の角打ちに挑戦しろ。座ってゆっくり飲みたい日は、昔ながらの大衆酒場のカウンターに座ればいい。
立ち飲みの作法
立ち飲みには、いくつかの暗黙の作法がある。最初に覚えておけば、どの店でも困らない。
- 払い方を確認する注文のたびに現金で払う「キャッシュオン」、台の上に置いた小銭から店員が取っていく方式、最後にまとめて払う方式がある。店に入ったら、周りの客の払い方を見ればわかる。
- 小銭と千円札を用意するキャッシュオンの店では、細かいお金があると楽だ。現金のみの店も多い。
- 混んできたら詰める台の前は、客同士で場所を分け合う。後から人が来たら、少し横に詰めて場所を空ける。
- 長居しない立ち飲みは、さっと飲んでさっと帰る場所だ。一軒30分から1時間を目安にする。
- 騒がない、絡まない一人で静かに飲んでいる客が多い。話しかけられたら応じればいいが、自分から無理に絡まない。
角打ちの場合は、さらに店のルールがある。「冷蔵庫の酒はレジで払ってから飲む」「つまみの持ち込みは禁止」「飲めるのは何時まで」など、店によって違う。壁の貼り紙を読み、わからなければ店の人に「ここで飲めますか」と聞けばいい。
店に入って、どこに立てばいいかわからなければ、店員に「一人です」と言えばいい。空いている場所に案内してくれる。立ち飲みの店員は、一人客の扱いに誰よりも慣れている。
何を頼むか:最初の一杯とつまみ
| 種類 | 定番 | ひとこと |
|---|---|---|
| 最初の一杯 | 生ビール、ホッピー、レモンサワー、ハイボール | ホッピーは「セット」で頼み、中(焼酎)をおかわりする |
| 二杯目 | 日本酒、焼酎のお湯割り、ハイボール | 日本酒は一合ずつ。冷やか燗かを選ぶ |
| すぐ出るつまみ | 煮込み、ポテトサラダ、冷奴、枝豆、お新香 | 注文してすぐ出てくる。一品目はこれ |
| 焼き物 | 焼き鳥、もつ焼き、焼き魚 | 2〜3本ずつ頼める店が多い |
| 揚げ物 | ハムカツ、串カツ、アジフライ | 立ち飲みの名物にしている店も |
| 角打ちのつまみ | 缶詰(さば、焼き鳥)、乾き物、チーズ | 缶詰は温めてくれる店もある |
一人の立ち飲みでは、つまみは一度に一品ずつ頼め。二人なら何品も並べて分け合えるが、一人で何品も頼むと食べきれない。一品食べ終わったら、次の一品と次の一杯を頼む。一品一杯ずつのリズムが、一人の立ち飲みの基本だ。
アメ横の昼飲み
上野の昼飲みの中心は、アメ横だ。上野駅から御徒町駅にかけて、JRの高架沿いに店が並ぶ商店街で、乾物、魚、菓子、衣料の店の合間に、立ち飲みや屋台風の酒場がある。
アメ横の昼飲みのよさは、通りの賑わいを眺めながら飲めることだ。路地に面したカウンターで、行き交う買い物客や観光客を眺めながら、ビールを飲む。店の呼び込みの声、魚屋の掛け声、電車の通る音。雑踏が、最高のつまみになる。
ただし、土日の昼過ぎのアメ横は、観光客で大混雑する。平日の昼か、土日の午前中がいい。年末の買い出しの時期は、通りがまともに歩けないほど混むので避けろ。
御徒町の高架下で、静かに飲む
アメ横の喧騒から少し離れたいなら、御徒町の方へ歩け。高架下や周りの路地には、地元の常連が通う大衆酒場や立ち飲みがある。観光客は少なく、一人で静かに飲める。
高架下の店は、頭の上を電車が通るたびに、店が少し揺れる。その音を聞きながら、一人でもつ焼きをかじる。東京の下町らしい、昼飲みの風景だ。上野で博物館を回り、アメ横を歩いて、御徒町の高架下で締める。この流れが、上野の昼飲みの王道だ。
はしごは、2〜3軒まで
立ち飲みの楽しみの一つは、はしご酒だ。一軒で一杯とつまみ一品、次の店で一杯とつまみ一品。店ごとに名物が違うので、少しずつ食べ歩ける。
- 1軒目:立ち飲みで、ビールと煮込み喉を潤して、腹を落ち着ける。30分ほど。
- 2軒目:角打ちで、日本酒と缶詰酒屋の棚から、その日の一本を選ぶ。30分ほど。
- 3軒目:高架下の大衆酒場で、焼き鳥と焼酎座って、少しゆっくり。1時間ほどで切り上げる。
はしごは3軒までにしろ。それ以上は、量も金も増える。昼の2時に始めたら、夕方の5時ごろに切り上げる。明るいうちに帰れるのが、昼飲みのいちばんのよさだ。夜は家で水を飲んで早く寝れば、翌日に響かない。
昼飲みの予算
| 時間 | 店 | 頼むもの | 予算の目安 |
|---|---|---|---|
| 14:00 | 立ち飲み居酒屋 | 生ビール、煮込み | 1,000円 |
| 14:40 | 酒屋の角打ち | 日本酒一合、さばの缶詰 | 800円 |
| 15:30 | 高架下の大衆酒場 | 焼酎のお湯割り2杯、焼き鳥3本、お新香 | 2,000円 |
3軒のはしごで、合計3,800円ほどだ。居酒屋で一人で飲めば、一軒でこの値段を超えることもある。立ち飲みと角打ちは、東京でいちばん安く、いちばん気楽に飲める場所だ。
日本人は、酒を飲まなくなった
国税庁の「酒のしおり」によると、酒類の販売(消費)数量は、平成8年度の965.7万kLから、令和5年度には782.2万kLまで約19%減った。中でも清酒(日本酒)は、昭和50年度の167.5万kLから、令和5年度には39.1万kLと、4分の1以下になった。
酒類の販売(消費)数量の推移
Fig. 01酒を飲まない人が増え、会社の飲み会も減った。だが、一人で静かに飲む男の居場所は、上野の立ち飲みと角打ちに今も残っている。大人数の飲み会で上司の話を聞く酒ではなく、自分のペースで、自分の好きな一杯を味わう酒。酒の量が減った時代だからこそ、一人で飲む一杯の質にこだわれる。
飲みすぎない量の目安
昼から一人で飲むと、止める人がいない。だからこそ、自分で量を決めておけ。厚生労働省は、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、1日の純アルコール量で男性40g以上としている。
よく飲む酒の純アルコール量(目安)
Fig. 02ビールの中瓶なら2本、日本酒なら2合弱で40gになる。3軒のはしごで、ビール1杯、日本酒1合、焼酎のお湯割り2杯なら、合計で約65g。はしごをすると、簡単に40gを超えることがわかる。毎日これでは体を壊す。昼飲みは、週末のたまの楽しみにしておけ。
- 水を一緒に飲む:酒一杯ごとに、水を一杯。店で「お水ください」と頼めばいい
- 空腹で飲まない:最初に煮込みや冷奴など、腹にたまるつまみを頼む
- 休肝日を作る:週に2日は飲まない日を作る
- 飲んだら風呂は控える:昼飲みのあとに銭湯に行くなら、酔いがさめてから
一人の男は、自分の体を自分で守るしかない。飲みすぎて体を壊しても、介抱してくれる人はいない。だから、量を決めて飲む。それが、一人で長く酒を楽しむ男の条件だ。
昼飲みと組み合わせる上野のソロ活
- 博物館・美術館のあとに:東京国立博物館や国立西洋美術館を回ったあと、公園を抜けてアメ横へ
- 上野公園の散歩のあとに:不忍池のほとりを歩いてから、一杯
- アメ横の買い物のついでに:乾物や魚を買ったあとに、一杯やって帰る
- 寄席のあとに:上野には寄席もある。落語で笑ったあとの一杯は格別だ
上野の昼飲みは、何かのついでにやるのがいい。博物館で目を使い、公園で足を使ったあとの一杯は、何もしないで飲む一杯よりずっとうまい。
昼飲みの後ろめたさを、捨てろ
昼から酒を飲むことに、後ろめたさを感じる男は多い。「昼間から飲んでいる」と思われるのが嫌なのだ。だが、休日に誰にも迷惑をかけずに、自分の金で、適量の酒を飲む。それを責められる理由は何もない。
昼に飲めば、夕方には帰れる。夜の飲み会のように、終電を気にして飲み続けることも、二次会に付き合わされることもない。明るいうちに帰って、夜は家でゆっくり水を飲んで早く寝る。翌日に響かない。昼飲みは、むしろ健全な飲み方だとすら言える。
お前は毎晩、家で発泡酒を2本空けて、ソファで寝落ちしているだろう。俺は週末の昼に、立ち飲みで一杯ずつ味わって、夕方には帰る。量も金も時間も、自分で決めている。だらしないのは、飲む時間ではなく、飲み方だ。
一人の昼飲みと、家族の週末
一人の昼飲み
- 博物館を回ったあと、アメ横で一杯
- 酒屋の棚から、その日の一本を選ぶ
- 高架下で、電車の音を聞きながら焼き鳥
- 夕方に帰って、夜は早く寝る
家族の週末
- 習い事の送迎で車を運転するから飲めない
- 外食はファミレスで、酒は頼みにくい
- 夜に家で発泡酒一缶、妻の視線つき
- 飲み屋に行けるのは、年に数回の飲み会だけ
もちろん、家族と過ごす週末にも、その人なりの幸せはあるのだろう。だが、土曜の昼に、自分の好きな一杯を、自分のペースで味わう自由は、一人の男にしか手に入らない。
まとめ:上野で、昼から一人で一杯やれ
上野と御徒町は、昼から一人で飲める立ち飲みと角打ちと大衆酒場が集まる、東京でいちばん昼飲みに向いた街だ。千円札一枚から始められ、一人客が当たり前。作法は「払い方を確認する、詰める、長居しない、騒がない」。はしごは3軒まで、明るいうちに帰れ。
ただし、昼から一人で飲むと止める人がいない。男性の1日の純アルコール量は40gまでが目安で、はしごをすると簡単に超える。水を一緒に飲み、空腹で飲まず、週に2日は休肝日を作れ。店の営業時間は変わるので、行く前に確認してほしい。
博物館を回ったあと、アメ横の立ち飲みで、自分のための一杯をやれ。末代で何が悪い。
よくある質問
角打ちとは何ですか?
酒屋の店内の一角で、店で売っている酒をその場で飲むことだ。缶詰や乾き物などのつまみを買って、立ったまま飲むのが一般的だ。居酒屋より安く、一人で短い時間だけ飲む客が多い。店によって飲み方のルールが違うので、最初は周りの客や店の掲示に従えばいい。
上野で昼から一人で飲める店はありますか?
ある。アメ横の周りや御徒町の高架下には、昼から、店によっては朝から開いている立ち飲みや大衆酒場がある。一人客が多く、カウンターや立ち飲みの台で気軽に飲める。営業時間は店によって違うので、行く前に確認してほしい。
立ち飲みの作法は?
多くの店は、注文のたびに現金で払うキャッシュオンか、台に置いた小銭から店員が取っていく方式だ。混んできたら横に詰めて場所を空ける、長居しすぎない、大声で騒がない、他の客に絡まないのが基本だ。
立ち飲みの予算はどのくらい?
一杯とつまみ一品なら1,000円前後、二、三杯とつまみ数品で2,000〜3,000円ほどだ。角打ちは酒屋の値段に近いので、さらに安く済むことが多い。
一人で昼から飲むのは体に悪くないですか?
量次第だ。厚生労働省は、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、男性で1日の純アルコール量40g以上としている。ビールなら中瓶2本、日本酒なら2合ほどだ。昼から飲むなら、量を決めて、水を一緒に飲み、早めに切り上げるといい。
出典・参考資料
- 国税庁「酒のしおり(令和7年版)」酒類販売(消費)数量の推移
- 厚生労働省「健康日本21(第三次)」
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」
- 各店舗の公式サイト(営業時間・料金は変更されることがあるため、来訪前に確認のこと)