ソロ活 入門と極意 / SOLO-KATSU

60代・シニアのソロ活。定年後の自由時間を最高の遊びで埋める

72.57歳男性の健康寿命(2022年)
約8.5年平均寿命と健康寿命の差(男性、2022年)
27,817円65歳以上の単身無職世帯の毎月の赤字(2024年)

定年を迎えた。毎朝の満員電車も、終わらない会議も、もうない。目の前には、何十年ぶりかの、完全に自由な時間が広がっている。月曜の朝に、好きなだけ寝ていられる。平日の昼に、空いた美術館を一人で歩ける。

だが、その自由を持て余す男も多い。仕事一筋だった男が定年を迎えると、行く場所も話す相手も一気になくなり、家でテレビを見て一日が終わる。自由な時間は、遊び方を知っている男にとっては天国で、知らない男にとっては退屈な牢獄だ。

この記事では、60代・シニアの男が定年後の自由時間を最高の遊びで埋める方法をまとめた。健康寿命とお金の現実も、正直に見る。定年後に家に居場所がなく、妻に「毎日家にいられると困る」と言われる夫の話は、珍しくない。独身のお前には、その心配はない。

この記事の結論

  1. 男性の健康寿命は72.57歳。体が自由に動く時間は、定年後10年ほどしかない
  2. 体力が要るソロ活は60代のうちに。旅と山を優先しろ
  3. 定年後の最大の武器は平日だ。混雑を避けて、質の高いソロ活ができる
  4. 65歳以上の単身無職世帯は毎月約2.8万円の赤字。お金の見通しは必ず立てておけ
  5. 曜日ごとの固定のソロ活と、定期的に顔を出す居場所が、シニアの生活を支える

健康寿命という現実:体が動く時間は限られている

まず、厳しい現実から見ておこう。厚生労働省の推計では、2022年の男性の健康寿命は72.57歳だった。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことだ。同じ年の男性の平均寿命は81.05歳で、その差は約8.5年になる。

男性の健康寿命と平均寿命(2022年)

Fig. 01
出典:厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」。平均寿命は2022年の値。2024年の簡易生命表では男性の平均寿命は81.09年。横軸は60歳から始まる

65歳で定年を迎えたとすると、体が自由に動く時間は、平均で7〜8年ほどだ。もちろん個人差は大きく、80代でも山に登る人はいる。だが、平均で見れば、定年後の自由時間のうち、体力の要る遊びができる時間はそれほど長くない。

だから、60代のソロ活の鉄則は一つだ。体力が要ることから、先にやれ。

60代のソロ活は、やる順番が大事だ

定年後のソロ活は、体力の要るものから順番に片付けていくのがいい。

定年後のソロ活の順番(目安)
時期優先するソロ活理由
60代前半海外の長旅、高い山、長距離の歩く旅体力と気力が一番残っている
60代後半国内の長旅、低い山、温泉めぐり、城めぐり無理のない範囲で、遠くに行ける
70代近場の旅、美術館、寄席、学び、趣味移動の負担を減らし、文化を深める
それ以降散歩、読書、行きつけの店、地域の居場所日常の中で一人の楽しみを続ける

海外の長旅を「いつか」と先送りしているうちに、体がついてこなくなる。行きたい場所があるなら、60代前半に行け。70代でも行けるかもしれないが、60代で行けば、もっと楽しめる。

定年後の最大の武器は「平日」だ

定年後のソロ活の最大の武器は、平日に動けることだ。現役世代が働いている平日は、どこも空いている。

  • 平日の美術館:人気の展覧会も、平日の午前なら落ち着いて見られる
  • 平日の温泉旅館:休日より料金が安く、一人泊を受け入れる宿も増える
  • 平日の人気店:行列の店も、平日の開店直後ならすぐに入れる
  • 平日の山と観光地:高尾山も鎌倉も、平日は休日とは別世界だ
  • 平日の映画館:シニア料金がある映画館も多く、空いた劇場で好きな席に座れる

現役時代に混雑の中で過ごしてきた休日を、空いた平日で取り返す。これが、定年後のソロ活の一番の楽しみ方だ。

シニア向けの割引と制度を使え

60代以降は、シニア向けの割引や制度が使えるようになる。

シニアが使える割引・制度の例
分野例
美術館・博物館65歳以上の割引料金や、無料の日がある施設が多い
映画館シニア料金がある映画館が多い
鉄道JR各社の中高年向け会員制度で、運賃が割引になるものがある
都内の移動70歳以上の都民が対象の東京都シルバーパスで、都営交通や都内の路線バスに乗れる
公共施設区民プールやスポーツ施設、公開講座の高齢者割引

条件や割引率は施設や制度によって違い、変わることもあるので、利用前に確認しておけ。割引をうまく使えば、同じ予算でソロ活の回数を増やせる。

お金の現実:単身の高齢無職世帯は毎月赤字だ

定年後のソロ活を続けるには、お金の見通しが欠かせない。総務省の家計調査(2024年)では、65歳以上の単身無職世帯(平均77.7歳)の家計は次のようになっていた。

65歳以上の単身無職世帯の月の家計(2024年)

Fig. 02
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」参考4。世帯主の平均年齢77.7歳。実収入の90.7%は年金などの社会保障給付

実収入は月13万4,116円で、その9割以上が年金などの社会保障給付だ。消費支出は14万9,286円、税金や社会保険料が1万2,647円。毎月2万7,817円が足りず、多くの人は貯蓄を取り崩している。1年で約33万円、20年で約670万円だ。

そして、同じ調査で教養娯楽費は月1万5,492円、消費支出の10.4%だった。高齢の単身者も、楽しみにちゃんと金を使っている。ソロ活の予算は、この赤字を前提に組む必要がある。60代のうちに、年金の見込み額と貯蓄で何歳まで暮らせるかを、一度計算しておけ。

曜日ごとに「固定のソロ活」を入れろ

定年後の最大の敵は、生活のリズムが崩れることだ。毎日が日曜日になると、起きる時間も寝る時間もばらばらになり、気づけば一日中家にいる。

対策は、曜日ごとに固定のソロ活を入れることだ。

定年後の1週間のソロ活(例)
曜日固定のソロ活
月午前にジムかプール、昼は行きつけの定食屋
火図書館で新聞と本、午後は散歩
水公開講座やカルチャーセンター
木美術館か博物館、帰りに喫茶店
金知らない街を歩いて、昼に一人飯と昼酒
土日家で趣味。混む日は外に出ない

土日は現役世代で混むから、シニアは平日に動いて、土日は休む。現役時代と逆のリズムにするのがコツだ。曜日ごとの予定があれば、朝起きる理由ができ、生活にメリハリがつく。

体を使うソロ活:歩く、泳ぐ、登る

健康寿命を延ばすためにも、体を使うソロ活は欠かせない。

  • ウォーキング:毎日決まった時間に歩く。知らない街を歩けば、それだけでソロ活になる
  • 水泳:区民プールなら数百円。膝や腰への負担が少ない
  • 山歩き:低い山から。平日の高尾山なら混雑も少ない
  • ラジオ体操や公園の運動:地域の朝の体操は、ゆるいつながりの場にもなる

イギリスの研究では、1週間に120分以上自然の中で過ごす人は、健康感と幸福感が高いと答える割合が高かった。定年後なら、毎日20分の公園の散歩で届く時間だ。

頭を使うソロ活:学ぶ、作る、集める

体と同じくらい大事なのが、頭を使うソロ活だ。

  • 学ぶ:大学の公開講座、放送大学、博物館の講座。歴史や美術を、仕事に追われずに学び直せる
  • 作る:料理、陶芸、写真、木工、模型。手を動かして何かを作る時間は、没頭の時間になる
  • 集める:百名城、百名山、御朱印、名湯。何年もかけて集めるテーマは、毎週の行き先を決めてくれる
  • 書く:旅の記録、自分史、ブログ。書くことで、経験が整理され、もう一度楽しめる

芸術鑑賞に数か月に1回以上行く50歳以上の人は、まったく行かない人に比べて、14年間の追跡で死亡リスクが31%低かったという研究もある。因果は断定できないが、頭と心を動かす遊びは、続けて損のないものだ。

定年後の「居場所」を持て

定年後のソロ活で、もう一つ大事なのが居場所だ。一人で遊ぶことと、誰とも関わらないことは違う。

内閣府の令和7年の調査では、孤独感が「しばしば・常に」ある男性の割合は、60代で5.5%、70代で3.1%と、50代の7.6%より低かった。定年後に孤独感が強まるとは限らない。だが同じ調査で、気軽に話せる相手がいない人の孤独感は、いる人の10倍だった。

孤独感が「しばしばある・常にある」男性の割合(50代以降)

Fig. 03
出典:内閣府孤独・孤立対策推進室「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)調査結果のポイント」図4

定年後の居場所の例を挙げておく。

  • 行きつけの店:喫茶店、定食屋、居酒屋。「いつもの」で通じる店が週に何度か行ける範囲にあると、それだけで話し相手ができる
  • 学びの場:公開講座やカルチャーセンター。同じ講座の人と、学んでいることの話をする
  • 体を動かす場:ジム、プール、朝の体操。同じ時間に通う常連と顔なじみになる
  • 地域の活動:図書館のボランティア、町内の祭り、趣味のサークル。深く関わらなくても、顔を出せる場所がある

シニアのソロ活の安全対策

60代以降のソロ活では、安全が一番の注意点になる。警察庁の令和7年の統計では、山岳遭難の死者・行方不明者332人のうち、60歳以上が221人、66.6%を占めていた。そして、単独登山の遭難者の死者・行方不明者の割合は15.3%と、複数登山の約3倍だった。

  1. 無理のない計画を立てる山は低い山から、旅は移動の少ない行程で。疲れたら予定を切り上げる。
  2. 行き先を誰かに伝える兄弟、友人、行きつけの店主。誰か一人に、行き先と帰る日を伝えておく。
  3. 薬と保険証を持ち歩く持病の薬、お薬手帳、保険証。旅先で体調を崩したときに困らないように。
  4. 暑さと寒さに気をつける夏の熱中症、冬の入浴の温度差。体の調節が若い頃のようにはいかないことを前提に動く。
  5. 見守りの仕組みを使う自治体の見守りサービスや、安否確認のアプリ。一人暮らしの高齢男性こそ、もしものときの仕組みを持っておく。

既婚の定年後と、独身の定年後

独身の定年後

  • 平日の空いた美術館と温泉を、好きなだけ楽しめる
  • 行き先も予定も、全部自分で決められる
  • 家にいても、誰にも気を遣わない
  • 退職金も年金も、自分の判断で使える

既婚の定年後

  • 旅行は夫婦の予定と、孫の世話の合間に
  • 行き先は妻の希望が優先されることが多い
  • 家にいると「邪魔」と言われることもある
  • 熟年離婚なら、年金も財産も分割される

もちろん、夫婦で穏やかな老後を過ごす人もいるのだろう。だが、定年後の自由時間を、自分の判断だけで、自分のために使えるのは独身の男だ。その自由を最高の遊びで埋められるかどうかは、遊び方を知っているかどうかにかかっている。

定年後のソロ活は、定年前から始めろ

最後に。定年後にいきなりソロ活を始めるのは難しい。一人で店に入る、一人で旅をする、一人で学びの場に行く。その経験がないまま定年を迎えると、自由な時間を前に何をしていいかわからなくなる。

だから、50代のうちから、定年後のソロ活の練習をしておけ。行きつけの店を作り、趣味のテーマを持ち、一人旅に慣れておく。そうすれば、定年の日は、人生最高の遊びの始まりの日になる。

まとめ:定年後の自由は、遊び方を知る男の天国だ

男性の健康寿命は72.57歳で、平均寿命との差は約8.5年。体が自由に動く時間は、定年後10年ほどしかない。だから、体力が要る旅と山を60代のうちに優先し、平日の空いた時間を使い倒せ。シニア向けの割引も使える。

65歳以上の単身無職世帯は毎月約2.8万円の赤字だ。お金の見通しを立て、曜日ごとの固定のソロ活と定期的に顔を出す居場所を持ち、安全に気をつければ、定年後の自由時間は最高の遊びで埋められる。

何十年も働いて手に入れた自由を、全部自分のために使え。末代で何が悪い。

よくある質問

60代のソロ活のおすすめは何ですか?

平日の一人旅、温泉旅館の一人泊、日帰りの山歩きやウォーキング、美術館や博物館、寄席や映画、公開講座での学び、城や寺社めぐり、料理や写真などの趣味がおすすめだ。定年後は平日に動けるので、混雑を避けて質の高いソロ活ができる。

定年後に一人で何をすればいいかわかりません。どうすればいいですか?

やり残しリストを作り、週の予定に固定のソロ活を入れることから始めるといい。月曜はジム、水曜は図書館、金曜は散歩と昼の一人飯のように、曜日ごとに決めると生活のリズムができる。時間のかかるテーマを一つ持つと、毎週の行き先も自然に決まる。

健康寿命とは何ですか?

健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことだ。厚生労働省の推計では、2022年の男性の健康寿命は72.57歳で、平均寿命との差は約8.5年だった。体が自由に動く時間は限られているので、体力の要るソロ活は60代のうちに優先してやっておくといい。

一人暮らしの高齢男性はお金が足りますか?

総務省の家計調査(2024年)では、65歳以上の単身無職世帯の実収入は月13万4,116円、消費支出は14万9,286円で、税金などを含めると毎月約2.8万円の赤字だった。多くの人は貯蓄で補っている。60代のうちに、年金と貯蓄で何歳まで暮らせるかを計算しておくことが大事だ。

シニアのソロ活で気をつけることは何ですか?

体調管理と安全だ。山岳遭難の死者・行方不明者の6割以上は60歳以上で、一人の登山では特に注意が必要だ。無理のない計画を立て、行き先を誰かに伝え、持病の薬と保険証を持ち歩く。そして、行きつけの店や趣味の場など、定期的に顔を出す居場所を持っておくといい。

出典・参考資料

  1. 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
  2. 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
  3. 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」
  4. 内閣府孤独・孤立対策推進室「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)調査結果のポイント」
  5. 警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年における山岳遭難の概況等」
  6. Fancourt, D., & Steptoe, A. (2019). The art of life and death. BMJ, 367, l6377.
  7. White, M. P., et al. (2019). Spending at least 120 minutes a week in nature is associated with good health and wellbeing. Scientific Reports, 9, 7730.