熱い鉄板の上で、キャベツと具材がじゅうじゅうと音を立てる。刻んで土手を作り、真ん中に汁を流し込む。ぐつぐつと煮立ったら全体を混ぜ、薄く広げる。小さなヘラで鉄板に押しつけ、焦げたところをはがして口に運ぶ。もんじゃ焼きは、一人の方が没頭できる料理だ。
もんじゃは、大勢でわいわい鉄板を囲む料理だと思われている。会社の打ち上げ、友達との飲み会、家族の外食。だが、大勢で囲むもんじゃは、焼く係と食べる係に分かれる。家族で行けば、父親はひたすら焼く係で、焼けたそばから子供に食べられ、自分はろくに食べられない。
一人のもんじゃは違う。焼くのも、食べるのも、全部自分だ。この記事では、月島のもんじゃストリートで一人で入れる店の選び方、一人前の頼み方、失敗しない焼き方、そしてもんじゃのあとに歩きたい佃島まで、男一人の目線でまとめた。
この記事の結論
- もんじゃは一人の方が没頭できる。焼くのも食べるのも全部自分
- 一人ならもんじゃ一枚が基本。足りなければ一品追加する
- 焼き方は6工程。わからなければ店の人に頼めばいい
- 土日の夜は混む。平日の昼か、土日の開店直後を狙え
- 食べ終わったら、隣の佃島で江戸の路地を歩け
もんじゃは、一人で食べるのがいちばんいい
もんじゃを一人で食べるのをすすめる理由は三つある。一つ目は、焼く作業に没頭できることだ。具を炒め、刻み、土手を作り、汁を流す。手を動かしているあいだ、頭は空っぽになる。誰かと話しながらでは、この没頭は味わえない。
二つ目は、自分の好きな焼き加減で食べられることだ。もんじゃは、焦がし具合で味が変わる。とろとろのまま食べたい人もいれば、ぱりぱりに焦がしたい人もいる。大勢で囲むと、誰かの好みに合わせることになる。一人なら、全部を自分の好みの焦がし具合で食べられる。
三つ目は、ペースを誰にも乱されないことだ。もんじゃは、小さなヘラで一口ずつ食べる料理だ。一口食べてビールを飲み、また一口。この遅いペースこそが、もんじゃの楽しみだ。大勢だと、のんびり食べている間に、鉄板の上はなくなっている。
月島と、もんじゃストリート
月島は、隅田川の河口に明治時代に造られた埋め立て地だ。もとは工場と職人の街で、路地には長屋が並んでいた。もんじゃ焼きは、駄菓子屋で子供が食べた「文字焼き」が始まりとされ、下町の子供のおやつだった。
今の月島の中心は、西仲通り商店街だ。「もんじゃストリート」と呼ばれ、通りの両側と周りの路地に、数十軒のもんじゃの店が並ぶ。地下鉄の月島駅を出れば、すぐにもんじゃの店の看板が目に入る。
一方で、月島の周りには高層マンションが建ち並ぶ。昭和の路地と、令和のタワーマンションが隣り合う不思議な街だ。もんじゃを食べたあとに、路地を歩きながらこの景色を眺めるのも、月島のソロ活の楽しみだ。
一人で入れる店の選び方
月島のもんじゃの店は、たいていテーブルに鉄板がある店だ。一人で入れるかは、店によって違う。次のポイントで選べ。
| 見るところ | 理由 |
|---|---|
| 窓から中をのぞいて、一人客がいるか | 一人客がいれば、一人で入りやすい店だ |
| 小さめのテーブルやカウンターがあるか | 二人用や一人用の小さな鉄板がある店は、一人を受け入れやすい |
| 店の前のメニューに値段が出ているか | 一枚の値段がわかれば、予算を立てやすい |
| 「焼きます」の案内があるか | 店の人が焼いてくれる店なら、初めてでも安心 |
| 大通りから一本入った店 | 大通りの店より落ち着いていることが多い |
入るときは、「一人です、いいですか」と聞けばいい。混んでいる時間に断られることはあるが、それは一人だからではなく、満席だからだ。断られたら、次の店に行けばいい。月島には、もんじゃの店がいくらでもある。予約サイトで「1名」と入れて探すのも確実だ。
月島のもんじゃの店は、土日の夜にいちばん混む。家族連れやグループで、どの店も満席になる。一人で落ち着いて食べるなら、平日の昼か、土日の開店直後に行け。空いている店なら、四人用のテーブルに一人で通されることもある。広い鉄板を一人で使えるのは、空いている時間だけの贅沢だ。
一人前の頼み方
一人で行くなら、もんじゃ一枚が基本だ。もんじゃは汁が多く見た目は軽そうだが、食べ終わる頃には意外なほど腹にたまる。
一人もんじゃの注文と予算の目安
Fig. 01予算は、もんじゃ一枚とビール2杯で3,000円前後を見ておけばいい。具材の多い豪華なもんじゃや、追加の一品を頼めば、もう少し上がる。
- 最初の一枚:明太子もちチーズ、ベビースター入り、海鮮ミックスなど、店の定番から選ぶ
- 腹が減っていたら:もんじゃ一枚のあとに、お好み焼きか、鉄板焼き(ホルモン、イカ、野菜など)を一品
- 締め:あんこ巻きや、甘いもんじゃを出す店もある。鉄板で焼く甘味で締める
失敗しないもんじゃの焼き方
もんじゃの焼き方は、慣れれば簡単だ。6つの工程を覚えておけ。わからなければ、店の人に「焼き方を教えてください」と頼めばいい。最初の一回は焼いてもらって、見て覚えるのも手だ。
- 鉄板に油をひく鉄板が十分に熱くなってから、油を全体に薄くひく。
- 具だけを炒める器の汁を残して、キャベツと具だけを鉄板に出す。汁は器に残しておくのがコツだ。
- 刻みながら炒める大きいヘラ2本で、具を細かく刻みながら炒める。キャベツがしんなりするまで。
- 土手を作る炒めた具をドーナツ状に広げて、真ん中に穴をあける。これが「土手」だ。
- 汁を流し込む器に残った汁を、土手の真ん中に流し込む。一度に全部入れず、少しずつ。ぐつぐつと煮立って、とろみがつくまで待つ。
- 混ぜて薄く広げるとろみがついたら、土手を崩して全体を混ぜ、鉄板に薄く広げる。チーズや明太子はこのタイミングで。
いちばん多い失敗は、土手が崩れて汁が流れ出すことだ。土手は高めに、しっかり作る。汁は一度に入れず、少しずつ入れる。流れ出しても、ヘラで寄せればいい。一人なら、失敗しても誰にも笑われない。何回か通えば、すぐにうまくなる。
もんじゃを焼く時間の目安(工程別)
Fig. 02焼くのにかかる時間は、10分ほどだ。そして、食べる時間は20分以上。もんじゃは、焼いてからが長い料理だ。一人なら、この長い時間を、ビールを片手に好きなだけ楽しめる。
もんじゃの食べ方:小さなヘラで焦がしながら
もんじゃは、「はがし」と呼ばれる小さなヘラで食べる。皿に取り分けず、鉄板から直接食べるのが月島流だ。
- はがしを鉄板に押しつける:薄く広げたもんじゃの端に、はがしを押し当てて数秒待つ
- 焦げたところをはがす:鉄板に押しつけたところが焼けて、はがしにくっつく。それを口に運ぶ
- 端から少しずつ:真ん中はとろとろ、端はぱりぱり。場所によって食感が違う
- 火を調整する:焦げすぎるなら火を弱め、ぱりぱりにしたいなら少し強める
一口ずつ、はがしで焦がしては食べる。この地味な作業が、なぜか止まらない。とろとろのもんじゃと、ぱりぱりのおこげ。そしてビール。一人で黙々と食べていると、時間を忘れる。
もんじゃに合う酒
もんじゃには、ビールがいちばん合う。熱い鉄板と、ソースの香りと、冷えたビール。一杯目は迷わずビールだ。
二杯目は、レモンサワーかハイボールがいい。ソースの濃い味を、さっぱりと流してくれる。日本酒より、炭酸のある酒の方がもんじゃには合う。もんじゃは汁を飲み込むように食べる料理なので、酒が進みすぎないように注意しろ。水も一緒に頼んでおけ。
一人もんじゃの心得
- 汚れてもいい服で:もんじゃは油とソースが跳ねる。白いシャツはやめておけ
- 混んでいたら長居しない:外に行列ができていたら、食べ終わったら早めに席を立つ
- 火傷に注意:鉄板は熱い。腕や袖が鉄板に触れないように
- 写真は最初だけ:焼いている途中で写真に夢中になると、焦がしすぎる
- はがしで直接食べる:熱いので、一口ずつ冷ましてから口に入れる
もんじゃのあとは、佃島を歩け
月島の北隣には、佃島(つくだじま)がある。江戸時代に、摂津国の佃村から来た漁師たちが住み着いた島で、佃煮の発祥の地とされる。
佃島の路地には、今も江戸の漁師町の面影が残っている。古い木造の家、路地の奥の井戸、佃煮の老舗。そのすぐ後ろには、高層マンションがそびえている。赤い佃小橋の上から、古い船だまりと高層ビルを一緒に眺める景色は、ここでしか見られない。
- 佃煮の老舗:江戸から続く佃煮の店で、少量を買って帰る。家飯の最高のおかずになる
- 住吉神社:佃島の漁師の守り神。小さいが、落ち着いた境内
- 佃小橋:赤い小さな橋。船だまりと高層ビルの対比が見どころ
- 隅田川テラス:川沿いの遊歩道。もんじゃで火照った体に、川風が気持ちいい
もんじゃを食べたあとに、佃島をぐるりと30分ほど歩く。それだけで、腹ごなしと、江戸と令和の東京を一度に味わう散歩になる。佃煮を少し買って帰れば、翌日の朝飯も決まる。
月島・佃島の一人のモデルプラン
- 11:30 もんじゃストリートを歩く開店直後の店を何軒かのぞいて、一人客がいる店を選ぶ。
- 12:00 一人もんじゃもんじゃ一枚とビール。焼き方を思い出しながら、自分で焼く。
- 13:00 追加の一品か、甘味で締める腹に余裕があれば、鉄板焼きかあんこ巻き。
- 13:30 佃島を歩く佃小橋、住吉神社、路地を歩き、佃煮の老舗で少し買う。
- 14:30 隅田川テラス川沿いのベンチで、川風に当たりながら一休み。
このプランの予算は、もんじゃとビールで3,000円前後、佃煮を少し買って4,000円ほどだ。昼に始めれば、夕方の混雑が始まる前に月島を離れられる。
一人で試したい、もんじゃの種類
| 種類 | 特徴 | こんな人に |
|---|---|---|
| 明太子もちチーズ | 月島の定番。明太子の塩気とチーズのコク、もちの食感 | 最初の一枚に迷ったら |
| ベビースター入り | 駄菓子のスナックを入れた、昔ながらの味 | 懐かしい味が好きな人 |
| 海鮮ミックス | イカ、エビ、ホタテなどの魚介 | ビールに合わせたい人 |
| カレー味 | カレー粉を入れた、ソースとは違う味 | 2回目以降の変化球に |
| 素もんじゃ | キャベツと小麦粉の汁だけの、いちばんシンプルな味 | もんじゃの原点を知りたい人 |
月島に通うなら、毎回違う種類を一枚ずつ試していけ。一人なら、毎回自分の好きな一枚を選べる。大勢で行くと、多数決で無難な一枚に決まりがちだ。
家で、一人もんじゃを再現する
月島で焼き方を覚えたら、家で一人もんじゃもできる。必要なのは、ホットプレートか大きめのフライパンと、小さなヘラだけだ。もんじゃの粉はスーパーでも売っていて、水で溶いて、ウスターソースで味をつければ汁ができる。
具は、キャベツを細かく刻んだものと、好きな具材でいい。切りいか、桜えび、天かす、ベビースター、明太子、チーズ、もち。冷蔵庫の余りものでも作れる。一人分なら、キャベツ4分の1玉に、汁がお椀一杯ほどが目安だ。焼き方は店と同じ6工程。鉄板ほど火力がないので、少し時間をかけて焦がせばいい。
家なら、服にソースが跳ねても気にならず、酒も安く飲める。月島で一枚食べ、佃煮と一緒にもんじゃの粉を買って帰り、次の週末に家で焼く。それも、一人の男の立派な週末の遊び方だ。
一人のもんじゃと、家族のもんじゃ
一人のもんじゃ
- 焼くのも食べるのも、全部自分
- 好きな焦がし具合で、一口ずつ
- ビール片手に、30分かけてのんびり
- 食後は佃島の路地を散歩
家族のもんじゃ
- 父親はひたすら焼く係
- 焼けたそばから子供に食べられる
- 子供が鉄板に触らないか見張る
- 服にソースが飛んで、妻に怒られる
もちろん、家族で鉄板を囲む時間にも、その人なりの楽しさはあるのだろう。だが、自分で焼いて、自分の好きな焦がし具合で、自分のペースで食べる一枚は、一人の男にしか味わえない。
大勢で囲んだもんじゃで、お前は何口食べた。焼く係を押しつけられ、土手が崩れれば笑われ、焼けた端から他人のヘラが伸びてくる。俺は一人で一枚を焼いて、端のおこげまで全部食べる。もんじゃは、大勢の料理ではなく、一人で没頭する料理だ。
まとめ:もんじゃは、一人で焼いて一人で食え
もんじゃ焼きは、一人の方が没頭できる料理だ。焼くのも食べるのも全部自分で、好きな焦がし具合で、自分のペースで食べられる。一人ならもんじゃ一枚が基本で、予算はビール2杯と合わせて3,000円前後。焼き方は6工程で、わからなければ店の人に頼めばいい。
土日の夜は混むので、平日の昼か土日の開店直後を狙え。食べ終わったら、隣の佃島で江戸の路地と佃煮の老舗を歩き、隅田川の川風に当たって帰る。店の営業時間や料金は変わるので、行く前に確認してほしい。
熱い鉄板の前で、一人で黙々と焦がして食え。末代で何が悪い。
よくある質問
もんじゃ焼きを一人で食べに行ってもいい?
いい。月島のもんじゃの店には、一人客を受け入れる店も多い。もんじゃは一枚が一人で食べきれる量のことが多く、ビールを飲みながら自分のペースで焼いて食べられる。混雑する土日の夜を避ければ、一人でも入りやすい。
一人だとどのくらい頼めばいい?
もんじゃ一枚が基本だ。腹が減っているなら、もんじゃ一枚に、お好み焼きか鉄板焼きを一品足すといい。もんじゃは見た目より腹にたまるので、最初は一枚にして、足りなければ追加すればいい。
もんじゃの焼き方がわからない。どうすればいい?
店の人に焼いてもらうか、焼き方を教えてもらえばいい。多くの店で頼めば焼いてくれる。自分で焼くなら、具を炒めて刻み、土手を作り、汁を流し込み、全体を混ぜて薄く広げる。あとは、小さなヘラで鉄板に押しつけて焦がしながら食べる。
月島のもんじゃの店選びのコツは?
店の前のメニューで値段と一人で入れるかを確認し、窓から中をのぞいて一人客やカウンター席があるかを見るといい。もんじゃストリートの通りから一本入った店や、平日の昼から開いている店は、落ち着いて食べられることが多い。
もんじゃのあとに月島で何をすればいい?
隣の佃島を歩くのがいい。古い路地、佃煮の老舗、住吉神社、佃小橋があり、高層マンションの足元に江戸の漁師町の面影が残っている。隅田川沿いのテラスを歩いて、川風に当たるのもいい。
出典・参考資料
- 中央区観光協会「月島」「佃島」
- 月島もんじゃ振興会協同組合
- 各店舗の公式サイト(営業時間・料金は変更されることがあるため、来訪前に確認のこと)