おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとりさまのエンディングノートの書き方

12項目おひとりさまのエンディングノートに書くこと
59.7%2050年の男性高齢単独世帯に占める未婚者(推計)
1年に1回ノートを見直すタイミング(誕生日など)

ある日、あなたが倒れたとする。病院に運ばれ、意識がない。誰が、あなたのかかりつけ医を知っているか。誰が、どの銀行に口座があるかを知っているか。あなたが延命治療を望んでいたか、どんな葬儀を望んでいたか。家族のいないおひとりさまの場合、それを知っている人は、誰もいない。

家族のいる男は、「家族がわかっているから」とノートを書かない。だが、家族も、夫の口座がどこにあるか、どのサブスクを解約すればいいか、ネット証券の存在すら知らないことが多い。何も書き残さなかった男の後始末で、家族は何か月も走り回る。

おひとりさまのエンディングノートは、もしものときに誰かが代わりに動くための地図だ。この記事では、おひとりさまが書くべき12項目、書き方のコツ、保管と伝え方、見直しのタイミングをまとめた。地図がなければ、誰も動けない。

この記事の結論

  1. エンディングノートは、代わりに動く人のための地図だ
  2. 財産の行き先は遺言で、それ以外の情報と希望はノートで
  3. おひとりさまが書くべきは12項目。書けるところから埋めろ
  4. パスワードそのものは書くな。保管場所や確認方法を書け
  5. 置き場所を、頼んだ人に伝えろ。誰も知らないノートは、ないのと同じだ

なぜ、おひとりさまにこそ必要なのか

家族のいる人のエンディングノートは、家族が知らないことを補うものだ。おひとりさまのエンディングノートは、誰も何も知らない状態を、ゼロから埋めるものだ。

国立社会保障・人口問題研究所の推計(2024年)では、男性の高齢単独世帯に占める未婚者の割合は、2020年の33.7%から2050年には59.7%になる。

高齢単独世帯に占める未婚者の割合の推計

Fig. 01
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」

配偶者も子もいない一人暮らしの高齢者が、これから急増する。そういう人が倒れたり亡くなったりしたとき、病院も、警察も、自治体も、後見人も、死後事務を頼まれた人も、本人の情報を知らない。エンディングノートは、その人たちが最初に開く地図になる。

エンディングノートと遺言の違い

エンディングノートと遺言の違い
項目エンディングノート遺言
法的な効力なしあり(形式を満たせば)
書き方自由決められた形式(公正証書遺言、自筆証書遺言など)
書くこと情報(財産、連絡先、契約先)と希望(医療、葬儀)財産の行き先、遺言執行者の指定など
使われるとき倒れたとき、判断能力が落ちたとき、亡くなったとき亡くなったとき

大事なのは、財産の行き先は遺言で決めることだ。エンディングノートに「この預金は甥に」と書いても、法的な効力はない。財産の行き先は遺言で決め、エンディングノートには「遺言は公証役場にある」と書いておく。役割を分けて、両方そろえろ。

おひとりさまが書くべき12項目

おひとりさまのエンディングノートに書く12項目
分野項目使われる場面
お金1. 財産の一覧(口座、証券、保険、年金、不動産、借金)後見、相続、死後の手続き
2. デジタルの一覧(ネット銀行・証券、サブスク、SNS)解約、相続
3. 毎月の支払い(家賃、公共料金、カード、保険料)支払いの継続と解約
医療・介護4. かかりつけ医、持病、服薬、アレルギー救急搬送、入院
5. 介護の希望(在宅か施設か、入りたい施設)介護が必要になったとき
6. 延命治療の希望意思を伝えられないとき
人と契約7. 緊急連絡先と、連絡してほしい人の一覧倒れたとき、亡くなったとき
8. 契約先(任意後見、死後事務、身元保証、見守り)手続きの引き継ぎ
9. 遺言の有無と保管場所亡くなったとき
死後と暮らし10. 葬儀と納骨の希望亡くなったとき
11. 住まいと物の扱い(持ち家、賃貸、残したい物)片づけ、売却
12. ペット、趣味の道具、伝えたいこと亡くなったとき

12項目を一度に全部書く必要はない。まずは、7の緊急連絡先と、4の医療の情報から書け。倒れたときに、最初に必要になる情報だからだ。次に、1の財産と2のデジタル。そして、契約や葬儀の準備が進んだら、8から10を書き足していく。

お金の書き方:場所だけ書け

財産の一覧は、「どこに何があるか」だけを書けばいい。

  • 銀行:金融機関名、支店名、口座の種類。口座番号は下数桁だけでもいい
  • 証券:証券会社名、ネット証券ならその旨
  • 保険:保険会社名、保険の種類、受取人
  • 年金:基礎年金番号の保管場所
  • 不動産:所在地、権利証や登記の書類の保管場所
  • 借金・ローン:借入先、残高の目安

暗証番号やパスワードは、ノートに書くな。ノートが盗まれたり、悪意のある人の目に触れたりしたら、財産が危うくなる。「通帳と印鑑は〇〇にある」「パスワードは△△で管理している」と、保管場所や確認方法だけを書け。暗証番号が必要なものは、任意後見人や死後事務を頼む人と、別の方法で共有を考えろ。

デジタルの書き方:存在を知らせろ

おひとりさまのノートで、いちばん大事で、いちばん抜けやすいのがデジタルだ。ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネー、サブスク。通帳も郵便物もないので、ノートに書いていなければ、誰も存在に気づかない。

  • お金のあるサービス:ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネー、ポイント
  • 毎月払っているサービス:動画、音楽、クラウド、アプリ、ジム
  • スマホとパソコン:中身をどうしてほしいか(消去してほしい、写真は残したいなど)
  • SNSとメール:亡くなったことを知らせてほしいか、アカウントをどうしてほしいか

特にサブスクは、解約されないまま、口座から引き落とされ続けることがある。カードの明細を見ながら、毎月払っているものを全部書き出せ。そして、使っていないものは、ノートに書く前に今解約しろ。

医療と介護の書き方:自分の言葉で

医療と介護の希望は、自分が意思を伝えられなくなったときに使われる。だからこそ、自分の言葉で、具体的に書け。

  • 介護:「できるだけ自宅で暮らしたい」「一人の時間が過ごせる個室の施設がいい」「予算は月〇万円まで」
  • 延命治療:「回復の見込みがないなら、延命治療は望まない」など。医師や頼んだ人とも話しておく
  • 告知:病名や余命を知りたいか
  • 暮らしの楽しみ:「好きな音楽を流してほしい」「この店の食事を届けてほしい」

延命治療の希望は、ノートに書くだけでなく、かかりつけ医や、任意後見人、緊急連絡先の人と話しておけ。人生の最終段階の医療について、前もって話し合っておく取り組みは、「人生会議」とも呼ばれている。

連絡先と契約先:誰が何をするかを書け

おひとりさまのノートで、家族のいる人と最も違うのがここだ。家族の代わりに動く人と、その役割を書く。

連絡先と契約先の書き方の例
役割書くこと
緊急連絡先名前、関係、電話番号。2〜3人
亡くなったら知らせてほしい人友人、元同僚、趣味の仲間の名前と連絡先
任意後見人名前、連絡先、契約書の保管場所
死後事務を頼んだ人・事業者名前、連絡先、契約書の保管場所
身元保証・見守りの事業者事業者名、連絡先、契約の内容
遺言公正証書遺言なら公証役場、自筆なら法務局の保管か自宅のどこか。遺言執行者

これを書いておけば、最初にノートを開いた人が、次に誰に連絡すればいいかがわかる。病院の職員でも、警察でも、家主でも、ノートから任意後見人や死後事務の担当者にたどり着ける。

葬儀と納骨:決めたことを書け

  • 葬儀の形:一般葬、家族葬、火葬のみなど。宗教・宗派の有無
  • 生前契約:葬儀社と契約しているなら、その連絡先と契約の内容
  • 納骨先:先祖の墓、永代供養墓、樹木葬、散骨など
  • 遺影に使いたい写真:あれば保管場所を
  • 費用:どこから払うか(死後事務の預託金、預金など)

ノートは、何を使えばいいか

エンディングノートには、決まった形はない。市販のノート、自治体が配るノート、普通の大学ノート、パソコンのファイル。どれでもいい。

  • 自治体のノート:無料で、地域の相談窓口の情報も載っている。まず手に取るならこれ
  • 市販のノート:項目が細かく、書き漏れを防げる
  • 大学ノートやファイル:自分に必要な項目だけ、自由に書ける
  • パソコンやスマホ:更新しやすいが、ロックを解除できないと誰も見られない。紙と併用する

おすすめは、紙を基本にすることだ。パソコンやスマホのファイルは、本人が亡くなるとロックが解除できず、誰も見られないことがある。紙のノートに書き、必要ならパソコンの一覧の場所もノートに書いておく。

エンディングノートの準備度チェック

自分のノートがどこまでできているか、書けている項目にチェックしてみろ。

エンディングノート準備度チェック ノートに書けている項目にチェック。お金・医療介護・人と契約・死後の4つの軸×3項目
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保管と伝え方:誰も知らないノートは、ないのと同じ

ノートを書いても、誰も置き場所を知らなければ、見つけてもらえない。

  1. わかりやすい場所に置く机の引き出し、本棚の決まった場所。隠しすぎない。
  2. 置き場所を伝える緊急連絡先、任意後見人、死後事務を頼んだ人に。
  3. 自治体の登録を使う終活情報の登録制度があれば、ノートの保管場所を登録する。
  4. 財布やスマホにメモを入れる「エンディングノートは自宅の〇〇にあります」。
  5. コピーを預ける信頼できる人に、一部の写しを預けておく方法もある(財産の情報は慎重に)。

年に一度、見直せ

エンディングノートは、一度書いたら終わりではない。口座が変わる、サブスクが増える、緊急連絡先の人が引っ越す、希望が変わる。年に一度、誕生日などに見直すと決めておけ。

見直すたびに、自分の暮らしの棚卸しにもなる。使っていない口座やサブスクに気づき、会っていない友人を思い出し、やりたいことが見えてくる。ノートを書くことは、残りの人生をどう生きるかを考えることでもある。

地図を残すおひとりさまと、何も残さない男

地図を残すおひとりさま

  • 財産とデジタルの一覧が、ノートにある
  • 介護と延命治療の希望を、自分の言葉で書いた
  • 任意後見人と死後事務の担当者に、置き場所を伝えた
  • 倒れても、亡くなっても、誰かがすぐに動ける

「家族がわかっている」と書かない男

  • 家族は、ネット証券の存在すら知らない
  • どのサブスクを解約すればいいか、誰もわからない
  • 延命治療の希望を、誰にも伝えていない
  • 後始末で、家族が何か月も走り回る

エンディングノートは、家族がいてもいなくても必要だ。だが、家族のいる人は「家族がわかっている」と書かない。おひとりさまは、書かなければ誰も何も知らないと知っている。だからこそ、家族のいる人より、ずっと役に立つ地図を残せる。

「独身がエンディングノートなんて、誰が読むんだ」と言う奴へ

読むのは、俺が倒れたときに動く人だ。病院の職員、任意後見人、死後事務の担当者。俺のノートには、口座もサブスクも、介護の希望も、葬儀の形も書いてある。お前の家族は、お前のネット証券のパスワードの場所を知っているか? 誰も読まないノートより、誰も知らない財産の方が問題だ。

まとめ:エンディングノートは、代わりに動く人の地図だ

エンディングノートは、もしものときに、誰かが代わりに動くための地図だ。家族のいないおひとりさまは、ノートに書いていなければ、誰も何も知らない。男性の高齢単独世帯に占める未婚者は、2050年には59.7%になると推計されている。

財産の行き先は遺言で決め、それ以外の情報と希望をノートに書け。お金(財産、デジタル、毎月の支払い)、医療・介護(かかりつけ医、介護と延命治療の希望)、人と契約(緊急連絡先、契約先、遺言の場所)、死後(葬儀と納骨、知らせてほしい人、住まいと物)の12項目を、書けるところから埋めろ。パスワードそのものは書くな。置き場所を頼んだ人に伝え、年に一度見直せ。延命治療の希望などは、ノートに書くだけでなく、医師や頼んだ人とも話しておいてほしい。

地図を残せ。誰かが迷わずに動けるように。末代で何が悪い。

よくある質問

エンディングノートとは?

もしものとき(病気、判断能力の低下、死亡)に備えて、自分の情報や希望を書き留めておくノートだ。法的な効力はないが、代わりに動く人が、財産、連絡先、契約先、医療や葬儀の希望を知るための手がかりになる。

エンディングノートと遺言の違いは?

遺言は、財産の行き先などを法的に決める書類で、決められた形式で作る必要がある。エンディングノートには法的な効力はなく、自由に書ける。財産の行き先は遺言で決め、それ以外の情報や希望はエンディングノートに書く、と使い分けるといい。

おひとりさまはエンディングノートに何を書けばいい?

財産の一覧、デジタルの一覧、緊急連絡先と連絡してほしい人、かかりつけ医と持病、介護と延命治療の希望、契約先(任意後見・死後事務・身元保証)、遺言の有無と保管場所、葬儀と納骨の希望、ペット、住まいと物の扱い、などだ。

エンディングノートはどこに保管すればいい?

自宅のわかりやすい場所に置き、その場所を緊急連絡先や任意後見人、死後事務を頼んだ人に伝えておく。自治体の終活情報の登録制度があれば、保管場所を登録しておくのもいい。暗証番号やパスワードそのものは書かない方が安全だ。

エンディングノートはいつ書けばいい?

思い立ったときが書きどきだ。おひとりさまなら50代から書き始め、年に1回、誕生日などに見直すといい。一度に全部書こうとせず、書けるところから少しずつ埋めていけばいい。

出典・参考資料

  1. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」
  2. 厚生労働省「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」
  3. 法務省「自筆証書遺言書保管制度」、日本公証人連合会「公正証書遺言」
  4. 各自治体のエンディングノート、終活情報登録の案内