おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとりさまの緊急連絡先。誰も頼れないときの解決策

23.4%相談相手がいない人で孤独を強く感じる割合(いる人は2.5%)
5つ倒れたときに見つけてもらう道具
2〜3人緊急連絡先として確保したい人数

賃貸の契約書、入院の申込書、施設の入居書類、職場の人事の書類。「緊急連絡先」の欄が、どこにでもある。おひとりさまの男は、そのたびにペンが止まる。親はもういない。きょうだいとは疎遠。友人に頼むのも気が引ける。誰の名前を書けばいいのか。

家族のいる男は、妻の名前を書いて終わりだ。だが、夫婦で一緒に事故にあったら? 妻が先に倒れたら? 妻の連絡先しか書いていない男は、妻がいなくなった瞬間に、誰にも連絡が届かない男になる。

この記事では、おひとりさまの緊急連絡先をどう決め、どう頼むかを整理する。そして、誰も頼れないときの解決策と、倒れたときに見つけてもらうための5つの道具をまとめた。緊急連絡先は、一人で生きる男の命綱だ。

この記事の結論

  1. 緊急連絡先は、一人に頼りきらず2〜3人を決めておけ
  2. 頼むときは、何をしてほしいのかをはっきり伝えろ
  3. 頼める人がいなければ、身元保証サービスや専門家、自治体の制度を使え
  4. 財布・スマホ・冷蔵庫に、連絡先と医療情報を置いておけ
  5. 緊急連絡先は、人とのつながりそのものだ。日ごろから育てておけ

緊急連絡先は、どこで求められるのか

緊急連絡先を求められる主な場面
場面何のために
賃貸住宅の契約家賃の滞納や、部屋で何かあったときの連絡
入院・手術容体の急変、手術の説明、退院の手続き
介護施設・高齢者住宅体調の変化、緊急時の対応、亡くなったときの連絡
職場事故や急病のとき
旅行・スポーツ・習い事事故やけがのとき

緊急連絡先は、何かあったときに、本人の代わりに連絡を受ける人だ。身元保証人と違い、費用の保証までは求められないことが多い。「連絡がついて、必要なら動いてくれる人」がいればいい。だからこそ、友人にも頼みやすい。

頼める人は、いるか

内閣府の孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)では、孤独を「しばしば・常に」感じる人の割合は、相談相手がいない人で23.4%、いる人で2.5%だった。

相談相手・気軽に話せる相手の有無と孤独感

Fig. 01
出典:内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)」主な属性別結果(孤独を「しばしば・常に」感じる人の割合、全年代・男女計)

相談相手がいる人と、いない人では、孤独感がまるで違う。そして、相談相手がいる人は、緊急連絡先も頼みやすい。緊急連絡先の問題は、日ごろの人とのつながりの問題でもある。頼める人がいないなら、まず頼める人を作るところから始めろ。

緊急連絡先は、誰に頼むか

緊急連絡先の候補
候補長所注意点
きょうだい家族として病院などに対応してもらいやすい高齢、遠方、疎遠だと動けない
甥・姪若い世代なので、長く頼める普段から付き合いがないと頼みにくい
友人近くに住んでいれば、すぐに動ける相手の負担。友人も年を取る
元同僚・趣味の仲間生活圏が近いことがある関係が切れると連絡がつかない
身元保証サービス・専門家契約で確実に引き受けてもらえる費用がかかる。事業者を選ぶ必要がある

大事なのは、一人に頼りきらないことだ。一人だけだと、その人が旅行中、入院中、亡くなっていた、ということがある。2〜3人を決めておけば、誰か一人には連絡がつく。たとえば、近くに住む友人と、遠くのきょうだいと、甥。それぞれの役割を決めておけば、相手の負担も軽くなる。

緊急連絡先の頼み方

  1. 何をしてほしいかを、はっきり伝える「連絡を受けるだけでいい」のか、「病院に来てほしい」のか。費用の保証は頼まないことを伝えると、引き受けてもらいやすい。
  2. 相手の負担にならない範囲にする「何かあったら、〇〇に連絡してほしい」と、次の連絡先を伝えておくだけでもいい。
  3. お互いに引き受け合う友人なら、「お前の緊急連絡先も、俺が引き受ける」と言えば、頼みやすい。
  4. 情報を渡しておく自分のかかりつけ医、持病、服薬、保険証の場所、身元保証や任意後見の契約先。
  5. 連絡先が変わったら知らせ合う年に一度、誕生日や年賀状のタイミングで確かめ合う。

友人に頼むのは、気が引けるかもしれない。だが、お互いに引き受け合えば、それは「借り」ではなく「支え合い」だ。同じように一人で暮らす友人なら、相手も同じ不安を持っている。「お互いの緊急連絡先になろう」。その一言が、二人の老後の安心になる。

誰も頼れないときの解決策

親族も、友人も、頼める人がいない。そういうおひとりさまにも、解決策はある。

  • 身元保証サービス:緊急連絡先の受託をサービスに含む事業者がある。国の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」も、緊急連絡先の受託をサービスの一つとして挙げている
  • 任意後見人・死後事務の受任者:弁護士や司法書士などと契約していれば、緊急連絡先を頼めることがある
  • 自治体の終活情報の登録制度:一部の自治体では、緊急連絡先、かかりつけ医、遺言の保管場所、お墓の所在などを登録し、本人が倒れたときや亡くなったときに、病院や警察などに伝える事業を行っている
  • 地域包括支援センター:高齢者の困りごとの相談窓口。緊急連絡先の悩みも相談できる

身元保証サービスに頼むなら、費用と、預託金の管理方法を必ず確かめろ。国のガイドラインは、預託金を事業者の財産と分けて管理することなどを示している。

倒れたときに見つけてもらう5つの道具

緊急連絡先を決めても、倒れたときに、その情報が見つからなければ意味がない。救急隊や病院、警察が、すぐに連絡先と医療情報にたどり着けるようにしておけ。

倒れたときに見つけてもらう5つの道具
道具中身置き場所
1. 緊急連絡カード緊急連絡先、かかりつけ医、持病、服薬、アレルギー、血液型財布(保険証の近く)
2. スマホの緊急情報ロック画面から見られる緊急連絡先と医療情報スマホのヘルスケアアプリなど
3. 救急医療情報キットかかりつけ医、持病、服薬、緊急連絡先を書いた紙を容器に入れたもの冷蔵庫(玄関や冷蔵庫に目印のシール)
4. 自治体の登録緊急連絡先や終活の情報を自治体に登録自治体(制度がある地域)
5. エンディングノート契約先、財産、保険、希望をまとめたもの家のわかりやすい場所。場所を緊急連絡先に伝える

救急医療情報キットは、多くの自治体が高齢者などに配っている。救急隊が駆けつけたとき、冷蔵庫を開ければ情報がわかるようにする仕組みだ。冷蔵庫は、どの家にもあり、場所がわかりやすいからだ。住んでいる自治体に、配布しているか問い合わせてみろ。

スマホの緊急情報も、今すぐできる。スマホの多くには、ロックを解除しなくても、救急隊などが緊急連絡先と医療情報を見られる機能がある。今日、5分で設定しておけ。

緊急連絡先は、年に一度見直せ

緊急連絡先は、一度決めたら終わりではない。頼んだ友人が引っ越す、電話番号が変わる、きょうだいが病気になる、甥が転勤で遠くに行く。何年もたつうちに、書いてある連絡先に、誰もつながらなくなることがある。

誕生日や年末など、年に一度の見直しの日を決めておけ。財布のカード、スマホの登録、冷蔵庫のキット、賃貸や職場に届けている連絡先。全部を同じ日に確かめ、変わったところを書き直す。頼んでいる人にも、ついでに近況を聞いてみろ。連絡先が生きているかどうかを確かめることは、つながりが生きているかどうかを確かめることでもある。

外出先で倒れたときのために

家の中だけでなく、外出先で倒れることもある。駅、道、店、旅先。そのとき、身元がわかるものと、連絡先がわかるものを持っていないと、誰にも連絡が届かない。

  • 財布に緊急連絡カードを入れる:保険証やマイナンバーカードの近くに
  • スマホの緊急情報を設定する:ロック画面から見られるように
  • 一人旅のときは、行き先を伝えておく:緊急連絡先の人に、旅程を送っておく
  • 持病がある人は、お薬手帳を持ち歩く:スマホのお薬手帳アプリでもいい

見守りの仕組みと組み合わせる

緊急連絡先は、誰かが異変に気づいたときに、連絡を受ける人だ。だが、一人暮らしの部屋で倒れたら、そもそも誰も異変に気づかない。だから、見守りの仕組みと組み合わせる必要がある。

  • 安否確認アプリ:毎日応答し、応答がなければ緊急連絡先に通知が行く
  • 電気・ガス・水道の見守り:使用量の異常で通知
  • 友人との定期連絡:毎朝のメッセージ、週に一度の電話

見守りの仕組みで異変に気づき、緊急連絡先に連絡が届き、緊急連絡先の人が動く。この流れが一本につながって、初めて安心できる。

緊急連絡先の人に渡しておく情報

緊急連絡先を引き受けてもらったら、いざというときに動けるだけの情報を渡しておけ。連絡が来ても、何も知らなければ、相手は何もできない。

緊急連絡先の人に渡しておく情報
情報使われる場面
住所と、部屋の鍵の預け先部屋で倒れたとき、管理会社や警察と一緒に入る
かかりつけ医と持病・服薬救急搬送や入院のとき、病院に伝える
健康保険証などの保管場所入院の手続き
勤め先の連絡先長く休むことになったとき
身元保証・任意後見・死後事務の契約先手続きを契約先に引き継ぐ
ほかの緊急連絡先役割を分け合う

全部を紙に書いて渡す必要はない。エンディングノートにまとめ、その置き場所を伝えておくだけでもいい。大事なのは、緊急連絡先の人が「次に誰に連絡し、どこを見ればいいか」をわかっていることだ。

頼まれる側にもなれ

緊急連絡先は、頼むだけのものではない。友人や後輩から頼まれたら、引き受けてやれ。一人で暮らす友人の緊急連絡先になることは、その友人の命綱になることだ。そして、引き受け合った関係は、お互いの安否を気にかける関係になる。

週に一度、短いメッセージを送り合う。返事がなければ電話してみる。それだけで、二人とも孤独死の危険から遠ざかる。頼むことと、頼まれること。その両方が、おひとりさまの老後のつながりを作る。

今日やること

  1. 緊急連絡先の候補を3人書き出す親族、友人、元同僚。思い浮かばなければ、身元保証サービスや専門家も候補に。
  2. そのうち一人に連絡する「緊急連絡先になってほしい。お前のも引き受ける」と頼む。
  3. スマホの緊急情報を設定する緊急連絡先と、持病・服薬を登録する。
  4. 財布に緊急連絡カードを入れる名刺大の紙でいい。
  5. 自治体に救急医療情報キットと終活の登録制度を問い合わせる住んでいる自治体のサイトか窓口で。

この5つは、どれも今日できる。特に、スマホの設定と財布のカードは、10分もかからない。それだけで、外で倒れたときに連絡が届く可能性が大きく上がる。

緊急連絡先に備えるおひとりさまと、妻だけに頼る既婚

備えるおひとりさま

  • 緊急連絡先を、友人・きょうだい・甥の3人に頼んである
  • 友人とは、お互いの緊急連絡先を引き受け合った
  • 財布とスマホと冷蔵庫に、連絡先と医療情報がある
  • 見守りの仕組みと、一本につながっている

妻だけに頼る既婚の男

  • 緊急連絡先は、どの書類も妻の名前だけ
  • 夫婦で一緒に事故にあったら、連絡が届かない
  • 妻が先に亡くなったら、緊急連絡先がいなくなる
  • 妻以外の連絡先を、考えたこともない

緊急連絡先を一人に頼りきるのは、家族がいても危うい。おひとりさまは、最初から複数の人と仕組みを組み合わせる。それは、一人に頼るより、ずっと強い備えだ。

「独身は緊急連絡先もいなくて困るだろう」と言う奴へ

俺の緊急連絡先は3人いて、財布とスマホと冷蔵庫に情報が入っている。友人とはお互いに引き受け合った。お前の緊急連絡先は、妻一人だけだろう? 夫婦で同じ車に乗っていて事故にあったら、誰に連絡が行く?

まとめ:緊急連絡先は、複数の人と仕組みで

おひとりさまは、賃貸、入院、施設、職場など、あらゆる場面で緊急連絡先を求められる。相談相手がいない人のうち孤独を強く感じる人は23.4%で、緊急連絡先の問題は、日ごろの人とのつながりの問題でもある。

緊急連絡先は、一人に頼りきらず2〜3人を決め、何をしてほしいかをはっきり伝えて頼め。友人とはお互いに引き受け合え。頼める人がいなければ、身元保証サービス、任意後見や死後事務の受任者、自治体の終活情報の登録制度、地域包括支援センターを使え。そして、財布の緊急連絡カード、スマホの緊急情報、冷蔵庫の救急医療情報キットで、倒れたときに見つけてもらえるようにしておけ。自治体の制度の有無や中身は地域によって違うので、住んでいる自治体に確認してほしい。

緊急連絡先は、一人で生きる男の命綱だ。末代で何が悪い。

よくある質問

緊急連絡先は誰にすればいい?

連絡がつきやすく、何かあったときに動いてくれる人がいい。きょうだいや甥・姪などの親族、長く付き合いのある友人、元同僚などだ。一人に頼りきらず、2〜3人を決めておくと、一人と連絡がつかなくても安心だ。

緊急連絡先を頼める人がいないときは?

身元保証サービスの事業者に緊急連絡先を引き受けてもらう、任意後見や死後事務を頼んだ専門家に頼む、自治体の終活情報の登録制度を使う、などの方法がある。地域包括支援センターに相談するのもいい。

友人に緊急連絡先を頼むときの注意は?

何を頼みたいのか(連絡を受けるだけか、病院に来てほしいのか、費用の保証までか)をはっきり伝えること、相手の負担にならない範囲にすること、お互いに引き受け合うこと、住所や連絡先が変わったら知らせ合うことだ。

倒れたとき、緊急連絡先を見つけてもらうには?

財布に緊急連絡先と持病・服薬のカードを入れる、スマホのロック画面やヘルスケアアプリに緊急連絡先と医療情報を登録する、自治体が配る救急医療情報キットを冷蔵庫に入れておく、などの方法がある。

救急医療情報キットとは?

かかりつけ医、持病、服薬、緊急連絡先などを書いた紙を容器に入れ、冷蔵庫に保管しておくものだ。救急隊が駆けつけたときに、冷蔵庫を見れば情報がわかるようにする。多くの自治体が、高齢者などに配布している。

出典・参考資料

  1. 内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)」
  2. 内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(2024年6月)
  3. 各自治体の救急医療情報キット、終活情報登録事業の案内