土曜の朝7時。目覚ましより先に子供が布団に飛び乗ってくる。朝飯を作り、着替えさせ、9時からは長男のサッカー、11時からは長女のスイミング。昼は家族でファミレス、午後は公園、夕方は妻の実家。夜、子供を風呂に入れて寝かしつけ、気づけば22時。今日、自分のために使った時間はゼロだ。
独身の男の土曜はどうか。好きな時間に起き、サウナに行き、昼から一人焼肉、午後は趣味に没頭し、夜は行きつけのバー。24時間すべてが自分のものだ。それを「寂しい」と言う子持ちの先輩は、日曜の夜、月曜の朝よりも疲れた顔をしている。「子供の寝顔を見れば疲れも吹き飛ぶ」と言う奴の目の下のクマは、まったく吹き飛んでいない。
この記事では、統計で子育て中の男の時間がどう使われているかを確認し、共働き・子2人の父親と独身男性の1日のタイムスケジュールを並べる。年間で失う自由時間も試算した。時間は、金と違って取り戻せない。
この記事の結論
- 6歳未満の子を持つ夫の家事関連時間は1日114分。15年で約2倍に増えた
- 男性の育休取得率は40.5%。父親が育児を担うのは当たり前になった
- 子育て中の父親の自由時間は、平日で独身の約5分の1、休日はほぼゼロ
- モデルでは、独身と比べて年間約1,500時間の自由時間を失う
- 自由が戻るのは50代。そのころには体力も気力も落ちている
統計で見る、子育て中の父親の時間
総務省の「社会生活基本調査」は、5年ごとに国民の1日の時間の使い方を調べている。2021年の調査では、6歳未満の子供を持つ夫の家事関連時間は1日1時間54分だった。そのうち育児が1時間5分を占める。
1日1時間54分は、週に約13時間。年間で約690時間だ。しかもこれは、平日と休日をならした平均であり、仕事が休みの日は、家事と育児の時間がはるかに長くなる。
しかも、この数字に含まれない時間もある。子供の学校行事、PTA、習い事の発表会、保護者会、病院への付き添い。こうした予定は平日の昼間に入ることも多く、有給休暇は自分の休養ではなく、子供の用事のために消えていく。統計に表れる114分は、子育てに取られる時間の一部にすぎない。
父親の家事・育児は、15年で倍増した
父親に求められる家事と育児の量は、年々増えている。
6歳未満の子を持つ夫の家事関連時間(1日平均)
Fig. 012006年に1日約1時間だった夫の家事関連時間は、2021年には1時間54分。特に2016年から2021年の5年間で31分も増えた。共働きが当たり前になり、在宅勤務が広がり、「家事も育児も夫婦で分担するもの」という考え方が定着したからだ。
そして、この流れは止まらない。厚生労働省の雇用均等基本調査によると、男性の育児休業の取得率は2024年度に40.5%となり、初めて4割を超えた。国は男性の育休取得率の目標を引き上げ続けている。これから父親になる男は、上の世代より確実に多くの時間を子育てに差し出すことになる。
平日のタイムスケジュール:父親と独身
では、子育て中の父親の1日は、実際にどうなっているのか。都内で働く共働き・子2人(3歳と7歳)の会社員男性と、同じ会社で働く独身男性の平日を並べてみる。
| 時刻 | 子育て中の父親(共働き・子2人) | 独身男性 |
|---|---|---|
| 6:00 | 起床。朝食の準備、子供を起こす | — |
| 7:00 | 着替えと朝食を手伝う。下の子を保育園へ送る | 起床。コーヒーを淹れてニュースを読む |
| 8:00 | 通勤(保育園経由で遠回り) | ジムで30分の筋トレ、シャワー |
| 9:00〜18:00 | 仕事。お迎えに間に合うよう残業はできない | 仕事。必要なら残業して成果を出す |
| 18:30 | 保育園と学童のお迎え | 行きつけの店で夕食、または自炊 |
| 19:00 | 夕食の準備、食事、片付け | 趣味の時間(ゲーム、読書、資格の勉強) |
| 20:00 | 子供を風呂に入れる。宿題を見る | サウナ、または散歩 |
| 21:00 | 寝かしつけ(一緒に寝落ちすることも) | 映画を1本、またはAIと雑談 |
| 22:00〜23:00 | やっと自由。だが疲れて、スマホを眺めるだけ | 自由。好きなことを続ける |
| 23:00 | 就寝(夜中に子供が起きることも) | 就寝 |
子育て中の父親の自由時間は、子供が寝た後の約1時間。しかもその時間は、疲れ切って何もできないことが多い。独身男性は、朝のジムから夜の映画まで、約5時間を自分のために使える。
休日のタイムスケジュール:自由がほぼゼロ
休日になると、差はさらに開く。
| 時間帯 | 子育て中の父親 | 独身男性 |
|---|---|---|
| 朝 | 子供に起こされる(6時台)。朝食の準備 | 好きな時間に起きる。カフェでモーニング |
| 午前 | 習い事の送迎(サッカー、スイミング) | サウナ、ジム、または一人旅の移動 |
| 昼 | 家族でファミレスかフードコート | 行きたかった店で一人焼肉や寿司 |
| 午後 | 公園、ショッピングモール、妻の実家 | 趣味に没頭。美術館、釣り、ソロキャンプ |
| 夕方 | 買い出し、夕食の準備 | 昼寝、読書 |
| 夜 | 風呂、寝かしつけ。気づけば22時 | 行きつけのバー、映画、ゲーム |
子育て中の父親の休日は、家族の予定を回すための勤務日だ。自分の趣味の時間は、ほぼゼロ。一方、独身男性の休日は、起きてから寝るまでのすべてが自分のものだ。
1日の時間の使い方(モデル・休日)
Fig. 02そう思えるなら幸せなことだ。じゃあ聞くが、最後に一人で映画館に行ったのはいつだ? 最後に読み切った本は? 最後に「今日は何をしようか」と自分のためだけに考えた朝は? 答えられないなら、それは自由じゃない。慣れただけだ。
年間で失う自由時間は、約1,500時間
平日と休日の差を、1年分に積み上げてみよう。
| 項目 | 子育て中の父親 | 独身男性 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平日(約245日) | 1時間×245日=245時間 | 5時間×245日=1,225時間 | 980時間 |
| 休日(約120日) | 1.5時間×120日=180時間 | 6時間×120日=720時間 | 540時間 |
| 年間合計 | 425時間 | 1,945時間 | 1,520時間 |
独身男性の休日の自由時間を、控えめに6時間と見積もっても、差は年間約1,500時間。1日8時間労働に換算すると、約190日分だ。子供が小学校を卒業するまでの12年間なら、約1万8,000時間になる。
年間の自由時間(モデル)
Fig. 03睡眠も削られる
子育てで削られるのは、自由時間だけではない。睡眠もだ。
ドイツの約4,700人を追跡したRichterらの研究(2019年, SLEEP誌)では、第1子が生まれた後、親の睡眠の満足度と睡眠時間は大きく下がり、子供が4〜6歳になっても、出産前の水準に戻らなかった。影響は母親の方が大きかったが、父親でも睡眠の満足度は低下していた。
- 夜泣きと授乳:乳児期は夜中に何度も起こされる
- 早朝の起床:子供は朝が早い。休日も6時台に起こされる
- 寝かしつけ:子供と一緒に寝落ちし、自分の時間も睡眠の質も失う
- 体調不良:子供が熱を出せば、夜通しの看病になる
睡眠不足は、仕事のパフォーマンスにも、健康にも響く。独身男性は、自分の睡眠を誰にも邪魔されない。それだけで、仕事でも趣味でも一歩先を行ける。
子育ての時間は、楽しいのか
「時間を取られても、子供と過ごす時間は楽しいからいい」。そう言う人もいる。だが、研究のデータは別の姿を示している。
ノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンらが、働く女性909人に前日の出来事と気分を振り返ってもらった研究(2004年, Science誌)では、16種類の日常の活動のうち、「子供の世話」の楽しさは12位だった。テレビを見る、買い物をする、料理をするよりも下だった。
子供と過ごす時間の中には、もちろん楽しい瞬間もある。だが、毎日の大部分は、送迎、食事の世話、風呂、寝かしつけといった「作業」だ。写真に残る楽しい瞬間の裏には、写真に残らない膨大な作業時間がある。
子供ができると、消える趣味リスト
子育て中の父親が続けにくくなる趣味は、はっきりしている。時間がかかる趣味、一人で家を空ける趣味だ。
| 趣味 | 必要な時間 | 続けにくい理由 |
|---|---|---|
| ゴルフ | ほぼ丸1日 | 早朝に出て夕方に帰る。家族の了解が必要 |
| 釣り | 半日〜1日 | 早朝出発、遠出。子供の予定と重なる |
| 一人旅 | 1泊以上 | 家族を置いて旅行に行くこと自体が難しい |
| ソロキャンプ | 1泊以上 | 同上。道具の置き場所も家族と取り合い |
| サウナ巡り | 2〜3時間 | 休日の数時間を一人で抜けるのに気を遣う |
| 楽器・バンド | 練習時間とスタジオ | 夜の練習ができない。家では音が出せない |
残るのは、子供が寝た後にスマホでできることくらいだ。趣味は、人生の楽しみであると同時に、自分が自分であるための時間でもある。それを10年以上失うことの重さは、金額では測れない。
自由が戻るのは、いつか
子育て中の父親の自由は、いつ戻ってくるのか。32歳で第1子、35歳で第2子を持った場合を考えてみる。
| 父親の年齢 | 子供の状況 | 父親の自由 |
|---|---|---|
| 32〜41歳 | 乳幼児〜小学校低学年が家にいる | ほぼゼロ。送迎、風呂、寝かしつけ |
| 42〜47歳 | 小学校高学年〜中学生。習い事、塾、部活 | 少し戻るが、送迎と行事、教育費の負担 |
| 48〜53歳 | 高校〜大学。手はかからないが金がかかる | 時間は戻るが、金がない |
| 54歳〜 | 第2子の大学卒業 | やっと自由。だが体力も気力も落ちている |
時間と金の両方の自由が戻るのは、50代半ばだ。30代と40代、人生で最も体力と稼ぐ力がある20年間を、子育てに差し出すことになる。独身男性は、その20年間をまるごと自分のために使える。
独身の1,500時間で、何ができるか
子育て中の父親が失う年間約1,500時間を、独身男性はどう使えるのか。
- 資格を取る:中級の国家資格なら300時間前後が目安。年に複数の資格に挑戦できる
- 副業を育てる:週15時間を副業に充てれば、数年で本業と並ぶ収入源も夢じゃない
- 体を作る:週4回のジムを続けても、年200時間。残りはまだたっぷりある
- 趣味を極める:ゴルフ、釣り、一人旅、ソロキャンプ。どれでも好きなだけ
- 何もしない:昼寝をして、ぼーっとする。それも、自分で選んだ時間の使い方だ
重要なのは、何に使うかを自分で決められることだ。子育ての時間は、子供の年齢と学校と習い事のスケジュールが決める。独身の時間は、自分が決める。
まとめ:時間は、金と違って取り戻せない
6歳未満の子を持つ夫の家事関連時間は1日114分で、15年で約2倍に増えた。男性の育休取得率は40.5%。父親が育児を担うのは、もう当たり前だ。共働き・子2人の父親の自由時間は、平日で独身の約5分の1、休日はほぼゼロ。年間で約1,500時間の差になる。
睡眠は削られ、時間のかかる趣味は消え、自由が戻るのは50代半ば。子育ての時間の大部分は、写真に残らない作業の時間だ。
金は稼げば取り戻せる。だが時間は、一度差し出したら二度と戻らない。末代で何が悪い。お前の24時間は、お前のものだ。
よくある質問
子育て中の父親はどれくらい家事や育児をしていますか?
総務省の社会生活基本調査(2021年)によると、6歳未満の子供を持つ夫の家事関連時間は1日1時間54分で、そのうち育児は1時間5分だった。2006年の約1時間から、15年で約2倍に増えている。
子育て中の男性に自分の時間はありますか?
ほとんどないのが実情だ。この記事のモデル(共働き・子2人の会社員男性)では、平日の自由時間は子供が寝た後の約1時間、休日は家族の予定で埋まり、独身男性と比べて年間約1,500時間の自由時間を失う計算になる。
子育てで睡眠時間は減りますか?
減る。ドイツの約4,700人を追跡した研究(Richterら, 2019年)では、第1子の誕生後、睡眠の満足度と睡眠時間が低下し、子供が4〜6歳になっても出産前の水準に戻らなかった。影響は母親の方が大きいが、父親にも見られた。
子育て中でも趣味は続けられますか?
時間のかかる趣味は難しくなる。ゴルフ、釣り、一人旅、ソロキャンプのように半日以上かかる趣味は、家族の了解なしにはできない。多くの父親は、子供が寝た後の短い時間でできる趣味に切り替えるか、趣味自体をやめることになる。
子供がいると自由が戻るのはいつですか?
子供の手が離れる時期によるが、送迎や行事が減るのは中学生以降、経済的な負担が終わるのは大学卒業後だ。32歳で第1子を持てば、親は50代半ばになっている。自由が戻ったときには、体力も気力も落ちている。
出典・参考資料
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果」、および平成18年・23年・28年調査
- 厚生労働省「令和6年度 雇用均等基本調査」
- Richter, D., Krämer, M. D., Tang, N. K. Y., Montgomery-Downs, H. E., & Lemola, S. (2019). Long-term effects of pregnancy and childbirth on sleep satisfaction and duration of first-time and experienced mothers and fathers. SLEEP, 42(4).
- Kahneman, D., Krueger, A. B., Schkade, D. A., Schwarz, N., & Stone, A. A. (2004). A survey method for characterizing daily life experience: The day reconstruction method. Science, 306(5702), 1776–1780.