おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとりさまの終活ガイド。50代から始める段取り

1,605,298人2024年の死亡数(過去最多)
3段階50代で見える化、60代で契約、70代で更新
10項目おひとりさまの終活でやること

「終活」という言葉に、まだ早いと感じるかもしれない。だが、おひとりさまの男にとって、終活は死ぬための準備ではない。残りの人生を、誰にも迷惑をかけず、自分の思うように生き切るための準備だ。

家族のいる男は、「死んだあとのことは家族がやる」と何もしない。そして、家族は、どの口座にいくらあるのかも、どのサブスクを解約すればいいのかも、葬儀をどうしてほしかったのかもわからず、途方に暮れる。終活をしない男の後始末は、残された人の仕事になる。

おひとりさまは、後始末を頼める家族がいない。だから、自分で段取りをつけるしかない。この記事では、おひとりさまの終活を、50代で見える化、60代で契約、70代で更新という3つの段階に分け、年代別に何をいつやるかをまとめた。

この記事の結論

  1. おひとりさまの終活は、家族が担うことを自分で用意する作業だ
  2. 50代で見える化:財産、デジタル、物、人間関係を一覧にする
  3. 60代で契約:遺言、任意後見、死後事務、身元保証、お墓
  4. 70代で更新:住まいを移り、契約と一覧を見直す
  5. 判断能力があるうちにしか結べない契約がある。先送りするな

亡くなる人は、過去最多になっている

厚生労働省の人口動態統計によると、2024年に亡くなった人は160万5,298人で、過去最多だった。2000年には約96万人だったから、約1.7倍に増えた。日本は、毎年たくさんの人が亡くなる多死社会に入っている。

死亡数の推移

Fig. 01
出典:厚生労働省「人口動態統計」

そして、亡くなる人の中で、一人で暮らしていた人、身寄りの少ない人は増えている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、男性の高齢単独世帯に占める未婚者の割合は、2020年の33.7%から2050年には59.7%になる。家族に後始末を任せられない人が、これからますます増える。だからこそ、終活は、おひとりさまの必修科目だ。

おひとりさまの終活でやること

おひとりさまの終活でやること10項目
項目中身目安の時期
1. 財産の一覧口座、証券、保険、年金、不動産、借金50代
2. デジタルの整理スマホ、パソコン、ネットのアカウント、サブスク、ネット証券50代
3. 物の整理使わない物を減らし、残す物を決める50代〜
4. 人間関係の整理緊急連絡先、頼める人、連絡してほしい人の一覧50代
5. エンディングノート1〜4と、医療・介護・葬儀の希望をまとめる50代〜
6. 遺言財産の行き先を決める。公正証書遺言がおすすめ60代前半
7. 任意後見と見守り判断能力が落ちたときの財産管理と契約60代
8. 死後事務委任葬儀、片づけ、役所の手続き、各種の解約60代
9. 葬儀とお墓葬儀の形、納骨先、永代供養など60代
10. 住まい終の住まいへの移行、持ち家の行き先60代前半〜70代

10項目を一度にやる必要はない。50代で1〜5を、60代で6〜9を、60代前半から70代で10を。そして毎年、誕生日に見直す。それが、おひとりさまの終活の段取りだ。

50代:見える化の10年

50代の終活は、見える化だ。自分が何を持っていて、誰とつながっていて、何を頼まなければならないのかを、一覧にする。

  1. 財産の一覧を作る銀行、証券、保険、年金、不動産、ローン。金融機関名、支店、種類だけでいい(暗証番号は書かない)。
  2. 使っていない口座を解約する口座が多いほど、残された人の手続きが増える。2〜3口座にまとめる。
  3. デジタルの一覧を作るスマホのロック、ネット証券、ネット銀行、サブスク、SNS。どこに何があるかを書き出す。
  4. 物を減らし始める体力のある50代のうちに、使わない物を処分する。
  5. 人間関係の一覧を作る緊急連絡先、何かあったら連絡してほしい人、頼める人。

特にデジタルは、おひとりさまの終活の盲点だ。ネット銀行やネット証券は、通帳も郵便物もないので、本人が亡くなると、誰も存在に気づかないことがある。サブスクは、解約されないまま、口座から引き落とされ続ける。どこに何があるかを、一覧にしておけ。

デジタルの整理の進め方

  • お金に関わるものから一覧にする:ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネー、ポイント
  • 毎月お金が出ていくものを洗い出す:動画、音楽、クラウド、アプリの課金。カードの明細で確かめる
  • 使っていないサービスは今解約する:残された人が解約するより、今やる方がずっと簡単だ
  • スマホとパソコンの扱いを決める:中身を消してほしいのか、残してほしいのか。死後事務を頼む人に伝える
  • パスワードの扱いに注意する:エンディングノートには、パスワードそのものではなく、保管場所や確認方法を書く

物の整理は、体力のあるうちに

物の整理は、体力と気力が要る。70代、80代になってからでは、重い物を運ぶことも、大量の物を仕分けることも難しくなる。50代から少しずつ始めろ。

コツは、一度に全部やろうとしないことだ。月に一度、引き出し一つ、棚一つと決めて、使っていない物を手放していく。1年使わなかった物は、これからも使わないと考えていい。物が減れば、暮らしやすくなり、住み替えも楽になり、最後に片づけを頼む人の負担も、費用も小さくなる。残したい物、誰かに譲りたい物は、エンディングノートに書いておけ。思い出の品をどうするかも、自分で決めておくのがいちばんだ。他人には、何が大事な物か分からないからだ。

エンディングノートにまとめる

50代で見える化した情報は、エンディングノートにまとめておけ。エンディングノートには法的な効力はないが、もしものときに、頼んだ人が動くための地図になる。

  • 財産の一覧(口座、証券、保険、不動産)
  • デジタルの一覧(アカウント、サブスク)
  • 緊急連絡先と、連絡してほしい人
  • かかりつけ医、持病、服薬
  • 介護や延命治療の希望
  • 葬儀、お墓、供養の希望
  • 契約先(任意後見、死後事務、身元保証)と遺言の保管場所

書いたら、置き場所を信頼できる人に伝えておく。どこにあるか誰も知らないエンディングノートは、ないのと同じだ。

60代:契約の10年

60代の終活は、契約だ。50代で見える化した「頼まなければならないこと」を、契約と書類で、確実に頼める形にする。

60代で結ぶ主な契約・書類
契約・書類何を頼むか作り方
遺言財産の行き先公正証書遺言、または自筆証書遺言の法務局保管制度
任意後見契約判断能力が落ちたときの財産管理と契約公正証書
見守り・財産管理等委任契約判断能力の変化に気づく、体が弱ったときの手続き任意後見と一緒に結ぶことが多い
死後事務委任契約葬儀、片づけ、役所の手続き、解約専門家や事業者と契約。公正証書にすることも
身元保証入院・施設入居の保証人、緊急連絡先親族に頼むか、身元保証サービス

これらの契約は、判断能力があるうちにしか結べない。認知症の高齢者は2040年に584.2万人と推計されている。「まだ早い」と先送りしているうちに、結べなくなる。60代のうちに、少なくとも遺言と任意後見は済ませろ。

誰に頼むかを決めろ

おひとりさまの終活の最大の難関は、誰に頼むかだ。

  • 甥・姪などの親族:本人をよく知っている。だが、相手の負担と、相手との関係を考える
  • 信頼できる友人:だが、同じように年を取る
  • 弁護士・司法書士などの専門家:手続きに詳しく、長く頼める。報酬がかかる
  • 身元保証や死後事務の事業者:まとめて頼める。費用と預託金の管理を確かめる

おすすめは、任意後見・死後事務・遺言の執行を、同じ信頼できる人か専門家にまとめて頼むことだ。窓口が一つなら、元気なうちから亡くなったあとまで、引き継ぎに漏れがない。親族には「何かあったら連絡が行く」とだけ伝えておくのも、相手の負担を減らす方法だ。

葬儀とお墓を決める

葬儀とお墓も、60代のうちに決めておけ。家族がいれば家族が決めるが、おひとりさまは、決めておかないと誰も決められない。

  • 葬儀の形:一般的な葬儀、家族葬、火葬のみ(直葬)など
  • 誰に知らせるか:亡くなったことを知らせてほしい人の一覧
  • 納骨先:先祖の墓に入るのか、永代供養墓、樹木葬、散骨か
  • 費用:葬儀とお墓の費用を、死後事務の預託金などで用意しておく

先祖の墓がある場合、自分が最後の継承者なら、墓をどうするかも考えておけ。墓じまいをして永代供養に移す、という選択もある。

70代:更新と移行の10年

70代の終活は、更新と移行だ。

  1. 住まいを移るまだなら、病院とスーパーに近く、暮らしやすい住まいへ。介護が必要になったときの移り先も決めておく。
  2. 契約を見直す頼んだ人が元気か、事業者は続いているか。必要なら契約を変える。
  3. 一覧を更新する財産、デジタル、連絡先。変わったところを書き直す。
  4. 物をさらに減らす残す物を絞り、片づけの負担を減らす。
  5. 見守りを厚くするアプリに加えて、電気・ガスの見守り、訪問、自治体の見守り事業。

70代になると、頼んだ人も年を取っている。親族や友人に頼んでいた場合、相手が先に病気になることもある。年に一度、頼んだ人が今も頼める状態かを確かめろ。

終活にかかる費用

終活には、まとまった費用がかかる。遺言の作成、任意後見や死後事務の契約、身元保証、葬儀とお墓、遺品整理。内容によって大きく変わるが、合計で数百万円になることもある。当サイトの老後資金のシミュレーションでは、介護・身元保証・死後事務の予備費として800万円程度を見ている。

この費用は、老後の生活費とは別枠で用意しておけ。生活費の取り崩しに使ってしまうと、いざというときに、死後事務や葬儀の費用が足りなくなる。

終活で気をつけること

  • 判断能力があるうちに契約を済ませる:先送りが最大の敵
  • 一人で決めない:大きな契約の前に、地域包括支援センターや専門家に相談する
  • 前払い金・預託金の管理を確かめる:事業者の財産と分けて管理されているか
  • 寄付や遺贈を条件にする契約を避ける:国のガイドラインも、避けることが重要だとしている
  • 作った書類と契約先を伝える:誰も知らなければ、意味がない

終活は、生き切るための準備だ

終活というと、暗い話に聞こえるかもしれない。だが、終活を済ませたおひとりさまは、驚くほど身軽になる。財産は把握できていて、もしものときに動いてくれる人がいて、死んだあとの始末も決まっている。「自分に何かあったら」という不安から解放される。

そうなれば、残りの人生を、全部自分のために使える。旅に出て、うまいものを食べ、趣味に打ち込む。終活は、死ぬための準備ではなく、生き切るための準備だ。

終活の段取りをつけるおひとりさまと、丸投げの既婚

段取りをつけるおひとりさま

  • 50代で、財産とデジタルの一覧を作った
  • 60代で、遺言・任意後見・死後事務を契約した
  • 葬儀と納骨先も、自分で決めてある
  • 不安から解放されて、残りの人生を楽しんでいる

「家族がやる」と丸投げする既婚の男

  • どの口座にいくらあるか、家族は知らない
  • ネット証券とサブスクは、誰も気づかない
  • 葬儀の希望も、誰にも伝えていない
  • 後始末は、全部残された家族の仕事になる

終活をしない男の後始末は、誰かの仕事になる。家族がいれば家族の、いなければ自治体や家主の。おひとりさまは、自分の後始末を、自分で段取りする。それは、誰にも迷惑をかけない、一人で生きる男の最後の責任だ。

「独身の終活なんて、寂しいことを」と言う奴へ

寂しくない。むしろ身軽だ。財産も、もしものときも、死んだあとのことも、全部決めてある。だから、残りの人生を不安なく楽しめる。お前は、自分が死んだあと、家族がどの口座を探せばいいか知っているか? 後始末を丸投げすることを、家族の絆とは言わない。

まとめ:50代で見える化、60代で契約、70代で更新

2024年に亡くなった人は160万5,298人で過去最多となり、身寄りの少ない高齢者はこれから急増する。おひとりさまの終活は、家族が担う「死後の始末」と「もしものときの判断」を、自分で用意する作業だ。

50代で、財産、デジタル、物、人間関係を見える化し、エンディングノートにまとめろ。60代で、遺言、任意後見と見守り、死後事務委任、身元保証、葬儀とお墓を契約しろ。70代で、住まいを移り、契約と一覧を更新しろ。判断能力があるうちにしか結べない契約がある。費用は生活費とは別枠で用意し、一人で決めずに相談しろ。契約の内容や費用は個別の状況で違うので、専門家や自治体の窓口に確認してほしい。

自分の後始末は、自分で段取りする。それが一人で生きる男の流儀だ。末代で何が悪い。

よくある質問

おひとりさまの終活は何から始めればいい?

まずは見える化だ。財産(口座、証券、保険、不動産)、デジタルの資産とアカウント、物の量、人間関係(緊急連絡先、頼める人)を一覧にする。そこから、何を誰に頼むかを決め、契約に進む。

終活は何歳から始めるべき?

おひとりさまなら50代からがいい。判断能力があるうちにしか結べない契約があり、体力が必要な物の整理や住まいの見直しも、早い方が楽だ。50代で見える化、60代で契約、70代で更新という段取りが一つの目安だ。

おひとりさまの終活で、家族がいる人と違うことは?

家族が自然に担う、入院や施設の保証人、判断能力が落ちたときの財産管理、葬儀や片づけ、相続の手続きを、自分で契約して用意しなければならないことだ。身元保証、任意後見、死後事務委任、遺言がその中心になる。

終活にかかる費用は?

遺言の作成、任意後見や死後事務の契約、身元保証、葬儀やお墓、遺品整理などで、内容によって大きく変わる。当サイトでは、介護・身元保証・死後事務の予備費として800万円程度を見ている。

終活で気をつけることは?

判断能力があるうちに契約を済ませること、一人で決めずに相談すること、前払い金や預託金の管理を確かめること、そして作った書類と契約先を、信頼できる人に伝えておくことだ。

出典・参考資料

  1. 厚生労働省「人口動態統計」(死亡数)
  2. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」
  3. 厚生労働省 認知症施策推進関係者会議(2024年5月)の研究班の推計
  4. 内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(2024年6月)、法務省「自筆証書遺言書保管制度」