夜7時、日の出桟橋から白い船が静かに離れていく。甲板に出ると、潮の匂いの風が顔に当たる。左手に東京タワー、正面にライトアップされたレインボーブリッジ、右手にお台場の観覧車。東京湾の上から見る夜景は、展望台とも、地上とも違う。船の動きに合わせて、景色がゆっくりと回っていく。
夜景クルーズは、カップルとプロポーズのためのものだと思われている。確かに、レストラン船の窓際の席には、記念日のカップルが並ぶ。家族持ちの男にとっては、もっと遠い。結婚記念日にクルーズを予約しろと妻に言われ、2人分のコース料理で3万円が飛ぶ。
だが、レストラン船には食事なしの「乗船のみ」の料金がある。東京湾の2時間半の夜景クルーズに、大人4,400円で乗れる。この記事では、夜景クルーズを一人で楽しむための船の選び方、乗船のみとコース料理の比べ方、時間帯、甲板での過ごし方をまとめた。料金や運航時間は変わるので、予約の前に公式サイトで確認してほしい。
この記事の結論
- 夜景クルーズはカップルだけのものではない。一人で甲板に立つ男もいる
- レストラン船の「乗船のみ」なら、ディナー便でも大人4,400円
- 乗船のみは1時間あたり約1,760円。展望台並みの値段で、動く夜景が見られる
- 夕暮れから夜に変わる時間がいちばん美しい。冬は夜景が澄む
- 甲板は風が強い。上着を持って、手すりにもたれて一人で眺めろ
夜景クルーズを、一人で楽しむ理由
夜景クルーズを一人で楽しむ理由は、夜景だけに集中できるからだ。カップルは、夜景よりお互いの顔を見ている。記念日の食事、写真の撮り合い、会話。せっかくの夜景が、背景になっている。
一人なら、甲板の手すりにもたれて、ただ夜景を眺めていられる。船が橋の下をくぐる瞬間、灯りのついたビル群が水面に映る様子、遠ざかっていく東京タワー。2時間半のあいだ、目の前の景色が少しずつ変わっていく。それを、誰にも話しかけられずに、黙って見ていられる。
展望台は、街を上から見下ろす。地上からは、ビルに遮られて遠くが見えない。海の上からは、東京の街を横から、ぐるりと見渡せる。この景色は、船に乗らなければ見られない。
「乗船のみ」という選択肢
東京湾の夜景クルーズの多くは、レストラン船だ。コース料理を食べながら東京湾を回る。料金は、コース料理込みで1人1万円以上になる。一人でこれを払うのは、少し重い。
だが、レストラン船には食事をしない「乗船のみ」の料金を設けているものがある。日の出桟橋から出るレストラン船シンフォニーでは、公式サイトによると、次の料金になっている(料金は変わることがある)。
| 便 | 運航時間 | 乗船のみ | コース料理つき(最も安いプラン) |
|---|---|---|---|
| サンセット | 16:20〜18:20(約2時間) | 3,600円 | 平日12,000円/土日祝13,000円 |
| ディナー | 19:00〜21:30(2時間半) | 4,400円 | 平日14,000円/土日祝15,000円 |
乗船のみなら、コース料理つきの3分の1以下の値段で、同じ船に乗り、同じ夜景を見られる。レストランの席には座れないが、甲板や共用のスペースで過ごせる。飲み物は、船内のバーで買える。持ち込みはできないことが多いので、注意しろ。
レストラン船は、グループの人数や最少催行人数の決まりがあることがある。乗船のみのプランを一人で予約できるか、席の扱いはどうなるかは、船会社の予約ページや電話で確認しておけ。運航時間が10分ほど変わる日もあり、出航の15分前には乗船手続きを済ませる必要がある。
1時間あたりの値段で比べる
夜景クルーズの値段を、1時間あたりで比べてみる。
夜の船の1時間あたりの料金(大人1人)
Fig. 01乗船のみのディナー便は、1時間あたり約1,760円だ。東京の展望台の入場料と、そう変わらない。しかも、2時間半のあいだ、動く夜景を見続けられる。食事は乗る前か降りたあとに、近くで一人で済ませればいい。夜景だけを買うなら、乗船のみがいちばん安い。
サンセット便か、ディナー便か
| 比べること | サンセット便 | ディナー便 |
|---|---|---|
| 見える景色 | 夕日、夕焼け、灯りがつき始める街 | 完全な夜景、ライトアップされた橋とビル |
| 時間 | 約2時間 | 2時間半 |
| 乗船のみの料金 | 3,600円 | 4,400円 |
| 向いている季節 | 日没が遅い夏は昼の景色が長く、日没が早い冬は夜景まで見られる | 一年中。冬は空気が澄んで夜景がきれい |
| 降りたあと | 夕方に降りて、そのまま夜の街で一杯 | 夜遅くに降りるので、帰りの電車を確認 |
おすすめは、季節で選ぶことだ。秋から冬は日没が早いので、サンセット便でも、夕日から夜景までを一度に見られる。夏は日が長いので、夜景を見るならディナー便だ。夜景がいちばんきれいなのは、空気の澄んだ冬だと言われる。
季節ごとの夜景クルーズ
夜景クルーズは、季節によってまるで違う体験になる。一度乗って終わりにせず、季節を変えて乗り直すと、同じ東京湾でも別の景色に出会える。
春は、夜風がやわらかく、甲板に長くいても寒くない。湾岸の公園の桜が、ライトアップされて見えることもある。夏は、夕方の便に乗ると、日が長いので夕焼けの時間がたっぷりある。海の上は地上より涼しく、真夏の夜でも甲板は気持ちがいい。花火大会の日は、特別な運航や料金になることがあり、予約もすぐに埋まる。
秋は、空気が澄み始め、夜景がはっきり見えてくる。暑さも寒さもちょうどよく、一年でいちばん甲板で過ごしやすい季節だ。冬は、甲板の風は冷たいが、空気が澄んで、遠くのビルの灯りまでくっきり見える。日没が早いので、サンセット便でも夜景まで見られる。厚手の上着と手袋を持って、冷えたら船内のバーで温まりながら、冬の夜景を一人で眺めろ。
年に4回、季節ごとに乗っても、乗船のみなら1年で2万円もかからない。夜景クルーズを「一生に一度の記念日の体験」にしておく理由はない。一人の男にとっては、季節ごとに通える、東京湾の上の展望台だ。
船から見える東京の景色
東京湾のクルーズでは、次のような景色が見られる(コースは船や日によって違う)。
- レインボーブリッジ:ライトアップされた吊り橋。船が下をくぐる瞬間は、橋の大きさに圧倒される
- 東京タワー:湾岸のビル群の向こうに、オレンジ色に光る塔が見える
- お台場:観覧車、海辺の公園、ビルの灯り
- 湾岸の高層ビル群:竹芝、汐留、芝浦の高層ビルが水面に映る
- 羽田空港の方角:コースによっては、夜空を飛ぶ飛行機の灯りが見える
- 東京ゲートブリッジ:コースによっては、恐竜が向かい合ったような形の橋が見える
どの景色も、船が動いているから、角度が刻々と変わる。同じ東京タワーでも、5分後には違う角度から見ている。展望台では味わえない、動く夜景の面白さだ。
甲板での過ごし方
- 出航したら、まず甲板へ桟橋を離れる瞬間から、景色は変わり始める。最初の15分を見逃すな。
- 手すりにもたれて、場所を決める船の前、横、後ろで見える景色が違う。一周して、好きな場所を見つける。
- 橋をくぐるときは真上を見るレインボーブリッジの下を通るとき、真上の橋の裏側を見上げる。
- 寒くなったら、船内で一杯甲板で体が冷えたら、船内のバーで温かい飲み物か酒を一杯。
- 帰りの航行も甲板で桟橋に戻るまでの景色も、また違う。最後まで甲板にいろ。
一人の甲板では、写真は最初の数枚だけにしろ。夜景は写真ではうまく写らないし、画面越しに見ていると、景色が記憶に残らない。スマホをポケットにしまって、潮風と夜景を体で覚えて帰れ。
特別な日は、コース料理で
誕生日や、大きな仕事を終えた日なら、コース料理つきのプランにしてもいい。窓際の席に座り、東京湾の夜景を見ながら、フレンチやイタリアンのコースを一人で食べる。
一人でコース料理を食べるのは、レストラン船ではまだ珍しいかもしれない。だが、記念日のカップルの横で、一人で自分を祝う男は、少しもみじめではない。誰かに祝ってもらうのを待つより、自分で自分を最高の場所に連れていく方が、ずっといい。一人で予約できるか、窓際の席を選べるかは、事前に確認しろ。
乗る前と、降りたあと
日の出桟橋は、ゆりかもめの日の出駅から歩いてすぐだ。浜松町や竹芝も近い。乗船のみで乗るなら、食事は乗る前か、降りたあとに済ませる。
- 乗る前:浜松町や大門の周りで、一人で入れる定食屋やそば屋で腹ごしらえ
- 降りたあと(サンセット便):まだ早い時間なので、浜松町や新橋の立ち飲みで一杯やって帰る
- 降りたあと(ディナー便):夜遅いので、帰りの電車を確認。近くのホテルに泊まるのもいい
- 東京タワーと組み合わせる:浜松町から東京タワーまで歩ける。昼は展望台、夜は船の上から東京タワーを見る
ほかの夜の船
| タイプ | 特徴 | 一人に向いているか |
|---|---|---|
| レストラン船(乗船のみ) | 大型船で東京湾を回る。甲板とバーで過ごす | 向いている。料金も手頃 |
| レストラン船(コース料理) | 窓際の席で食事をしながら夜景を見る | 特別な日に。一人の予約可否を確認 |
| 乗合屋形船 | 和の座敷で天ぷらと酒。デッキで夜景 | 1名から予約できる船なら向いている |
| 水上バスの夜の便 | 短い時間で、気軽に川と湾を回る | 向いている。運航の日は限られる |
洋の夜景クルーズと、和の屋形船。どちらも一人で乗れる。一度ずつ乗ってみて、自分に合う方を選べばいい。
乗る前の準備と注意
- 上着を持っていく:海の上は風が強い。夏の夜でも、甲板では肌寒く感じることがある
- 出航の15分前に乗船手続き:遅れると乗れない。桟橋には早めに着け
- 天気を確認する:強風や悪天候の日は欠航することがある
- 船酔いの対策:大型船は比較的揺れにくいが、心配なら酔い止めを
- 甲板では手すりにつかまる:濡れた甲板は滑る。飲みすぎて甲板に出るな
カップルだらけの船で、一人でいるということ
夜景クルーズの客は、カップルが多い。甲板では、手をつないで夜景を見る二人、写真を撮り合う二人がいる。その中に、一人で手すりにもたれている男がいる。
それを、寂しいと思う必要はない。カップルの多くは、夜景より相手を見ている。一人の男は、夜景だけを見ている。2時間半のクルーズで、いちばん長く東京の夜景を見ていたのは、たぶん一人で乗っていた男だ。景色を味わうことに関しては、一人がいちばん強い。
お前は結婚記念日にクルーズを予約させられ、2人分のコース料理で3万円を払い、妻の写真を撮り続けて、夜景はスマホの画面越しにしか見ていない。俺は4,400円で乗って、2時間半、甲板で東京湾の夜景を眺め続けた。どっちが夜景クルーズに乗ったのか、考えてみろ。
一人のクルーズと、記念日のクルーズ
一人の夜景クルーズ
- 乗船のみ4,400円で、2時間半の夜景
- 出航から帰港まで、ずっと甲板にいられる
- レインボーブリッジの下で、真上を見上げる
- 降りたら、浜松町の立ち飲みで一杯
記念日のクルーズ
- 2人分のコース料理で3万円
- 窓際の席で、相手の写真を撮り続ける
- 甲板に出たいのに、相手が寒がる
- 降りたら、終電を気にして急いで帰る
もちろん、大切な人と見る夜景にも、その人なりの思い出はあるのだろう。だが、東京湾の夜景を、自分の好きな場所から、好きなだけ黙って眺める2時間半は、一人で乗った男にしか手に入らない。
まとめ:4,400円で、東京湾の夜を独り占めしろ
夜景クルーズは、カップルだけのものではない。レストラン船の「乗船のみ」なら、日の出桟橋から出るシンフォニーのディナー便は大人4,400円、サンセット便は3,600円。1時間あたりにすると約1,760円で、展望台並みの値段で、動く東京の夜景を2時間半見られる。
秋から冬はサンセット便でも夕日から夜景まで見られ、冬は空気が澄んで夜景がきれいだ。上着を持って甲板に出て、手すりにもたれて一人で眺めろ。特別な日は、コース料理で自分を祝ってもいい。料金や運航時間、一人で予約できるかは変わることがあるので、予約の前に公式サイトで確認してほしい。
潮風の中、東京湾の夜景を一人で独り占めしろ。末代で何が悪い。
よくある質問
夜景クルーズに男一人で乗っても浮かない?
浮きにくい。乗客はカップルが多いが、甲板に出てしまえば全員が夜景を見ていて、一人かどうかを気にする人はいない。食事なしの乗船のみのプランなら、レストランの席に座らずに、甲板やラウンジで自由に過ごせる。
東京湾の夜景クルーズの料金は?
日の出桟橋から出るレストラン船のシンフォニーでは、公式サイトによると、ディナー便(19:00〜21:30)の乗船のみが大人4,400円、サンセット便(16:20〜18:20)の乗船のみが大人3,600円だ。コース料理つきのプランは1万円台になる。料金と運航時間は変わることがあるので、公式サイトで確認してほしい。
乗船のみとコース料理、一人ならどっちがいい?
初めてなら乗船のみがいい。料金が安く、甲板で夜景を眺める時間を長く取れる。誕生日など特別な日なら、コース料理のプランで窓際の席に座り、夜景を見ながら食事をするのもいい。一人で予約できるかは、事前に確認してほしい。
夜景クルーズでいちばんいい時間帯は?
夕暮れから夜に変わる時間だ。サンセット便に乗れば、夕日と、灯りがつき始める街の両方を見られる。完全な夜景を見たいなら、ディナー便がいい。冬は日が短く、空気が澄んでいるので夜景がきれいに見える。
夜景クルーズの注意点は?
甲板は風が強く、夏でも夜は冷えるので上着を持っていくこと。出航の15分前には乗船手続きを済ませること。強風や悪天候では欠航することがある。乗船のみのプランでも、船内のバーで飲み物を買えることが多いが、持ち込みはできない船が多い。
出典・参考資料
- シンフォニー クルーズ公式サイト「サンセットクルーズ」「ディナークルーズ」
- 各船会社・船宿の公式サイト(料金・運航時間・人数の条件は変更されることがあるため、予約前に確認のこと)