おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとりさまは賃貸で大丈夫?高齢単身者が部屋を借りる方法

2025年10月改正住宅セーフティネット法の施行(居住サポート住宅の認定開始)
4つ家主が高齢単身者に抱く不安
60代前半老後の部屋に移っておく時期の目安

70歳を過ぎて、引っ越しを考える。駅に近い、エレベーターのある部屋に移りたい。不動産屋に行くと、担当者の顔が曇る。「お一人ですか……保証人の方は?」。高齢の一人暮らしは、部屋を借りにくい。それは、多くのおひとりさまが不安に思っていることだ。

だが、持ち家なら安心かというと、そうでもない。子供部屋のある一戸建ては、一人には広すぎて掃除も修繕も手が回らない。階段が上れなくなっても、駅から遠くても、売れずに住み続けるしかない。住まいの不安は、持ち家にも賃貸にもある。

この記事では、高齢の単身者が部屋を借りにくい理由を家主の側から分解し、それを解消する仕組みを整理する。2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行され、高齢者が借りやすくなる制度も整ってきた。おひとりさまが老後も賃貸で暮らすための方法をまとめた。

この記事の結論

  1. 家主の不安は、孤独死・家賃の滞納・死後の荷物と契約・認知症の4つ
  2. 不安を一つずつ消せば、高齢の単身者でも借りられる物件は増える
  3. 2025年10月から、見守りつきの居住サポート住宅の認定制度が始まった
  4. 家賃債務保証、終身建物賃貸借、残置物のモデル契約条項も使える
  5. 老後の部屋には、60代前半までに移っておけ

なぜ、高齢の単身者は借りにくいのか

家主が高齢の一人暮らしの入居をためらうのは、高齢者が嫌いだからではない。何かあったときの対応に不安があるからだ。その不安は、だいたい次の4つにまとめられる。

家主が高齢単身者に抱く不安と、その解消策
家主の不安中身解消策
孤独死部屋で亡くなり、長く気づかれない。部屋の原状回復や次の入居者への影響見守りサービス、安否確認、居住サポート住宅
家賃の滞納年金暮らしで家賃が払えなくなる家賃債務保証会社、家賃を年金の範囲に
死後の荷物と契約亡くなったあと、部屋の荷物の片づけと契約の解除を誰がするのか残置物の処理の取り決め、死後事務委任、終身建物賃貸借
認知症判断能力が落ちて、トラブルや契約の問題が起きる任意後見、福祉サービスとのつながり

この表を見ればわかるように、家主の不安には、一つずつ解消策がある。逆に言えば、これらの解消策を自分で用意している高齢の単身者は、家主にとって「安心して貸せる人」になる。おひとりさまの賃貸探しは、家主の不安を先回りして消すことから始まる。

高齢の一人暮らしは、これから増える

国立社会保障・人口問題研究所の推計(2024年)では、65歳以上男性の独居率は2020年の16.4%から2050年には26.1%に、女性は23.6%から29.3%になる。

65歳以上の独居率の推計

Fig. 01
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」

高齢の一人暮らしが増えれば、家主にとっても、高齢の単身者は無視できない借り手になる。空き家が増える中で、高齢者向けの賃貸を工夫する家主や管理会社も出てきている。そして、国もそれを後押しする制度を整えている。おひとりさまの老後の賃貸は、少しずつ借りやすくなっている。

2025年10月、改正住宅セーフティネット法が施行された

2025年10月1日、改正住宅セーフティネット法が施行された。高齢者、障害者、低所得者など、住まいの確保に配慮が必要な人が、賃貸住宅を借りやすくするための法律だ。主な内容は次のとおりだ。

  • 居住サポート住宅の創設:居住支援法人などが家主と連携し、ICTなどを使った安否確認、訪問による見守り、福祉サービスへのつなぎを行う住宅を、市区町村などが認定する
  • 終身建物賃貸借の手続きの簡素化:亡くなるまで住める賃貸借の仕組みを、家主が使いやすくした
  • 家賃債務保証業者の認定:一定の基準を満たした家賃債務保証業者を国が認定する仕組み

居住サポート住宅の情報は、国の「居住サポート住宅情報提供システム」で調べられる。まだ始まったばかりの制度で、物件の数は地域によって違う。住みたい地域にどんな物件があるか、早めに調べておけ。

不安1を消す:見守りの仕組みを持て

家主が最も心配するのは、部屋で亡くなり、長く気づかれないことだ。内閣府の推計(報道による)では、2025年に自宅で亡くなった一人暮らしの人のうち、死後8日以上たって見つかった人は2万2,222人とされる。

  • 安否確認アプリ:毎日スマホで応答し、応答がなければ登録した人に通知
  • 電気・ガス・水道の見守り:使用量の異常で通知
  • 訪問・電話の見守りサービス:郵便局や警備会社などのサービス
  • 居住サポート住宅:見守りが最初からついている住宅

入居の申し込みのときに、「見守りサービスを使っています」と伝えれば、家主の不安はぐっと小さくなる。見守りは、自分の安心のためであると同時に、部屋を借りるための信用にもなる。

不安2を消す:家賃を年金の範囲に

家主の二つ目の不安は、家賃の滞納だ。年金暮らしになると、収入が減る。家賃が払えなくなるのではないか、と家主は心配する。

年金の手取り月15万円の場合、家賃を払ったあとの残り(モデル)

Fig. 02
編集部によるモデル。年金の手取りを月15万円とした場合。総務省の家計調査(2024年)では、65歳以上の単身無職世帯の住居以外の消費支出は月13万円台で、家賃を払ったあとの残りだけでは不足する場合が多い

年金の手取りが月15万円なら、家賃9万円を払うと残りは6万円。それで生活費をまかなうのは難しい。総務省の家計調査(2024年)では、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月14万9,286円で、そのうち住居費は1万2,693円だった。住居以外の生活費だけで月13万円台かかる。賃貸で暮らすなら、家賃の分を、資産の取り崩しで埋める必要がある。

  • 家賃を下げる:老後の部屋は、家賃の安い地域や物件に
  • 家賃債務保証会社を使う:連帯保証人の代わりになる。国の登録・認定の制度がある
  • 家賃の分の資産を用意しておく:家賃6万円を25年払えば1,800万円
  • 公営住宅を検討する:所得の条件を満たせば、家賃が安い

不安3を消す:死後の荷物と契約を決めておけ

家主の三つ目の不安は、亡くなったあとの部屋だ。賃貸借の契約は、借主が亡くなっても自動的には終わらず、相続人に引き継がれる。相続人がいない、または疎遠だと、家主は契約の解除も、荷物の片づけも、誰に頼めばいいかわからない。

  • 残置物の処理に関するモデル契約条項:国土交通省と法務省が示した、借主が亡くなったときの契約の解除と荷物の処理を、あらかじめ決めた受任者に任せる契約の雛形
  • 死後事務委任契約:葬儀、部屋の片づけ、契約の解除などを、弁護士や専門の事業者、信頼できる人に頼む
  • 終身建物賃貸借:亡くなったときに契約が終わる仕組み。相続人への引き継ぎの問題が起きない

入居のときに、「亡くなったときの片づけと解約は、〇〇さんに頼んであります」と言えれば、家主は安心する。おひとりさまにとって、死後の準備は、生きているうちに部屋を借りるための準備でもある。

不安4を消す:判断能力が落ちたときの備え

四つ目の不安は、認知症だ。判断能力が落ちると、家賃の支払いを忘れる、近隣とトラブルになる、契約の手続きができなくなる。

  • 任意後見契約:判断能力が落ちたとき、自分が選んだ人に、財産管理と契約を任せる
  • 家賃の自動引き落とし:支払い忘れを防ぐ
  • 地域包括支援センターとつながる:困ったときに、福祉のサービスにつないでもらえる
  • 社会福祉協議会の日常生活自立支援事業:日常のお金の管理を手伝ってもらえる

老後の部屋には、60代前半までに移れ

高齢の単身者が部屋を借りにくくなるのは、年齢が上がるほどだ。60代前半なら、まだ現役で働いている人も多く、借りられる物件は多い。70代、80代になると、選択肢は狭くなる。

  1. 50代で、老後に住む地域を決める病院、スーパー、駅に近く、家賃が年金で払える地域。
  2. 60代前半で、老後の部屋に移るエレベーターのある建物、段差の少ない部屋、駅に近い立地。
  3. 移ったら、長く住む同じ家主・管理会社と長く付き合うほど、信用が積み上がる。
  4. 介護が必要になったときの移り先も考えるサ高住や施設の候補を、元気なうちに見学しておく。

60代前半に移った部屋に、70代、80代まで住み続ける。それが、おひとりさまの賃貸の老後のいちばん安定した形だ。一度入居すれば、借地借家法で借主は守られていて、家主が正当な理由なく追い出すことはできない。借りにくいのは「新しく借りるとき」だ。だから、新しく借りるのは、借りやすいうちに済ませておけ。

  • 高齢者の入居に理解のある不動産会社を選ぶ:居住支援に取り組む不動産会社や、居住支援法人に相談する
  • 居住サポート住宅やセーフティネット住宅を調べる:国の情報提供システムで検索できる
  • UR賃貸住宅を検討する:保証人がいらず、高齢者向けの住宅もある(条件は物件ごとに確認)
  • 公営住宅を検討する:所得の条件を満たせば、家賃が安い
  • 自治体の居住支援協議会に相談する:住まい探しの相談に乗ってくれる地域もある
申し込みのときに伝えること

「見守りサービスを使っています」「家賃は保証会社を使います」「緊急連絡先は〇〇です」「亡くなったときの片づけと解約は〇〇に頼んであります」。この4つを最初に伝えれば、家主の不安の多くは消える。高齢の単身者の賃貸探しは、自分が「安心して貸せる人」であることを示す作業だ。

それでも、賃貸には強みがある

借りにくさばかりを書いてきたが、老後の賃貸には強みもある。

  • 住み替えが自由:体の状態や暮らし方に合わせて、部屋を選び直せる
  • 修繕費がかからない:設備が壊れても、家主が直す
  • 死後に家が残らない:相続人に古い家を残して迷惑をかけない
  • 資産を現金で持てる:介護や施設の費用に使いやすい

おひとりさまにとって、「死後に家が残らない」のは大きい。持ち家なら、亡くなったあとに、相続人が家を売ったり片づけたりしなければならない。相続人がいなければ、手続きはさらに複雑になる。賃貸なら、荷物の片づけと解約を頼んでおけば済む。

準備する賃貸のおひとりさまと、準備しない持ち家の既婚者

準備する賃貸のおひとりさま

  • 60代前半で、駅に近いエレベーターのある部屋に移った
  • 見守り、保証会社、緊急連絡先を用意している
  • 亡くなったときの片づけと解約を、頼んである
  • 死後に、誰にも古い家を残さない

準備しない持ち家の既婚の男

  • 一人には広すぎる一戸建てに、妻を亡くして一人
  • 階段が上れなくなっても、売れずに住み続ける
  • 修繕費と固定資産税を、年金から払い続ける
  • 死後、子供が古い家の始末に困る

持ち家にも賃貸にも、それぞれのリスクがある。大事なのは、どちらを選んでも、老後に向けて住まいを整えておくことだ。おひとりさまの賃貸は、家主の不安を先回りして消せば、十分に安心な老後の住まいになる。

「独身で賃貸なんて、年を取ったら住む所がなくなるぞ」と言う奴へ

住む所は、借りやすいうちに借りてある。見守りも保証会社も、死後の片づけの手配もできている。お前の持ち家はどうだ? 階段が上れなくなったら、駅まで歩けなくなったら、誰がその家を売って、お前の次の住まいを探すんだ?

まとめ:家主の不安を、先回りして消せ

高齢の単身者が部屋を借りにくいのは、家主が孤独死、家賃の滞納、死後の荷物と契約、認知症を心配するからだ。だが、見守りサービス、家賃債務保証、残置物の処理の取り決めや死後事務委任、任意後見で、その不安は一つずつ消せる。2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行され、見守りなどがついた居住サポート住宅の認定制度も始まった。

老後の部屋には、借りやすい60代前半までに移り、そこに長く住め。家賃は年金で払える範囲に下げ、家賃の分の資産を用意しておけ。申し込みのときに、見守り、保証会社、緊急連絡先、死後の片づけの手配を伝えれば、家主は安心して貸せる。居住サポート住宅などの制度は始まったばかりで、地域によって物件の数や条件が違うので、自治体や不動産会社に確認してほしい。

借りにくいなら、借りやすい人になれ。末代で何が悪い。

よくある質問

高齢の一人暮らしは賃貸を借りられない?

借りにくくなることはあるが、借りられないわけではない。家主が心配する孤独死、家賃の滞納、亡くなったあとの荷物の片づけなどに対して、見守りサービス、家賃債務保証、残置物の処理の取り決めなどで備えれば、借りられる物件は増える。2025年10月からは、見守りなどがついた居住サポート住宅の認定制度も始まった。

居住サポート住宅とは?

2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法で創設された住宅だ。居住支援法人などが家主と連携し、ICTなどを使った安否確認や訪問による見守り、福祉サービスへのつなぎを行う住宅を、市区町村などが認定する。高齢者など住まいの確保に配慮が必要な人が借りやすくなることを目指している。

保証人がいないと借りられない?

多くの物件は、連帯保証人の代わりに家賃債務保証会社の利用を認めている。国土交通省には、一定の基準を満たした家賃債務保証業者の登録制度がある。緊急連絡先は別に求められることが多いので、親族や友人、身元保証サービスなどで用意しておくといい。

終身建物賃貸借とは?

高齢者が亡くなるまで住み続けられ、亡くなったときに契約が終わる賃貸借の仕組みだ。相続人がいない、または疎遠な単身の高齢者でも、死後の契約の扱いがはっきりするため、家主が貸しやすくなる。

老後も賃貸で暮らすなら何をすればいい?

60代前半までに老後の部屋に移る、家賃を年金の範囲に収まるように下げる、見守りサービスを使う、緊急連絡先と身元保証を用意する、死後の荷物の片づけを頼む先を決めておく、などだ。

出典・参考資料

  1. 国土交通省・厚生労働省「改正住宅セーフティネット法(2025年10月1日施行)」「居住サポート住宅情報提供システム」
  2. 国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」
  3. 国土交通省「家賃債務保証業者登録制度」「終身建物賃貸借制度」
  4. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」
  5. 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年」