おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとりさまの一戸建て・持ち家。死後に家はどうなるか

900万戸全国の空き家(2023年、住宅の13.8%)
385万戸賃貸・売却用などでない、使う予定のない空き家
3年以内相続を知ってから相続登記をする義務(2024年4月から)

40代で買ったマンション。ローンも払い終え、自分好みに整えた部屋。だが、ふと考える。「俺が死んだら、この家はどうなるんだ」。妻も子もいない。親は先に逝くだろう。きょうだいとは疎遠だ。この家は、誰のものになり、誰が片づけるのか。

家族のいる男は、「家は子供が継ぐ」と考える。だが、子供は都会で家を買い、実家に戻る気はない。親が亡くなったあと、誰も住まない家が残り、固定資産税と草むしりと売れない悩みだけが、子供に引き継がれる。家を残すことが、家族の重荷になることは珍しくない。

この記事では、おひとりさまの持ち家が、死後にどうなるかを、相続の順番、相続人がいない場合、空き家の問題、相続登記の義務化から整理する。そして、家を放置させず、誰にも負担を残さないために、元気なうちにやるべき5つの選択をまとめた。

この記事の結論

  1. 遺言がなければ、家は親→きょうだい→甥・姪の順に相続される
  2. 相続人がいなければ、相続財産清算人の手続きを経て、最終的に国庫に入ることがある
  3. 全国の空き家は900万戸。使う予定のない空き家は385万戸ある
  4. 2024年4月から相続登記が義務。相続人に手続きの負担がかかる
  5. 遺言、生前売却、リースバックなど、元気なうちに家の行き先を決めろ

家は、誰のものになるのか

おひとりさまが亡くなると、遺言がなければ、家は法定相続人が相続する。配偶者も子もいない場合、法定相続人は次の順番で決まる。

  1. 親(直系尊属)親が健在なら、親が相続する。
  2. きょうだい親がすでに亡くなっていれば、きょうだいが相続する。複数いれば、共有になるか、話し合いで分ける。
  3. 甥・姪きょうだいが先に亡くなっていれば、その子(甥・姪)が代わりに相続する(代襲相続)。甥・姪の子までは代襲しない。
  4. 相続人がいない法定相続人がいなければ、家庭裁判所の手続きを経て、最終的に国庫に入ることがある。

多くのおひとりさまの場合、家はきょうだいか甥・姪に行く。そして、その人たちは、すでに自分の家を持っていることが多い。相続した家に住む人はおらず、売るか、貸すか、空き家のまま置いておくかを決めなければならない。きょうだいが複数いれば、話し合いがまとまらず、家が放置されることもある。

相続人がいない場合、家はどうなるか

法定相続人が一人もいない、または全員が相続を放棄した場合、家は次の流れをたどる。

  • 相続財産清算人が選ばれる:利害関係人(債権者など)や検察官の申し立てで、家庭裁判所が選ぶ
  • 債務の支払い:借金や未払いの費用などがあれば、財産から支払われる
  • 特別縁故者への分与:生前に療養看護をしていた人など、特別な関係があった人が申し立てれば、財産の一部または全部が分与されることがある
  • 残りは国庫へ:最終的に残った財産は、国のものになる

この手続きには、時間がかかる。そして、申し立てる人がいなければ、手続きそのものが始まらない。その間、家は空き家のまま残る。部屋の荷物も、片づけられないまま残る。自分が大事にしてきた家が、誰にも顧みられずに朽ちていく。それを避けたいなら、遺言で行き先を決めておくしかない。

空き家は、900万戸に達した

総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、全国の空き家は900万戸で、住宅全体の13.8%だった。過去最多だ。そのうち、賃貸用や売却用、別荘などではない、使う予定のない空き家は385万戸ある。

全国の空き家の数

Fig. 01
出典:総務省統計局「住宅・土地統計調査」(2018年、2023年)。使う予定のない空き家は「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」

使う予定のない空き家の多くは、持ち主が亡くなったあと、相続した人が住まずに放置している家だと考えられる。おひとりさまの持ち家は、相続人が遠くに住んでいることが多いので、この空き家の予備軍になりやすい。

空き家を放置すると、建物が傷み、近隣に迷惑をかける。倒壊の危険がある、衛生上有害、景観を損なうなどの「特定空家」に指定されると、固定資産税の軽減がなくなることもある。2023年の法改正で、その手前の「管理不全空家」も対象に加わった。相続した人に、税金と管理の負担が重くのしかかる。

2024年4月から、相続登記が義務になった

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務になった。相続で不動産を取得した人は、相続を知った日から3年以内に、法務局に相続登記を申請しなければならない。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になる。義務化の前に相続した不動産も対象だ。

これは、相続した人にとって手間と費用がかかる。相続人全員の戸籍を集め、遺産分割の話し合いをし、登記を申請する。おひとりさまの家をきょうだいや甥・姪が相続すれば、彼らがこの手続きをすることになる。相続人が多いほど、戸籍集めも話し合いも大変になる。

遺言で家を誰に残すかを決めておけば、遺産分割の話し合いが不要になり、相続人の負担は大きく減る。おひとりさまが家を持つなら、遺言は、相続人への最大の思いやりだ。

相続した土地を国に引き取ってもらう制度

2023年4月には、相続土地国庫帰属制度も始まった。相続した土地を、一定の要件を満たせば、国に引き取ってもらえる制度だ。

  • 建物がある土地は対象外:家を解体して、更地にする必要がある
  • 費用がかかる:審査手数料と、10年分の管理費相当の負担金(原則20万円)
  • 要件がある:境界がはっきりしている、土壌汚染がない、担保が設定されていないなど
  • 相続人が使う制度:生前の本人は使えない

一戸建てを相続した人がこの制度を使うには、家の解体費用と負担金がかかる。おひとりさまが一戸建てを持っているなら、相続人にこの負担を残すかどうかを考えておけ。マンションは、この制度の対象にならない。

元気なうちにやるべき5つの選択

おひとりさまの持ち家の5つの選択
選択中身向いている男
1. 遺言で行き先を決める家を誰に残すか、売って現金で分けるかを遺言で指定する家を残したい相手がいる男
2. 生前に売却して住み替える元気なうちに家を売り、老後に暮らしやすい賃貸や施設に移る家が広すぎる、立地が不便な男
3. リースバック家を売って、その家に賃料を払って住み続ける住み慣れた家を離れたくない男
4. リバースモーゲージ家を担保に資金を借り、亡くなったあと家で返す老後の資金が足りない男
5. 遺贈寄付遺言で、家や売却代金を団体や自治体に寄付する応援したい活動がある男

1. 遺言で、家の行き先を決める

いちばん基本の選択は、遺言だ。遺言があれば、家を相続人でない人(世話になった友人、甥・姪、団体)にも残せる。遺言がなければ、法定相続人の話し合いで決まるか、相続人がいなければ国庫に入る。

  • 公正証書遺言:公証人が作る。形式の不備で無効になりにくく、原本が公証役場に保管される
  • 自筆証書遺言の法務局保管制度:自分で書いた遺言を法務局に預ける。家庭裁判所の検認が不要になる
  • 遺言執行者を指定する:遺言の内容を実行する人を決めておく。家の売却や登記の手続きをしてもらう
  • 「売って現金で渡す」も選べる:家そのものではなく、売却代金を分ける遺言(清算型遺贈)もある

家をもらっても困る相続人は多い。「家は売って、その代金を〇〇に」という遺言にすれば、受け取る人は家の管理に悩まずに済む。遺言執行者を、弁護士や司法書士にしておけば、売却まで進めてもらえる。

2. 生前に売却して、住み替える

おひとりさまの持ち家は、老後に暮らしにくくなることがある。一人には広すぎる一戸建て、階段の多い家、駅から遠い家。元気なうちに売って、老後に暮らしやすい住まいに移るのは、合理的な選択だ。

  • 売るなら、早い方が有利:建物は年々古くなり、価値が下がる。自分で売る手続きができるうちに
  • 売却代金を、老後の住まいと介護の資金に:サ高住や有料老人ホームの入居資金になる
  • 死後に家が残らない:相続人に、空き家と相続登記の負担を残さない

家を売れば、死後の家の問題がなくなる。そして、手元に現金が残る。おひとりさまにとって、家より現金の方が、老後の介護にも、死後の手続きにも使いやすい。

3・4. リースバックとリバースモーゲージ

住み慣れた家を離れたくないなら、家に住み続けながら、家を現金に変える方法もある。

リースバックとリバースモーゲージの違い
リースバックリバースモーゲージ
仕組み家を事業者に売り、賃料を払って住み続ける家を担保に資金を借り、亡くなったら家を売って返す
家の持ち主事業者に移る本人のまま
注意点売却価格が相場より低いことがある。賃料が続く。契約期間の確認対象の物件や地域が限られる。金利の上昇、担保価値の下落

どちらも、条件とリスクが事業者ごとに大きく違い、トラブルの相談も寄せられている。契約する前に、複数の事業者を比べ、売却価格や賃料、契約期間、解約の条件を必ず確かめろ。家族の同意が求められないおひとりさまだからこそ、一人で決めずに、専門家や消費生活センターに相談してから決めろ。

5. 遺贈寄付:家を社会に残す

家を残したい親族がいない、または親族には財産を残す必要がない。そういうおひとりさまは、遺言で家や売却代金を、団体や自治体に寄付する(遺贈寄付)こともできる。

ただし、不動産のままの寄付は、受け付けない団体が多い。管理や売却の手間がかかるからだ。遺贈寄付をするなら、「家を売って、その代金を寄付する」形にするのが現実的だ。寄付先の団体に、事前に受け入れの条件を確かめておけ。

今やること:家の情報を整理しろ

  1. 自分の法定相続人を確かめる親、きょうだい、甥・姪。誰が相続人になるか。
  2. 家の書類をまとめる登記の情報、購入時の契約書、ローンの完済証明、固定資産税の通知。
  3. 家の行き先を決める誰かに残すか、売って現金にするか、生前に売るか。
  4. 遺言を作る公正証書遺言か、法務局の保管制度。遺言執行者も指定する。
  5. 鍵と書類の場所を伝える遺言執行者や死後事務を頼む人に、家の鍵と書類の場所を伝えておく。

特に5番目は大事だ。おひとりさまが亡くなったとき、家に入れる人がいないと、片づけも売却も始められない。鍵を誰が持っているか、書類がどこにあるかを、信頼できる人に伝えておけ。エンディングノートにも書いておけ。

家の行き先を決める独身と、家を残すだけの既婚

家の行き先を決めるおひとりさま

  • 遺言で、家を売って代金を甥に渡すと決めた
  • 遺言執行者に、売却と登記を任せてある
  • 鍵と書類の場所を、信頼できる人に伝えた
  • 死後、誰にも空き家の負担を残さない

「家は子供が継ぐ」と考える既婚の男

  • 子供は都会に家を買い、実家に戻る気はない
  • 遺言はなく、子供同士で話し合いがまとまらない
  • 誰も住まない実家に、固定資産税と草むしり
  • 相続登記の手間と、売れない家の悩みを子供に残す

家を残すことは、必ずしも相続人のためにならない。使わない家は、相続人にとって負担になる。おひとりさまは、家の行き先を自分で決め、誰にも負担を残さないことができる。それが、家を持つおひとりさまの最後の責任だ。

「独身で家を買っても、継ぐ人がいないだろう」と言う奴へ

継ぐ人がいなくても、行き先は決めてある。遺言で売却して、代金は世話になった甥に渡す。お前の家は、子供が継ぐのか? 都会に住む子供が、田舎の実家に戻ってくるのか? 継ぐ人がいるかどうかより、家の始末を決めているかどうかの方が大事だ。

まとめ:家の行き先は、元気なうちに決めろ

おひとりさまの持ち家は、遺言がなければ、親→きょうだい→甥・姪の順に相続される。相続人がいなければ、相続財産清算人の手続きを経て、最終的に国庫に入ることがあり、その間、家は空き家のまま残る。全国の空き家は900万戸、使う予定のない空き家は385万戸ある(2023年)。2024年4月からは相続登記が義務になり、相続人に手続きの負担がかかる。

元気なうちに、家の行き先を決めろ。遺言で残す相手や売却を指定し、遺言執行者を決める。家が老後に暮らしにくいなら、生前に売って住み替える。住み続けたいなら、リースバックやリバースモーゲージも選択肢だが、条件とリスクを必ず確かめろ。鍵と書類の場所は、信頼できる人に伝えておけ。相続や登記の制度、空き家の扱いは個別の状況で変わるので、司法書士や弁護士などの専門家に確認してほしい。

家を残すのではなく、家を始末する。それが、家を持つおひとりさまの責任だ。末代で何が悪い。

よくある質問

独身者が亡くなったら、持ち家は誰のものになる?

遺言がなければ、法定相続人が相続する。配偶者も子もいない場合、親が健在なら親、親がすでに亡くなっていればきょうだい、きょうだいが亡くなっていればその子(甥・姪)が相続人になる。遺言があれば、遺言で指定した人や団体に引き継がれる。

相続人がいない場合、家はどうなる?

家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が、債務の支払いや、特別縁故者(生前に特別な関係があった人)への分与の手続きを進め、残った財産は最終的に国庫に帰属する。手続きには時間がかかり、その間、家は空き家のまま残ることが多い。

相続登記の義務化とは?

2024年4月1日から、相続で不動産を取得した人は、相続を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になった。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になる。義務化の前に相続した不動産も対象だ。

おひとりさまが持ち家についてやっておくべきことは?

遺言で家の行き先を決める、生前に売却して住み替える、リースバックやリバースモーゲージを検討する、家の書類と鍵の場所を伝えておく、死後の片づけを頼む先を決めておく、などだ。

いらない土地を国に引き取ってもらえる?

2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度で、相続した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる。ただし建物がある土地は対象外で、審査手数料と負担金(原則20万円)がかかる。相続人が使う制度なので、生前の本人は使えない。

出典・参考資料

  1. 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(空き家数、空き家率)
  2. 法務省「相続登記の申請義務化」「相続土地国庫帰属制度」「自筆証書遺言書保管制度」
  3. 裁判所「相続財産清算人の選任」「特別縁故者に対する相続財産分与」
  4. 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」