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おひとり様の生命保険は要らない?独身男に必要な保険・不要な保険

87,430円医療費100万円の月の自己負担(高額療養費制度、年収約370万〜770万円)
3分の2傷病手当金で受け取れる給与の目安(最長1年6か月)
3つ独身男が検討すべき保険(就業不能・火災・個人賠償)

20代のころ、会社に来た保険の営業に勧められて入った生命保険。月1万円以上を、もう20年近く払い続けている。死亡保障は3,000万円。だが、ふと思う。「俺が死んだら、この3,000万円は誰の役に立つんだ?」。

生命保険の死亡保障は、残された家族の生活を守るためのものだ。妻と子供がいる男なら、自分が死んだあとの家族の生活費と、子供の学費を残す必要がある。だから、高い保険料を払ってでも大きな死亡保障をかける。家族持ちの男にとって、保険は「家族のための出費」だ。

養う家族がいない独身の男には、その必要がない。この記事では、公的保障と生活防衛資金をもとに、独身男に必要な保険と、不要な保険を仕分けた。保険料を見直すだけで、年に十数万円が浮くこともある。浮いた金は、自分の老後に回せ。

この記事の結論

  1. 死亡保障は家族のためのもの。養う家族がいなければ、大きな死亡保障は要らないことが多い
  2. 医療費は高額療養費制度で上限がある。医療費100万円でも自己負担は約8.7万円(年収約370万〜770万円)
  3. 会社員は、病気で働けないとき傷病手当金で給与の約3分の2が最長1年6か月出る
  4. 独身が備えるべきは、死亡より「長く働けない」リスク
  5. 保険より先に、生活防衛資金を厚くしろ

保険の基本の考え方

保険は、自分の貯蓄では払いきれない、大きな損失に備えるものだ。起きる確率は低いが、起きたら生活が壊れる。そういうリスクにだけ、保険をかける。貯蓄で払える損失には、保険をかけない。それが、保険の基本の考え方だ。

リスクの大きさと、備え方
リスク損失の大きさ備え方
風邪、短い入院小さい預金で払う
大きな手術、長い入院中くらい(高額療養費で上限あり)公的保障+生活防衛資金
長く働けなくなる大きい傷病手当金+生活防衛資金。足りなければ就業不能保険
家が火事になる大きい火災保険
他人に大けがをさせる非常に大きい個人賠償責任保険
自分が死ぬ家族がいれば大きい、いなければ小さい独身なら預金で葬儀費用程度

この表で、独身の男の「死亡」のリスクは小さいことがわかる。自分が死んでも、生活が壊れる家族がいないからだ。必要なのは、葬儀や死後の手続きの費用くらいで、それは預金で用意できる額であることが多い。

死亡保障は、要るのか

死亡保障が必要なのは、自分の収入で生活している家族がいる人だ。妻と子供がいる男が亡くなれば、家族は収入を失う。子供が独立するまでの生活費と学費を、死亡保障で残す。だから、家族持ちの男は数千万円の死亡保障をかける。

独身の男は、どうか。自分が亡くなっても、生活に困る家族はいない。死亡保障を受け取るのは、親やきょうだいなどの受取人だが、彼らは自分の収入で暮らしている。独身の男に、数千万円の死亡保障は、多くの場合必要ない。

必要なのは、葬儀、部屋の片づけ、死後の手続きの費用だ。これは、預金で100万〜200万円ほど用意しておけば、多くの場合足りる。死後の手続きを頼む先を決めておき、その費用を預けておく方法もある。

死亡保障が必要な独身もいる

親を経済的に支えている、障害のあるきょうだいを支えている、借金や住宅ローンがある(団体信用生命保険に入っていない)。こういう場合は、独身でも一定の死亡保障が必要になることがある。自分が亡くなったときに、誰の生活が困るかを考えて決めろ。

医療費には、上限がある

「病気になったら医療費が心配だから、医療保険に入る」。そう考える独身の男は多い。だが、日本の公的医療保険には高額療養費制度がある。1か月の医療費の自己負担が一定額を超えると、超えた分が払い戻される。

1か月の医療費が100万円かかった場合の自己負担

Fig. 01
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」の計算式(69歳以下・年収約370万〜770万円:80,100円+(医療費−267,000円)×1%)をもとに編集部が計算。差額ベッド代、食事代、先進医療などは対象外。制度は見直しが進められているので最新の額を確認のこと

年収約370万〜770万円の人なら、1か月の医療費が100万円かかっても、自己負担は約8万7千円で済む。さらに、同じ世帯で直近12か月に3回以上上限に達すると、4回目からは上限がさらに下がる(多数回該当)。大きな病気でも、医療費そのもので生活が壊れることは少ない。

ただし、高額療養費制度の対象外の出費もある。差額ベッド代(個室代)、入院中の食事代、先進医療の技術料などだ。これらは、生活防衛資金で払えばいい。生活費の半年分の預金があれば、多くの入院には対応できる。

本当に怖いのは、「長く働けない」こと

独身の男にとって、本当に怖いのは死ぬことではなく、長く働けなくなることだ。病気やけがで何か月も働けなくなれば、収入が途絶える。そして、独身の男には、代わりに稼いでくれる家族がいない。

会社員なら、健康保険の傷病手当金がある。病気やけがで仕事を休み、給与が出ないとき、給与(標準報酬日額)の約3分の2が、通算で最長1年6か月支給される。これがあれば、会社員の男は、長期の療養でもある程度の収入を確保できる。

働けなくなったときの公的保障
保障対象中身
傷病手当金会社員(健康保険の被保険者)給与の約3分の2を、通算で最長1年6か月
障害年金一定の障害の状態になった人障害の程度と加入していた年金で額が決まる
労災保険仕事中・通勤中のけがや病気療養と休業の補償

一方、自営業やフリーランスの国民健康保険には、原則として傷病手当金がない。自営業の独身の男は、働けなくなったときの備えを、生活防衛資金を厚くするか、就業不能保険で用意する必要がある。

独身男が検討すべき保険

独身男が検討すべき保険
保険何に備えるか向いている男
就業不能保険病気やけがで長く働けないときの収入自営業、生活防衛資金が少ない会社員
火災保険住まいの火事、水漏れ全員(賃貸なら借家人賠償を含むもの)
個人賠償責任保険自転車事故などで他人にけがをさせたとき全員(火災保険やクレジットカードに付けられることも)

個人賠償責任保険は、保険料が安く、もしものときの賠償額が大きいので、入っておく価値が高い。自転車で歩行者に大けがをさせれば、数千万円の賠償を求められることもある。火災保険や自動車保険、クレジットカードの特約として付けられることが多いので、すでに入っていないかを確かめてから加入しろ。

就業不能保険は、生活防衛資金と傷病手当金で足りない人が検討する保険だ。会社員で、生活費の1年分以上の預金がある男なら、必要ないことも多い。

独身男に不要なことが多い保険

  • 高額の死亡保障:養う家族がいなければ、数千万円の死亡保障は要らないことが多い
  • 手厚すぎる医療保険:高額療養費制度と生活防衛資金で、多くの入院費はまかなえる
  • 貯蓄型の保険:保障と貯蓄を混ぜた保険は、手数料がわかりにくく、途中で解約すると元本割れすることがある。貯蓄は新NISAやiDeCoで
  • 重複した保障:会社の団体保険、クレジットカードの付帯保険と同じ保障に、別にお金を払っていないか

特に、若いころに勧められて入った保険は、一度見直す価値がある。結婚する前提で設計された保険、家族のための死亡保障、貯蓄型の保険。独身の男には合わないものが多い。

保険料は、積み上げると重い

保険料は、毎月の額は小さく見えても、積み上げると重い。月1万円の保険料を30年払えば、360万円だ。月5,000円でも180万円になる。

保険料の積み上げ(30年間)
月の保険料30年間の合計
3,000円108万円
5,000円180万円
10,000円360万円
15,000円540万円

必要のない保険に払っていた月1万円を、新NISAの積立に回せば、30年後には元本360万円が運用で育つ。年3%で運用できれば、約580万円になる計算だ。保険の見直しは、独身の男にとって、最も効果の大きい節約の一つだ。

生活防衛資金こそ、最強の保険だ

独身の男にとって、最強の保険は、生活防衛資金だ。生活費の半年〜1年分の預金があれば、

  • 入院中の差額ベッド代や食事代を払える
  • 傷病手当金が出るまでの間をしのげる
  • 失業しても、次の仕事を探す間の生活費になる
  • 家電の故障や急な出費にも対応できる

保険は、使い道が決まっている。医療保険は入院や手術のときだけ、死亡保険は死んだときだけ。生活防衛資金は、何にでも使える。そして、使わなければ、自分の資産として残る。保険料を払う前に、まず生活防衛資金を厚くしろ。

生命保険料控除のために入るな

「保険に入れば、生命保険料控除で税金が安くなる」と勧められることがある。確かに、生命保険料控除は、独身の男でも使える数少ない控除の一つだ。だが、控除で戻ってくる税金は、払った保険料のほんの一部だ。

所得税の生命保険料控除は、一般の生命保険、介護医療保険、個人年金保険のそれぞれで最大4万円、合計で最大12万円。所得税率10%の人なら、控除が4万円増えても、所得税は4,000円しか下がらない(住民税の控除は別に計算される)。4,000円の節税のために、年に数万円の保険料を払うのは本末転倒だ。控除が欲しいなら、掛金が全額所得控除になるiDeCoの方が、はるかに効く。

年代別の保険の考え方

独身男の年代別の保険の考え方
年代考え方
20〜30代生活防衛資金を作るのが先。保険は火災保険と個人賠償責任保険くらいで十分なことが多い
40代若いころの保険を見直す。不要な死亡保障を減らし、浮いた分を積立へ
50代持病が出る年代。解約する前に、新しい保険に入れるかを確かめる
60代以降預金で医療費と介護費用に備える。保険より、使える現金

保険の見直しの手順

  1. 今入っている保険を全部書き出す保険の種類、保障の中身、保険料、払込期間、解約返戻金。会社の団体保険やカードの付帯保険も。
  2. 公的保障を確かめる高額療養費制度、傷病手当金、障害年金。自分の場合にいくら出るか。
  3. 生活防衛資金を確かめる生活費の何か月分の預金があるか。
  4. 足りない部分だけ残す公的保障と預金で足りない部分だけを、保険で補う。
  5. 新しい保険に入ってから、古い保険を解約する順番を間違えると、無保険の期間ができる。持病がある場合は、新しい保険に入れないこともある。

受取人を、誰にするか

独身の男が死亡保障のある保険に入っていると、受取人の問題が出てくる。多くの保険では、受取人を親やきょうだいなどの親族にすることが多い。親が高齢になると、親が先に亡くなり、受取人がいなくなることもある。甥や姪、友人を受取人にできるかは、保険会社によって条件が違う。

受取人の選び方と、その注意点は、別の記事で詳しくまとめた。今入っている保険の受取人が誰になっているかだけは、今すぐ確かめておけ。

独身の保険と、既婚の保険

保険を絞った独身の男

  • 死亡保障は、葬儀と死後の手続きの分だけ預金で
  • 医療費は、高額療養費と生活防衛資金で
  • 火災保険と個人賠償責任保険だけは入る
  • 浮いた保険料を、新NISAとiDeCoに回す

家族を守る既婚の男

  • 家族のために、数千万円の死亡保障
  • 子供の学資保険、妻の医療保険
  • 保険料だけで、月に数万円が出ていく
  • その分、自分の老後の積立は減る

家族を守るための保険は、家族持ちの男にとって必要な出費だ。だが、独身の男が同じ保険に入る必要はない。守る家族がいないなら、守るべきは自分の生活と老後だ。保険料ではなく、自分の資産に金を回せ。

「独身でも保険くらい入っておけ」と言う奴へ

入っている。火災保険と個人賠償責任保険にはな。だが、俺が死んで3,000万円が出ても、それで生活を守られる家族はいない。医療費は高額療養費で上限があり、生活防衛資金は1年分ある。お前の言う「保険くらい」の月1万円を30年払えば360万円だ。俺はそれを、自分の老後に積み立てる。

まとめ:保険より、生活防衛資金

生命保険の死亡保障は、残された家族の生活を守るためのものだ。養う家族のいない独身の男には、大きな死亡保障は要らないことが多い。医療費は高額療養費制度で上限があり、年収約370万〜770万円の人なら、医療費100万円でも自己負担は約8万7千円だ。会社員なら、病気で働けないときは傷病手当金で給与の約3分の2が最長1年6か月出る。

独身の男が備えるべきは、死亡より長く働けないリスクだ。まず生活防衛資金を厚くし、火災保険と個人賠償責任保険を確保し、自営業や預金の少ない人は就業不能保険を検討しろ。若いころに入った保険を見直し、浮いた保険料を新NISAとiDeCoに回せ。高額療養費制度などの公的保障は見直しが進められているので、最新の情報を確認してほしい。保険の解約は、新しい保障を確保してから行え。

守る家族がいないなら、守るのは自分の生活と老後だ。末代で何が悪い。

よくある質問

独身に生命保険は必要?

養う家族がいなければ、大きな死亡保障は必要ないことが多い。死亡保障は、亡くなったあとに残された家族の生活を支えるためのものだからだ。葬儀や死後の手続きの費用が心配なら、預貯金や少額の保険で備えれば足りることが多い。

独身に医療保険は必要?

公的医療保険と高額療養費制度、生活防衛資金があれば、医療保険は最小限で済むことが多い。高額療養費制度では、年収約370万〜770万円の人なら、1か月の医療費が100万円でも自己負担は約8万7千円だ。ただし、差額ベッド代や食事代などは対象外なので、その分の預金は持っておきたい。

独身が備えるべきリスクは?

死亡より、病気やけがで長く働けなくなるリスクだ。独身の男は、働けなくなっても家族の収入に頼れない。会社員なら傷病手当金があるが、自営業にはない。生活防衛資金を厚めに持ち、必要なら就業不能保険を検討するといい。

独身男性が入っておくといい保険は?

人によるが、病気で長く働けないときの就業不能保険、住まいの火災保険(賃貸なら借家人賠償を含む)、他人にけがをさせたときの個人賠償責任保険などが候補になる。いずれも、自分の貯蓄や公的保障で足りない部分を補う考え方で選ぶ。

保険を見直すときの注意点は?

新しい保険に入ってから古い保険を解約すること、持病があると新しい保険に入れないことがあること、解約返戻金や特約の内容を確認することだ。若いころに勧められて入った保険をそのまま払い続けている独身の男は多いので、一度は見直す価値がある。

出典・参考資料

  1. 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  2. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
  3. 日本年金機構「障害年金」
  4. 国税庁「生命保険料控除」