おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとりさまの老後の住まい。終の棲家の選び方

1,491万世帯2050年の世帯主75歳以上の世帯(推計、2020年は1,066万)
2段構え元気なうちの住まいと、介護が必要になったときの住まい
5種類老後の主な住まいの選択肢

70代、80代。自分はどこで暮らしているだろう。今の部屋に住み続けているのか、どこかの施設にいるのか。体が弱ったとき、一人で階段を上れるか。介護が必要になったとき、誰が住まいを探してくれるのか。

家族のいる男は、「いざとなったら子供の家に」と考える。だが、子供の家に居場所はなく、子供の配偶者には気を遣い、結局は施設を探すことになる。家族がいても、終の棲家は自分で選ばなければならない。

おひとりさまは、最初から自分で終の棲家を選ぶ前提で考えられる。この記事では、老後の住まいを「元気なうちの住まい」と「介護が必要になったときの住まい」の二段構えで整理し、それぞれの選択肢の特徴と費用の目安、選ぶ時期、独身ならではの注意点をまとめた。

この記事の結論

  1. 老後の住まいは、元気なうちと介護が必要になったときの二段構えで考えろ
  2. 元気なうちの住まいは60代前半までに。年齢が上がるほど借りにくく、動きにくい
  3. 介護が必要になったら、介護付きの施設か特養。候補は元気なうちに調べておけ
  4. 選ぶ基準は、費用・立地・介護の手厚さ・医療との連携・退去の条件
  5. 独身は身元保証人と手続きの代理人を、先に用意しておけ

高齢の世帯は、これから増え続ける

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」(2024年推計)によると、世帯主が65歳以上の世帯は、2020年の2,097万世帯から増え、2045年の2,431万世帯でピークを迎える。世帯主が75歳以上の世帯は、2050年には1,491万世帯になる。

世帯主が65歳以上・75歳以上の世帯数の推計

Fig. 01
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」。75歳以上の2020年は、2050年の値と「2020年よりも425万世帯多い」から算出

そして、65歳以上男性の独居率は、2020年の16.4%から2050年には26.1%になると推計されている。高齢の一人暮らしが増えるほど、高齢者向けの住まいへの需要も増える。人気の施設や、条件のいい住まいほど、早く動いた人から埋まっていく。

老後の住まいは、二段構えで考えろ

老後の住まいを、一度で決めようとすると難しい。60代と80代では、体の状態がまるで違うからだ。だから、二段構えで考えろ。

老後の住まいの二段構え
段階体の状態住まいの選択肢決める時期
1段目:元気なうちの住まい自立して暮らせる自宅(持ち家・賃貸)、サ高住60代前半まで
2段目:介護が必要になったときの住まい介護が必要介護付き有料老人ホーム、特養、グループホーム候補は60代のうちに調べておく

1段目の住まいで、できるだけ長く自立して暮らす。そして、介護が必要になったら、2段目の住まいに移る。2段目の候補を元気なうちに調べ、見学し、費用を確かめておく。介護が必要になってから慌てて探すと、空きのある施設に入るしかなくなる。

老後の住まいの主な選択肢

老後の住まいの主な選択肢
住まい向いている状態特徴費用の目安(月額)
自宅(持ち家・賃貸)自立〜軽度の介護住み慣れた環境。介護保険の在宅サービスを使う住居費+生活費+介護サービスの自己負担
サービス付き高齢者向け住宅自立〜軽度の介護バリアフリーの賃貸。安否確認と生活相談つき10万〜25万円程度(介護サービス費は別)
住宅型有料老人ホーム自立〜中度の介護食事などの生活支援つき。介護は外部のサービスを使う15万〜30万円程度
介護付き有料老人ホーム要介護施設の職員が介護をする15万〜30万円以上(入居一時金がある場合も)
特別養護老人ホーム(特養)原則要介護3以上公的な施設。費用が比較的安い10万〜15万円程度
グループホーム認知症の人少人数で共同生活。地域の住民が対象12万〜20万円程度

費用は、地域、部屋の種類、介護の度合い、所得で大きく変わる。上の金額は目安で、実際には施設ごとに確かめる必要がある。特に有料老人ホームは、入居一時金が0円から数千万円まで幅がある。

老後の住まいの月額費用の目安(中央の値)

Fig. 02
編集部による目安。上の表の費用の幅の中央の値。地域、部屋の種類、介護の度合い、所得で大きく変わる。サ高住は介護サービス費を含まない。入居一時金は含まない

1段目:自宅で暮らし続けるために

多くの人は、できるだけ長く自宅で暮らしたいと考える。おひとりさまが自宅で暮らし続けるには、住まいと仕組みの両方を整える必要がある。

  • 住まいを安全にする:段差をなくす、手すりをつける、浴室とトイレを使いやすくする。介護保険の住宅改修の補助が使える場合がある
  • 寒さを防ぐ:冬の寒い脱衣所と浴室は、体に負担がかかる。断熱と暖房を整える
  • 立地を選ぶ:病院、スーパー、駅に歩いて行けること。車がなくても暮らせること
  • 見守りの仕組み:安否確認アプリ、電気・ガスの使用量での見守り、訪問サービス
  • 在宅サービスを早めに使う:訪問介護、配食サービス、デイサービス。家族の手助けがない分、早めに頼る

家族のいる高齢者は、家族の手助けで在宅生活を続けられることが多い。おひとりさまは、その手助けをサービスで置き換える。それができれば、一人でも長く自宅で暮らせる。

持ち家と賃貸、それぞれの注意点

老後の自宅の注意点
持ち家賃貸
強み家賃がかからない。追い出される心配がない身軽。住み替えが自由
弱み修繕費。広すぎる、階段が多い。売りにくい家賃が続く。高齢になると借りにくい
やることバリアフリーにする修繕。将来の売却か住み替えを考える60代前半までに老後の部屋に移る。保証会社と緊急連絡先を確保

持ち家でも、階段の多い一戸建てや、駅から遠い家は、体が弱ると暮らしにくくなる。賃貸なら、年齢が上がるほど新しい部屋を借りにくくなる。どちらも、60代のうちに、老後に暮らしやすい住まいに整えることが大事だ。

1段目の選択肢:サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者向けの賃貸住宅だ。バリアフリーの設備と、安否確認と生活相談のサービスがついている。一人暮らしのおひとりさまにとって、「自宅の自由」と「見守りの安心」を両立できる住まいだ。

  • 自立から軽度の介護が必要な人に向く:介護が重くなると、住み続けられないこともある
  • 介護サービスは別に契約する:外部の訪問介護などを使う。併設の事業所があることも
  • 費用は家賃+サービス費+生活費:入居一時金は敷金程度のことが多い
  • 中身は物件ごとに大きく違う:食事の有無、職員の配置、介護の対応

サ高住を選ぶなら、介護が重くなったときに住み続けられるかを必ず確かめろ。住み続けられないなら、その先の住まい(2段目)も考えておく必要がある。

2段目:介護が必要になったときの住まい

介護が重くなり、一人で自宅に暮らすのが難しくなったら、介護つきの住まいに移る。

  • 特別養護老人ホーム(特養):公的な施設で、費用が比較的安い。原則要介護3以上。地域によっては入居を待つ人が多い
  • 介護付き有料老人ホーム:施設の職員が介護をする。費用は高めだが、選択肢が多く、入居しやすい
  • グループホーム:認知症の人が少人数で共同生活をする。原則として、その市区町村に住んでいる人が対象
  • 介護老人保健施設(老健):在宅に戻るためのリハビリの施設。長く住む場所ではない

特養は費用が安いので人気だが、すぐに入れるとは限らない。特養を第一候補にしつつ、入れなかったときの有料老人ホームの候補も持っておけ。そして、その費用を払えるだけの介護資金を、生活費とは別に用意しておけ。

住まいを選ぶ5つの基準

  1. 費用入居一時金と月額。年金と資産で、何年払えるか。値上げの可能性も。
  2. 立地病院、知人、行きつけの店に近いか。今の暮らしとのつながりを保てるか。
  3. 介護の手厚さ介護が重くなっても住み続けられるか。夜間の職員の配置は。
  4. 医療との連携協力医療機関はどこか。看取りまで対応しているか。
  5. 退去の条件どんなときに退去を求められるか。入居一時金の返還の条件は。

特に退去の条件は見落としがちだ。介護が重くなった、医療的な処置が必要になった、他の入居者とトラブルになった。そういうときに退去を求められる施設もある。「終の棲家」のつもりで入った施設を、追い出されることがある。契約書の退去の条件を、必ず読め。

見学で見るべきこと

  • 入居者の表情と様子:楽しそうに過ごしているか、放っておかれていないか
  • 職員の言葉遣いと人数:入居者に丁寧に接しているか、忙しすぎないか
  • においと清潔さ:共用部分やトイレが清潔か
  • 食事:可能なら試食する。毎日のことだ
  • 一人の時間を過ごせるか:個室の広さ、趣味を続けられるか、外出の自由

おひとりさまの男にとって、一人の時間を過ごせるかは大事な基準だ。集団の行事ばかりの施設では、息が詰まる。個室で本を読み、好きな時間に散歩に出られる。そういう住まいを選べ。見学は、複数の施設を、平日と休日の両方で見るといい。

独身ならではの注意点:保証人と代理人

おひとりさまが施設に入るとき、いちばん困るのが身元保証人だ。多くの施設は、入居の条件として身元保証人を求める。身元保証人は、費用の支払いの保証、緊急時の連絡先、亡くなったときの身柄の引き取りや荷物の片づけなどの役割を担う。

  • 親族に頼む:きょうだい、甥・姪。元気なうちに相談しておく
  • 身元保証サービスを使う:民間の事業者が保証人の役割を担う。費用と内容を必ず確かめる
  • 任意後見契約:判断能力が落ちたときに、施設の契約やお金の管理を任せる人を決めておく
  • 施設に相談する:保証人がいない場合の対応を、施設が用意していることもある

そして、施設を探して契約する手続きを、誰がするのかも考えておけ。介護が必要になったとき、自分で施設を見学し、契約できるとは限らない。元気なうちに候補を絞り、任意後見人や信頼できる人に希望を伝えておく。エンディングノートに「こういう施設に入りたい」と書いておくのもいい。

住まいの準備の年表

おひとりさまの住まいの準備
年代やること
50代老後に住む地域を決める。持ち家か賃貸かの方針を決める
60代前半元気なうちの住まい(1段目)に移る。バリアフリーと立地を整える
60代後半介護が必要になったときの住まい(2段目)の候補を見学する。身元保証と任意後見を準備する
70代〜見守りと在宅サービスを使いながら、1段目でできるだけ長く暮らす。必要になったら2段目へ

終の棲家を自分で選ぶ独身と、家族に任せる既婚

終の棲家を自分で選ぶおひとりさま

  • 60代前半で、暮らしやすい住まいに移った
  • 介護が必要になったときの施設を、元気なうちに見学した
  • 身元保証と任意後見を、先に用意している
  • 一人の時間を過ごせる住まいを、自分の基準で選ぶ

「子供の家に」と考える既婚の男

  • 子供の家に、自分の居場所はない
  • 介護が必要になってから、子供が慌てて施設を探す
  • 空きのある施設に、希望も聞かれずに入る
  • 終の棲家を、自分で選べない

もちろん、家族と話し合って住まいを決める家庭もある。だが、終の棲家を自分の基準で、自分の判断で選べるのは、早くから準備するおひとりさまの強みだ。人生の最後の住まいを、他人任せにするな。

「独身は最後に住む所がなくて困るぞ」と言う奴へ

住む所は、自分で選んである。60代で暮らしやすい部屋に移り、介護が必要になったときの施設も見学した。保証人の準備もできている。お前は「子供の家に」と言うが、その子供の家に、お前の部屋はあるのか? 子供の配偶者は、お前を歓迎するのか?

まとめ:終の棲家は、二段構えで自分で選べ

世帯主が65歳以上の世帯は2045年に2,431万世帯でピークを迎え、75歳以上の世帯は2050年に1,491万世帯になると推計される。高齢の一人暮らしが増えるほど、条件のいい住まいは早く動いた人から埋まっていく。

老後の住まいは、元気なうちの住まい(自宅・サ高住)と、介護が必要になったときの住まい(介護付き有料老人ホーム・特養・グループホーム)の二段構えで考えろ。元気なうちの住まいは60代前半までに移り、介護つきの住まいの候補は60代のうちに見学しておけ。選ぶ基準は、費用・立地・介護の手厚さ・医療との連携・退去の条件。独身は、身元保証人と手続きの代理人を先に用意しろ。施設の費用や入居の条件は施設と地域で大きく違うので、必ず各施設と自治体に確認してほしい。

人生の最後の住まいは、自分で選べ。末代で何が悪い。

よくある質問

おひとりさまの老後の住まいの選択肢は?

自宅(持ち家・賃貸)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、住宅型・介護付きの有料老人ホーム、特別養護老人ホーム(特養)、認知症の人のためのグループホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)などがある。元気なうちは自宅やサ高住、介護が必要になったら介護付きの施設や特養、という二段構えで考えるのが基本だ。

終の棲家はいつ決めればいい?

元気なうちの住まいは60代前半まで、介護が必要になったときの住まいの候補は60代のうちに考えておくといい。年齢が上がると賃貸を借りにくくなり、体力的にも引っ越しが難しくなる。介護が必要になってから慌てて探すと、選択肢が限られる。

一人暮らしの高齢者が自宅で暮らし続けるには?

段差をなくす、手すりをつける、寒さ対策をするなど住まいを安全にし、見守りサービスや介護保険の在宅サービスを使い、病院やスーパーに近い場所に住むことだ。家族の手助けがない分、サービスを早めに使い始めるといい。

サービス付き高齢者向け住宅とは?

高齢者向けの賃貸住宅で、バリアフリーの設備と、安否確認・生活相談のサービスがついている。介護サービスは別に契約して使うことが多い。自立から軽度の介護が必要な人に向いている。

施設に入るときに独身が困ることは?

身元保証人と、入居の手続きや費用の支払いを代わりにしてくれる人だ。多くの施設は身元保証人を求める。親族に頼めなければ、身元保証サービスや任意後見契約で備えておく必要がある。

出典・参考資料

  1. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」
  2. 厚生労働省「介護保険制度の概要」「介護サービス情報公表システム」
  3. 国土交通省・厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅」の案内
  4. 費用の目安は、編集部が公的機関や施設の案内をもとにした幅の目安