おひとりさま老後と終活 / LATER LIFE

おひとり様のお墓と永代供養

151,076件改葬(お墓の移転・整理)の件数(2022年度)
4種類継ぐ人のいらない納骨先(永代供養墓・樹木葬・納骨堂・散骨)
5段階墓じまいの手順

実家の墓参り。墓石には、祖父母と父の名前が刻まれている。「この墓に、俺は入るのか。そして、俺のあとは誰が守るのか」。妻も子もいないおひとり様の男には、墓を継ぐ人がいない。自分が最後の継承者なら、この墓は、自分が死んだらどうなるのか。

家族のいる男は、「墓は長男が継ぐもの」と言う。だが、その長男は都会に住み、地方の墓に年に一度も来られない。遠くて掃除もできず、管理料の負担だけが続く。家族がいても、墓は重荷になる。

お墓のあり方は、大きく変わりつつある。この記事では、おひとり様のお墓と納骨先について、継ぐ人のいらない4つの選択肢(永代供養墓、樹木葬、納骨堂、散骨)を比べ、先祖の墓の墓じまいの手順と、自分の納骨先を生前に決めて頼んでおく方法をまとめた。

この記事の結論

  1. おひとり様には墓を継ぐ人がいない。継ぐ人のいらない納骨先を選べ
  2. 改葬の件数は2022年度に15万1,076件。2023年度は約16.7万件とされる。墓じまいはもう珍しくない
  3. 選択肢は、永代供養墓・樹木葬・納骨堂・散骨の4つ
  4. 先祖の墓の最後の継承者なら、元気なうちに墓じまいを考えろ
  5. 納骨先は生前に契約し、納骨してくれる人を死後事務委任で決めておけ

墓じまいは、増え続けている

厚生労働省の衛生行政報告例によると、墓地にある遺骨を別の墓地や納骨堂に移す改葬の件数は、2022年度に15万1,076件だった。それまで最も多かった2019年度を上回る件数だ。2023年度は、約16.7万件にさらに増えたとされる。

改葬の件数は、墓の数ではなく、移された遺骨の数で数えられている。一つの墓に複数の遺骨が入っていれば、墓じまい一件で何件にもなる。それでも、毎年十数万の遺骨が、元の墓から別の場所に移されていることになる。コロナ禍で一時は減ったが、その後は再び増え続けている。

改葬の件数

Fig. 01
出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(2022年度)。2023年度は約16.7万件とする解説による概数。件数は移された遺骨の数

改葬が増えている背景には、墓を継ぐ人がいない、墓が遠くて守れないという事情がある。先祖代々の墓を整理し、遺骨を永代供養墓などに移す「墓じまい」は、もう珍しいことではない。そして、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、男性の高齢単独世帯に占める未婚者は2050年に59.7%になる。継ぐ人のいない墓は、これからさらに増える。

継ぐ人がいないと、墓はどうなるか

お墓は、祭祀承継者(墓や仏壇を受け継ぐ人)が守っていくものだ。祭祀承継者は、本人の指定や、地域の慣習、家庭裁判所の判断で決まる。継ぐ人がいなくなり、管理料が払われなくなった墓は、墓地の管理者が一定の手続きを経て、無縁墓として整理することがある。遺骨は、合祀の墓などに移される。

おひとり様が先祖の墓の最後の継承者なら、自分が亡くなったあと、その墓は誰にも守られなくなる。そして、自分自身がその墓に入る場合、誰が納骨してくれるのかという問題もある。何も決めなければ、自分の遺骨の行き先も、先祖の墓の行き先も、誰かに委ねることになる。

継ぐ人のいらない、4つの選択肢

継ぐ人のいらない納骨先の比較
選択肢中身向いている人注意点
永代供養墓寺院や霊園が管理と供養を続ける。合祀型、一定期間個別安置の型など供養を続けてほしい人合祀後は遺骨を取り出せない。供養の中身と期間を確かめる
樹木葬墓石の代わりに樹木や草花を墓標にする。多くは永代供養つき自然に還りたい人場所や形が施設ごとに大きく違う。合祀の時期を確かめる
納骨堂屋内の施設に遺骨を安置する。ロッカー型、自動搬送型など都市部で、天気を気にせずお参りしてほしい人使用期間と、期間後の扱い。管理料の有無
散骨遺骨を粉にして、海などにまく墓を持ちたくない人場所のルールとマナー。遺骨は手元に残らない

どれも、継ぐ人がいなくても成り立つ形だ。費用は、施設や形によって大きく違う。一般的な墓石の墓を建てるよりは抑えられることが多いが、永代供養の中身、管理料の有無、合祀の時期は施設ごとに違うので、必ず見学し、契約内容を確かめろ。

永代供養墓:供養を続けてほしいなら

永代供養墓は、継承者に代わって、寺院や霊園が遺骨の管理と供養を続けてくれる墓だ。おひとり様にとって、最も選ばれやすい形の一つだ。

  • 合祀型:最初から他の人の遺骨と一緒に埋葬する。費用は抑えやすい
  • 個別安置型:一定期間(十三回忌、三十三回忌までなど)は個別に安置し、その後に合祀する
  • 供養の中身:年に何回、どんな法要をするか。施設ごとに違う

注意すべきは、合祀されると、遺骨を取り出せなくなることだ。また、「永代」といっても、寺院や霊園が続く限りの意味だ。運営主体が安定しているかも確かめておけ。

樹木葬:自然に還る

樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花を墓標にする葬法だ。多くは永代供養つきで、継ぐ人がいらない。自然に還りたいと考えるおひとり様に人気がある。

樹木葬と一口に言っても、形は施設ごとに大きく違う。山の中の里山型もあれば、都市の霊園の一角に花壇のように区画を設けた型もある。一本の木の下に合祀するもの、区画ごとに個別に埋葬するもの。見学して、自分が眠りたいと思える場所かを確かめろ。

納骨堂:都市の屋内のお墓

納骨堂は、屋内の施設に遺骨を安置する形だ。都市部に多く、駅に近く、天気を気にせずお参りできる。ロッカー型、仏壇型、カードをかざすと遺骨が運ばれてくる自動搬送型などがある。

納骨堂は、使用期間が決まっていることが多い。期間が過ぎたら、合祀墓に移される。年間の管理料がかかる場合、払う人がいなくなったときの扱いも確かめておけ。おひとり様なら、管理料を一括で払える、または永代供養つきの納骨堂を選ぶのが安心だ。

散骨:墓を持たない

散骨は、遺骨を細かく砕いて粉にし、海などにまく方法だ。墓を持たないので、継承も管理料も一切いらない。

  • 海洋散骨が多い:船で沖に出て、海にまく。代行してくれる事業者もある
  • 場所のルールとマナー:自治体によっては、散骨に関する条例やルールがある。陸地の散骨は特に注意が要る
  • 遺骨は手元に残らない:一部を手元に残す、一部を永代供養墓に納める、という組み合わせもある

散骨を望むなら、エンディングノートと死後事務委任契約にはっきり書いておけ。本人の意思がわからなければ、頼まれた人も散骨を選びにくい。

おひとり様の納骨先の選び方

  1. 供養を続けてほしいか、墓を持ちたくないかを決める供養を続けてほしいなら永代供養墓・樹木葬・納骨堂、持ちたくないなら散骨。
  2. 場所を決める先祖の墓の近く、今住んでいる街、ゆかりのある土地。誰かにお参りしてほしいなら、その人が行きやすい場所。
  3. 見学する雰囲気、管理の状態、交通の便。
  4. 契約の中身を確かめる費用の総額、管理料の有無、合祀の時期、供養の中身、運営主体。
  5. 生前に契約する生前契約できる施設なら、元気なうちに契約し、費用も払っておく。

おひとり様は、生前に契約して、費用を払っておくのがいちばん確実だ。そうすれば、亡くなったあと、頼んだ人は契約先に連絡して遺骨を届けるだけで済む。

先祖の墓の墓じまい:5つの手順

先祖代々の墓があり、自分が最後の継承者なら、元気なうちに墓じまいを考えろ。自分が亡くなってからでは、誰も手続きができない。

  1. 親族と話すきょうだいや親戚に、墓じまいの意向を伝える。あとで揉めないように。
  2. 遺骨の移し先を決めて契約する永代供養墓、樹木葬、納骨堂など。受入証明書をもらう。
  3. 今の墓地の管理者から証明をもらう埋葬(収蔵)証明書など。寺院なら、住職に相談する。
  4. 市区町村で改葬許可を得る今の墓地がある市区町村に、改葬許可を申請する。
  5. 遺骨を取り出し、墓石を撤去する閉眼供養などをし、石材店に墓石の撤去と区画の返還を頼む。遺骨を新しい納骨先に移す。

墓じまいには、手続きと費用と体力が要る。遠方の墓なら、何度も足を運ぶことになる。60代までに済ませるのが目安だ。寺院の墓地の場合、離檀(檀家をやめること)について、住職とよく話し合え。

誰が、遺骨を納めてくれるのか

納骨先を決めても、亡くなったあとに、誰かが遺骨を引き取り、納骨先に届けなければならない。おひとり様にとって、これが最後の、そして大事な段取りだ。

  • 死後事務委任契約:火葬、遺骨の引き取り、納骨を、信頼できる人や専門家、事業者に頼む
  • 納骨先の施設のサービス:一部の寺院や霊園は、遺骨の引き取りから納骨まで引き受けることがある
  • 親族に頼む:甥・姪などに、納骨だけを頼む

そして、エンディングノートに、納骨先の契約先と連絡先を書き、死後事務を頼んだ人に伝えておけ。契約しても、誰も知らなければ、遺骨はそこに届かない。

費用の考え方

お墓と納骨の費用は、選ぶ形と施設によって大きく違う。比べるときは、次の点を確かめろ。

  • 最初に払う費用:永代供養料、使用料、埋葬料、彫刻料(名前を刻む場合)
  • 毎年の管理料:かかるのか、一括で前払いできるのか。払う人がいなくなったらどうなるのか
  • 合祀の時期:最初から合祀か、何年後に合祀か。それによって費用が変わることが多い
  • 供養の費用:法要は含まれているか、別料金か
  • 墓じまいの費用:先祖の墓がある場合、墓石の撤去、閉眼供養、改葬の手続き、移し先の費用

おひとり様にとって大事なのは、毎年の管理料がかからないか、生前に一括で払えることだ。亡くなったあとに毎年払い続ける人はいない。生前に払い切れる形を選べば、誰にも負担を残さない。費用の目安は、施設の見積もりを複数取って比べるのが確実だ。

誰にお参りしてほしいかも、考えておけ

納骨先を選ぶときは、誰かにお参りしてほしいかも考えておけ。甥や姪、友人に、たまに手を合わせてほしいなら、その人が行きやすい場所を選ぶ。誰にも負担をかけたくないなら、寺院や霊園の合同の供養に任せればいい。どちらがいいということはない。自分の気持ちに合う形を、自分で選ぶことが大事だ。

仏壇と位牌も、考えておけ

実家に仏壇や位牌がある場合も、自分が最後の継承者なら、その扱いを決めておけ。寺院に供養を頼んで処分する、位牌を永代供養墓の寺院に納める、などの方法がある。何も決めないと、遺品整理のときに、頼まれた人が扱いに困る。墓じまいと一緒に考えるのがいい。仏壇を手放すときは、宗派の寺院に相談し、閉眼供養(魂抜き)をしてもらってから処分するのが一般的だ。位牌や遺影、先祖の写真など、捨てにくい物ほど、元気なうちに自分で整理しておけ。残された人は、他人の先祖の物を処分するのに、ずっと迷うからだ。

自分で納骨先を決めるおひとり様と、継がせる既婚

自分で納骨先を決めるおひとり様

  • 先祖の墓を、60代のうちに墓じまいした
  • 自分は、海の見える樹木葬に生前契約した
  • 納骨は、死後事務委任で頼んである
  • 誰にも墓の重荷を残さない

「長男が継ぐ」と考える既婚の男

  • 都会に住む長男は、地方の墓に年に一度も来られない
  • 遠くて掃除もできず、管理料だけが続く
  • 結局、子供が墓じまいの手続きに追われる
  • 墓が、家族の重荷として受け継がれる

墓を継ぐことが当たり前だった時代は、終わりつつある。改葬の件数が過去最多になったのは、家族がいても墓を守れない人が増えているからだ。おひとり様は、最初から継ぐ人のいらない形を、自分で選べる。それは、誰にも墓の重荷を残さない、最もすっきりした終わり方だ。

「独身は墓を継ぐ人がいなくてかわいそうだ」と言う奴へ

継ぐ人がいらない墓を、自分で選んだ。先祖の墓も片づけた。お前の墓は、子供が継ぐのか? 都会に出た子供が、田舎の墓の管理料を払い続け、掃除に通うのか? 墓を継がせることは、子供に重荷を背負わせることでもある。

まとめ:継ぐ人のいらない形を、自分で選べ

おひとり様には、お墓を継ぐ人がいない。先祖代々の墓の最後の継承者なら、その墓はいずれ無縁墓として整理されることがある。改葬の件数は2022年度に15万1,076件、2023年度には約16.7万件とされ、墓じまいはもう珍しくない。

継ぐ人のいらない納骨先は、永代供養墓、樹木葬、納骨堂、散骨の4つ。見学して契約の中身を確かめ、生前に契約して費用を払っておけ。先祖の墓の最後の継承者なら、60代までに墓じまいを済ませろ。そして、遺骨を納めてくれる人を死後事務委任で決め、エンディングノートに契約先を書いておけ。費用や供養の中身、散骨のルールは施設や自治体で違うので、必ず確認してほしい。

自分の眠る場所は、自分で選べ。末代で何が悪い。

よくある質問

おひとり様のお墓はどうすればいい?

継ぐ人がいらない納骨先を、生前に決めておくのが基本だ。寺院や霊園が管理と供養を続けてくれる永代供養墓、樹木葬、納骨堂、海などへの散骨などがある。そして、亡くなったあとに納骨をしてくれる人を、死後事務委任契約などで決めておく。

永代供養とは?

家族などの継承者に代わって、寺院や霊園が遺骨の管理と供養を続けてくれる形だ。最初から他の人と一緒に埋葬する合祀型と、一定期間は個別に安置し、その後に合祀する型などがある。期間や供養の中身は施設ごとに違う。

先祖の墓は、自分が最後の継承者ならどうする?

墓じまいをして、遺骨を永代供養墓などに移す(改葬する)方法がある。改葬には、今の墓地の管理者から証明をもらい、市区町村から改葬許可を得るなどの手続きが要る。放置すると、いずれ無縁墓として整理されることがある。

墓じまいの件数は増えている?

増えている。厚生労働省の衛生行政報告例によると、遺骨を別の墓地などに移す改葬の件数は、2022年度に15万1,076件で、調査を始めてから最も多かった2019年度を上回った。2023年度は約16.7万件に増えたとされる。

お墓のことは、誰に頼めばいい?

納骨先を生前に契約し、亡くなったあとの遺骨の引き取りと納骨を、死後事務委任契約で信頼できる人や専門家、事業者に頼んでおく。永代供養墓や樹木葬の中には、生前に契約できるものも多い。

出典・参考資料

  1. 厚生労働省「衛生行政報告例」(改葬の件数)
  2. 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」(改葬許可)
  3. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」
  4. 民法第897条(祭祀に関する権利の承継)