おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとりさまが住みやすい街。東京とその周辺の比較

32.15%東京都の男性の50歳時未婚割合(2020年、全国最高)
7つ老後の街選びの基準
5タイプ比べた街(都心・下町・多摩・近県・地方都市)

現役時代に住む街は、通勤の便利さで選ぶ。会社に近い、乗り換えが少ない、終電が遅い。だが、仕事を辞めたあと、その街は自分にとって住みやすいだろうか。駅前は飲み屋とオフィスばかりで、病院は遠く、坂がきつい。老後に住みやすい街は、別の基準で選ぶ必要がある。

家族のいる男は、子供の学区で住む街を選び、子供が独立したあとも、広い家と郊外の坂の上の住宅地に残される。駅までバスで20分、スーパーまで車で10分。車の運転をやめたら、買い物にも行けなくなる。家族のために選んだ街が、老後の足かせになる。

おひとりさまは、自分一人の老後に合った街を、自分で選び直せる。この記事では、東京とその周辺の街を、都心・下町・多摩・近県・地方都市の5つのタイプに分け、老後の暮らしやすさの7つの基準で比べた。特定の街の名前を挙げて順位をつけるのではなく、自分に合う街の見つけ方を示す。

この記事の結論

  1. 現役時代に住みやすい街と、老後に住みやすい街は違う
  2. 基準は7つ:病院・買い物・住居費・交通・居場所・坂と災害・行政サービス
  3. 下町は、居場所と生活の便利さと家賃のバランスがいい
  4. 住居費を下げたいなら、多摩・近県・地方都市。ただし孤立に注意
  5. 決める前に、平日と休日、昼と夜に歩いて確かめろ

東京は、おひとりさまの男が最も多い街だ

国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集によると、2020年の男性の50歳時未婚割合は、東京都が32.15%で全国最高だった。全国の28.25%を大きく上回る。

男性の50歳時未婚割合(2020年)

Fig. 01
出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」(都道府県別50歳時未婚割合、2020年)。縦軸は20%から始めている

東京と、その周りの埼玉・神奈川・千葉は、独身の男が多い地域だ。それは、おひとりさまが暮らしやすい仕組みが、他の地域より整っているということでもある。一人で入れる店、一人向けの住まい、24時間の店、一人で使えるサービス。東京は、一人で生きることを前提にした街だと言っていい。

だが、東京の中でも、老後の暮らしやすさは街によって大きく違う。

老後に住みやすい街の7つの基準

老後の街選びの7つの基準
基準確かめること
1. 病院内科のかかりつけ医と、大きな病院に通いやすいか
2. 買い物スーパー、ドラッグストアに歩いて行けるか
3. 住居費家賃や住居費が、年金と資産で払い続けられるか
4. 交通車がなくても、電車やバスで移動できるか
5. 居場所一人で入れる喫茶店、食堂、銭湯、図書館、公園があるか
6. 坂と災害坂や階段が少ないか。水害や土砂災害の危険は
7. 行政サービス高齢者向けの見守りや支援、地域包括支援センターの体制

現役時代の街選びでは、通勤と家賃と飲み屋が中心だった。老後の街選びでは、病院と買い物と居場所が中心になる。そして、車を運転しなくても暮らせることが、何より大事になる。70代、80代で車を手放したとき、歩いて暮らせる街かどうかで、暮らしの質がまるで変わる。

5つの街のタイプを比べる

老後の暮らしやすさで見た5つの街のタイプ(編集部の評価)
タイプ病院・買い物・交通住居費居場所注意点
都心◎×(高い)○家賃が年金では払えないことが多い
下町◎○◎地域によっては水害の危険。古い建物が多い
多摩の中核都市○○○駅から離れると坂やバス便の地域もある
近県の中核都市○◎○都内の知り合いと距離ができる
地方の中核都市○◎(安い)△〜○知り合いがいないと孤立しやすい。冬の寒さ

5つの街のタイプの総合点(編集部の評価、7基準×5点満点)

Fig. 02
編集部による評価。7つの基準をそれぞれ5点満点でつけた一つの見方で、同じタイプの街でも個々の街によって大きく違う。年金や資産の額、人間関係によって、合う街は人それぞれだ
5つの街のタイプの7基準の点数(編集部の評価、各5点満点)
基準都心下町多摩近県地方都市
病院55444
買い物45443
住居費13445
交通55342
居場所35333
坂と災害32333
行政サービス34443
合計2429252623

この評価は、一つの見方にすぎない。資産に余裕があれば都心がいちばん便利だし、知り合いがいれば地方都市も暮らしやすい。大事なのは、7つの基準で、自分にとっての点数をつけることだ。

都心:便利だが、高い

都心は、病院、交通、店がすべてそろっている。大きな病院に近く、電車は数分おき、深夜まで店が開いている。一人で入れる店も多い。暮らしの便利さでは、都心に勝る場所はない。

だが、家賃が高い。年金の手取りが月15万円前後なら、都心の家賃を払い続けるのは難しい。都心で老後を過ごすなら、持ち家があるか、家賃を払い続けられる資産があることが条件になる。また、都心の駅前は、オフィスと飲み屋が中心で、平日の昼間に一人で過ごす居場所が意外と少ない地域もある。

下町:居場所と便利さと家賃のバランス

おひとりさまの老後に、いちばんバランスがいいのが下町だ。

  • 商店街:八百屋、肉屋、総菜屋。少量で買えて、店の人と顔なじみになれる
  • 銭湯:東京の銭湯は大人600円。常連と天気の話をする、毎日の居場所になる
  • 喫茶店と食堂:一人で入れる、昔ながらの店が多い
  • 地域のつながり:町内会や祭りが残っていて、顔見知りができやすい
  • 都心に近い:大きな病院や繁華街にも出やすい

家賃は都心より抑えやすく、古い建物なら手ごろな物件も見つかる。ただし、下町には川や低地が多く、地域によっては水害の危険がある。住む前に、自治体のハザードマップで、浸水の想定を必ず確かめろ。古い建物は、耐震性やエレベーターの有無も確かめる必要がある。

多摩の中核都市:都心より安く、自然もある

多摩地域の中核都市(駅前に商業施設と病院が集まる街)は、都心より住居費を抑えつつ、生活の便利さも保てる。駅前には大型のスーパー、病院、図書館がそろっていることが多い。公園や川沿いの散歩道など、自然が近いのも魅力だ。

注意すべきは、駅から離れた地域だ。多摩には、丘陵地に開発された住宅地が多く、坂がきつく、バス便に頼る地域もある。老後に住むなら、駅から歩ける平らな場所を選べ。

近県の中核都市:住居費を下げる

神奈川、埼玉、千葉の中核都市は、住居費を下げたいおひとりさまに向いている。都内より家賃が安く、駅前には商業施設と病院がそろっている。都内にも電車で出られる。

近県に移るときに気をつけるのは、都内の知り合いや居場所との距離だ。行きつけの店、趣味の仲間、友人。それらが遠くなると、人と会う回数が減る。移るなら、新しい街で居場所を作ることを意識しろ。

地方の中核都市:安いが、孤立に注意

老後に東京を離れ、地方の中核都市に移る選択もある。家賃や物価が安く、同じ年金でゆとりのある暮らしができる。県庁所在地クラスの都市なら、病院や商業施設もそろっている。

だが、知り合いがいない土地に移ると、孤立しやすい。地方は、車の暮らしが前提の地域も多い。冬の寒さも、体にこたえる。地方に移るなら、中心部の、歩いて暮らせる場所を選び、移る前に短期滞在で暮らしを試せ。ワーケーションや長期滞在で、その街の夏と冬を経験しておくといい。

おひとりさまにとって、居場所がある街がいちばんだ

7つの基準の中で、おひとりさまにとって特に大事なのが「居場所」だ。家族のいる高齢者は、家族との会話がある。おひとりさまは、家の外に居場所がなければ、一日誰とも話さないことになる。

  • 喫茶店:毎朝通えば、店主と顔なじみになる
  • 銭湯:毎日の楽しみと、常連との会話
  • 図書館:無料で一日いられる
  • 公園と川沿い:散歩の道があれば、毎日歩ける
  • 公民館や地域の集まり:サークルや講座で、地域の仲間ができる

内閣府の孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)では、孤独を「しばしば・常に」感じる人は、気軽に話せる相手がいない人で25.0%、いる人で2.5%だった。居場所のある街は、孤独を防ぐ街だ。街を選ぶときは、「この街で、毎日どこに行くか」を想像してみろ。

住居費は、年金から逆算しろ

老後の街選びで、最後に効いてくるのは住居費だ。総務省の家計調査(2024年)では、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月14万9,286円で、そのうち住居費は1万2,693円だった。この数字が小さいのは、持ち家の人が多いからだ。賃貸なら、この上に家賃がまるごと乗る。

  • 年金の手取りから、住居以外の生活費を引く:残りが、年金で払える家賃の上限だ
  • 足りない分は、資産の取り崩しで埋める:家賃と年金の差×老後の年数が、住まいのために必要な資産だ
  • 家賃を1万円下げれば、25年で300万円:街を少し変えるだけで、老後資金の必要額が大きく変わる

都心と下町、多摩、近県で、同じ広さの部屋の家賃は大きく違う。便利さをどこまで求め、どこで住居費を下げるか。その判断が、老後の街選びの核心だ。病院と買い物と居場所がそろっていれば、駅の格を一つ下げても、暮らしの質はほとんど変わらない。

住む前に確かめること

  1. 平日と休日、昼と夜に歩く街の雰囲気は、時間で変わる。平日の昼間に、高齢者がどう過ごしているかを見る。
  2. 家から病院・スーパー・駅まで歩いてみる距離だけでなく、坂、歩道、信号の多さも。
  3. ハザードマップを見る浸水、土砂災害、地震の揺れやすさ。
  4. 自治体の高齢者向けサービスを調べる見守り、配食、緊急通報、地域包括支援センターの場所。
  5. 一人で入れる店を探す喫茶店、食堂、銭湯。実際に入ってみる。
  6. 家賃の相場を調べる年金と資産で、何年払えるか。

移るなら、60代前半までに

老後の街に移るなら、60代前半までが目安だ。年齢が上がるほど、賃貸を借りにくくなり、新しい街で人間関係を作るのも難しくなる。60代前半に移り、元気なうちに新しい街で居場所を作る。そうすれば、70代、80代になっても、その街で顔なじみに囲まれて暮らせる。

移ったら、最初の1年で、毎日の行き先を三つ作れ。朝の喫茶店、昼の散歩道、夕方の銭湯や図書館。同じ時間に同じ場所に通えば、半年もすれば顔を覚えられ、一言二言の会話が生まれる。新しい街に根を下ろすのに、特別なことは要らない。通い続けることが、街に受け入れられるいちばんの近道だ。そして、住所が決まったら、その地域の地域包括支援センターに一度顔を出しておけ。困ったときに相談できる窓口を、元気なうちに知っておくことも、新しい街での大事な準備だ。窓口の担当者に顔を覚えてもらえれば、いざというときの安心がまるで違う。

街を選び直す独身と、街に縛られる既婚

老後の街を選び直すおひとりさま

  • 60代前半で、商店街と銭湯のある下町に移った
  • 病院もスーパーも駅も、歩いて行ける
  • 毎朝の喫茶店と夕方の銭湯が、居場所になった
  • 車がなくても、80代まで暮らせる

子供の学区で選んだ街に残る既婚の男

  • 子供が独立しても、郊外の坂の上の家に残る
  • 駅までバス、スーパーまで車
  • 車を手放したら、買い物にも行けない
  • 近所に、一人で入れる店も居場所もない

家族のために選んだ街は、家族が去ったあとも、そのまま残る。おひとりさまは、人生の段階に合わせて、住む街を選び直せる。現役時代は通勤の便利な街、老後は歩いて暮らせて居場所のある街。その自由を、老後の街選びに生かせ。

「独身は老後に住む場所に困るぞ」と言う奴へ

俺は60代で、銭湯と商店街と喫茶店のある街に移る。病院もスーパーも歩いて行ける。お前の家は、駅からバスで20分の坂の上だろう? 車を手放したら、お前はどうやって買い物に行くんだ? 住む場所に困るのは、選び直せない方だ。

まとめ:歩いて暮らせて、居場所のある街を選べ

東京都の男性の50歳時未婚割合は32.15%で全国最高で、東京はおひとりさまの男が最も多く暮らす街だ。だが、現役時代に住みやすい街と、老後に住みやすい街は違う。老後の街選びは、病院・買い物・住居費・交通・居場所・坂と災害・行政サービスの7つの基準で考えろ。

都心は便利だが高く、下町は居場所と便利さと家賃のバランスがよく、多摩や近県は住居費を下げられ、地方都市は安いが孤立に注意が要る。決める前に、平日と休日、昼と夜に歩き、病院やスーパーまでの距離、ハザードマップ、自治体のサービス、一人で入れる店を確かめろ。移るなら60代前半までに。この記事の評価は一つの見方で、家賃や行政サービスは街ごとに違うので、自分の目で確かめてほしい。

歩いて暮らせて、居場所のある街で、老後を過ごせ。末代で何が悪い。

よくある質問

おひとりさまが老後に住みやすい街の条件は?

病院とスーパーに歩いて行けること、家賃や住居費が年金で払える範囲であること、駅やバスで移動できること、一人で入れる店や居場所があること、坂や階段が少ないこと、災害の危険が小さいこと、行政の高齢者向けサービスが整っていることだ。

東京の都心はおひとりさまの老後に向いている?

病院、交通、店がそろっていて便利だが、家賃が高い。年金だけで都心の家賃を払うのは難しいことが多い。持ち家がある人、資産に余裕がある人に向いている。

東京の下町はおひとりさまに向いている?

向いていることが多い。商店街や銭湯、喫茶店など、一人で立ち寄れる店が多く、地域のつながりも残っている。都心に近く、家賃も都心よりは抑えやすい。ただし地域によっては水害の危険があるので、ハザードマップを確かめるといい。

老後は東京を離れた方がいい?

家賃や生活費を下げたいなら、東京の郊外や近県、地方の中核都市に移るのも選択肢だ。ただし、知り合いのいない土地に移ると孤立しやすい。移る前に、短期滞在で暮らしを試すといい。

住む街を決めるとき、何を確かめればいい?

家から病院、スーパー、駅までの距離、坂の多さ、家賃の相場、ハザードマップ、自治体の高齢者向けサービス、地域包括支援センターの場所、一人で入れる店や居場所があるかだ。平日と休日、昼と夜の両方に歩いてみるといい。

出典・参考資料

  1. 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」(都道府県別50歳時未婚割合)
  2. 内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)」
  3. 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
  4. 街のタイプの評価は、編集部による一つの見方